50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる
2023/06/27 02:00
時の流れとともに商品の流行り廃りは移り変わり、需要は変化していく。また原材料費をはじめとした生産コスト、さらには物流の仕組みも変化を遂げ、それも商品価格に大きな影響を与える。そのような物価の動向を概略的に推し量るのが消費者物価指数であり、先に【過去70年あまりにわたる消費者物価の推移(最新)】で示した通りの動きを示している。それでは具体的に、生活に身近な物品の価格はどれほどの変動を見せているのだろうか。区切りのよい半世紀、つまり50年前と現在の価格を比較してみることにした。
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元データは総務省統計局における【小売物価統計調査(動向編)調査結果】。ここから「主要品目の東京都区部小売価格(昭和25年-平成22年)」を選び、2010年分までの値を抽出し過去の参照値として確保。2023年は記事執筆時点で継続中のため年次としては2022年が最新値となるので、比較対象となる50年前の値は、1972年(昭和47年)のものを用いる。直近のデータは同じ場所の統計表から「年間の結果」で直近年の年報を選び、調査品目の東京都区部小売価格を抽出していく。
品目は比較的メジャーなもの、身近にあるものを当方で独自に選択。さらに一部品目は1972年時点ではまだ計測対象として取り上げられていないものもあるため、それについては値が存在しうる最古のものを選んでいる。
一部品目は50年前の1972年と直近の2022年で、主要流通商品の形状・分量が異なるため、単純比較が難しいものがある。例えばトイレットペーパーは直近値では1000メートル分の価格だが、比較対象となる年では65メートル・4個入りのものを計測対象としていた。この場合は単純計算で直近データの値を0.26倍(65×4÷1000)にし、その上で価格を比較している(このように計測過程で対象商品の内容が変わるため、単純な時系列データによる価格推移のグラフ作成は断念している)。
それらの過程を経て算出された値を基に作成したのが、次のグラフ。
↑ 主要商品の50年間における価格変移(上昇倍率、東京都区部)(1972年から2022年)
あくまでも東京都区部での計測値をベースにしていること、上記の例にもあるように時代の変遷とともに対象商品が変化していることもあり、郵便料(はがき)などごく一部を除けば参考値程度の精度。しかしながら商品価格の推移がそれなりに把握できる。
いわゆる「物価の優等生」と言われている鶏卵はその名に恥じぬように、額面価格はこの50年でさほど変わっていない(昨今では大きな値上がりを示しているが)。またトイレットペーパーに至っては、実質的な価格はほぼ変わらない状態となっている。1.78倍にとどまっているバナナについては「価値観が随分と変わった」と再確認できる高齢者もいるに違いない。一方でねぎなどのように8倍近くもの価格上昇を示しているものもある(無論半世紀前と品質が同じわけではない)。
抽出した商品の中でもっとも価格上昇がみられるのはねぎの7.66倍。1972年時点は9.62円、2022年時点では73.7円となっている。
ちなみに2022年時点では50年前の1972年と比較して、消費者物価指数は約3.3倍に上昇している。対象商品の基準の変化を考慮すれば、3倍から6倍台の領域に収まっていれば、大体消費者物価指数に沿った価格上昇をしていると見てよいだろう。
やや古い話になるが、2009年時点でのアメリカにおける「50年前の食品の価格との比較」について、【50年前の食品の価格を今の価格と比較してみる(アメリカ編)】で精査を行っている。日米の価格変動の差異を確認してみるのも面白いかもしれない。
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