0.8%ポイント前年同期から好転…大学生の2024年4月1日時点での就職率は98.1%に

2024/05/24 12:00

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厚生労働省は2024年5月24日、2023年度(令和5年度、2023年4月1日から2024年3月31日)における大学や短期大学、高等専門学校、専修学校の卒業予定者就職状況に関する最新調査結果を公開した。その発表資料によれば2024年4月1日時点の大学卒業者の就職率(就職希望者に対する就職者の割合)は98.1%となり、昨年同時期と比べ0.8%ポイントの増加(好転)が見られたことが明らかになった(【令和5年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)】)。

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新型コロナウイルスの影響から回復、過去最高に


公表された調査結果によると、2024年4月1日時点で大学生の卒業者による就職率は98.1%となり、前年同期の97.3%と比べて0.8%ポイントのプラスとなった。つまりそれだけ同じ時期における就職内定状況が好転したことになる。

↑ 大学など卒業者の就職率(2024年4月1日時点と2023年同時期)
↑ 大学など卒業者の就職率(2024年4月1日時点と2023年同時期)

今回発表された4月1日時点における就職率98.1%は労働市場や景況感を反映する形で、前年同時期と比べて持ち直しを見せている。そして2018年3月と2020年3月につけた98.0%を0.1%ポイント上回る、記録のある中では最高値となった。

↑ 就職率(大学・全体)(各年4月1日時点)
↑ 就職率(大学・全体)(各年4月1日時点)

就職率が好転した原因についてリリースでは一切言及されていないが、ほぼ間違いなく新型コロナウイルスの流行による景況感の後退で落ち込んだ2023年4月時点と比較して、いくぶんながらも回復したことによるによるものだろう。さらに詳しくは、現状よりもむしろ今後の景況感に関し、楽観的な思いを抱いている企業が増えていることが予想される。今後の景況感の見通しが明るければ、現状が厳しくても雇用の積極化を図る企業は多くなる。逆もまたさらなり。労働市場は景況感の先行き指数とも呼ばれるゆえんである。一方で、就職希望率は前年から落ちていることから、就職を諦めた、あるいは大学院などへの進学を希望した人が増え、結果として就職率が押し上げられた可能性も否定できない。

高等専門学校は専門技術に特化し、企業側もその技術を頼りに求人を行うため、内定を出しやすい、囲い込みやすいのが、高就職(内定)率の主要因。企業側の「即戦力優遇主義」が多分に反映され、他の学校種類と比べて高い就職(内定)率が出る。今回もその実情が反映された結果が出ている。

国公立と私立大学、男女別で確認


今回発表された就職(内定)率のうち大学(国公立・私立の合計、個別)にスポットライトを当て、男女別にその動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 国公立・私立大の男女別就職率(2024年4月1日時点と2023年同時期)
↑ 国公立・私立大の男女別就職率(2024年4月1日時点と2023年同時期)

今グラフで対象とした区分において前年同時期比では、すべての属性でプラスが出ているものの、その幅は国公立大学と大学全体では男性より女性の方が高い値が出ている。現時点では女性の方が労働市場では恵まれているのかもしれない。

中期的な就職(内定)率推移から就職戦線の動きを推し量る


厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定)率において、過去のデータを逐次抽出し、(金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため)その動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後は下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にあったことが容易に把握できる。それゆえに、2015年における解禁日の大幅後ろ倒しに伴い就活学生側に混乱が生じ、内定率の改善状況が一時的に足踏み状態となってしまったのは残念でならない。

↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2024年4月1日まで)
↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2024年4月1日まで)

今回対象となった4月1日時点の結果は2011年3月卒を底として、ほぼ順調に上昇しつつあった。しかし2020年3月卒でほぼ頭打ち的な状態となり、2021年3月卒では新型コロナウイルス流行の影響を受け、大きな落ち込みを見せてしまう。新型コロナウイルスの流行が大学生の就職活動にどこまで悪影響を与えているのか、よく分かる動きとなっている。今回の2024年3月卒では前年よりはいくぶん持ち直し、過去最高値をつける結果となった。ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた資源高騰による不景気を跳ね返すような勢いではある。

大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感ではなく、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気がよくても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。

つまり学生諸子の就職率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それとともに安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更をスナック感覚で行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。


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