二人以上世帯は平均9.1年…乗用車(新車)の買い替え年数
2023/06/20 02:00
少子化や高性能化、ランニングコストの関係から軽自動車の需要が伸び、燃料事情を受けて電気自動車の浸透が少しずつ進むなど、多くの人にとって日常生活の上では欠かせない「足」となる乗用車事情も変化を見せている。そのような状況の移り変わりの中で、乗用車そのものは何年ぐらいで買い替えが行われているのだろうか。また、その買い替え年数は昔から今に至るまで同一で、変化はないのだろうか。今回は内閣府が2023年4月10日に発表した【消費動向調査】の内容から、その乗用車に関する買い替え年数の動向を確認していくことにする。
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少しずつ延びる乗用車の買い替え年数
「消費動向調査」そのものの詳細、実測値で3月分から抽出している理由、そして「買い替え」の詳しい定義に関しては、携帯電話に関する今件調査の先行記事となる【携帯電話の買い替え年数】にて解説済み。詳細はそちらを参考のこと。まずは長期時系列データが唯一用意されている二人以上世帯(以前は一般世帯と表記。内容は変わらず)における、乗用車の買い替えについての推移をグラフ化し、その現状を確認する。
なお今件調査項目(買い替え)では乗用車に関しては「乗用車(新車)」とのみ表記されており、特に注釈はない。軽自動車、電気自動車、燃料自動車なども買い替えの自家用として新車が調達されれば対象として区分される。要は世間一般に「乗用車」と表現されて違和感を覚えない対象と考えればよい。またこれまで世帯単位で乗用車を所有しておらず、新規に調達した場合は今件回答には該当しない(調査票にも「買い替えをしたものがある場合」と記述されている。そもそも新規購入ならば以前の保有車両の使用年数はない)。
↑ 乗用車(新車)買い替え年数(二人以上世帯、年)
やや上下にぶれはあるものの、全般的には赤い破線の補助線動向からも分かる通り、買い替え年数は延びる傾向にある。もっとも古いデータの1992年から始まる3年では平均6.1年ぐらい、最新の2023年までの3年では平均9.1年ほど。3年は延びている。自動車の性能向上などが原因のようだが、できるだけ短い買い替え期間・高い回転率を望む自動車の売り手からすれば頭の痛い話。
これを単身世帯の結果と重ねてグラフ化したのが次の図。
↑ 乗用車(新車)買い替え年数(世帯種類別、年)
データが用意されている期間では、2016年以前では単身世帯の方が買い替え年数が短い。また2009年から導入された、いわゆる「エコカー減税」は”買い替え年数の動向においては”、影響を及ぼしていないように見える。一方、2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要の観点では、単身世帯でやや特異な動き、前年比マイナス0.5年との動きが確認できる。あるいはいくぶんながらも、特需の影響で買い替え年数が短縮された可能性がある。
2015年4月以降に購入した新車の軽自動車に対する軽自動車税が5割増し(同じ軽自動車でも業務用や自家用貨物車は1.25倍ほど)に増税されるのに伴い、軽自動車に対する特需が発生している2015年分では、その特需による短縮は見られないが、2016年の反動もない。
2017年は単身世帯が異様な延び、前年比でプラス2.3年を示している。後述するが男性世帯で特に際立った延びを示していることから、該当世帯で新車の買い替え需要に変化が生じたのかもしれない。なお2016年の男性における買い替え世帯比率は6.8%、2017年は6.5%となっており、買い替えの傾向そのものは減少しているのが確認されている。
直近年の2023年では、二人以上世帯が前年比マイナス0.1年、単身世帯でプラス1.0年を示している。
属性別の乗用車買い替え年数推移
次のグラフは二人以上世帯・単身世帯それぞれの属性における、過去10年間の買い替え年数推移をまとめたもの。
↑ 乗用車(新車)買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)
↑ 乗用車(新車)買い替え年数(単身世帯、属性別、年)
二人以上世帯ではやや大きなぶれがあるものの、総じて双方の世帯ともに「29歳以下は新車買い替えサイクルが短い」「30代以降は長め」「以前より現在の方が長期化」などの傾向を示している。
また29歳以下における買い替え年数の短さにはどうしても目がとまってしまう。「新車トレンドを追い求めやすい」よりは、若年層特有の振り分けによるものと考えられる。つまり免許取得は18歳からでも可能だが、自動車購入(しかも新車で)は20歳前半では(金銭的に)難しく、後半での取得が主になる。そしてその購入時期からさらに「29歳以下の時点で」買い替えが可能な人は、必然的に買い替え年数も短くなるとの事情があると考えられる。要は「20代で自動車の新車を買い替えできる人は、環境的に恵まれており、必然的に買い替え年数も短くなる」との理由によるものといえる。
消費税率改定に伴う駆け込み需要の影響だが、2014年4月の改定では二人以上世帯にはその影響と思われる動きは確認できない。一方単身世帯では女性に特異な短縮が起きており、これが「従来ならもう少し使い倒すはずだったが、もう1、2年使いまわして税率改定分を上乗せして買うより、改定前に前倒しで買い替えてしまおう」との動きの結果に相当するものと考えられる。上記で言及している軽自動車の税率改定に伴う駆け込み需要もまた、2015年における短期化に影響を与えたと考えれば道理は通る(これは二人以上世帯の女性にも発生している)。2019年10月の消費税率改定に伴う駆け込み需要も一部属性での短縮化に影響しているのかもしれない。
買い替え理由
最後に「買い替え理由」について、二人以上世帯・単身世帯それぞれについて確認を行う。
↑ 乗用車(新車)買い替え理由(二人以上世帯)
↑ 乗用車(新車)買い替え理由(単身世帯)
2015年は軽自動車税の改定に伴う駆け込み需要から「その他」がかさ上げされたようだ。もっとも「上位品目」「故障」を理由に挙げるような買い替え事例が少なくなったことによる相対的な上昇も十分考えられよう。
2021年では単身世帯で「その他」の割合が大きく伸びている。新型コロナウイルスの流行による公共交通機関忌避の影響で乗用車の利用機会が増え、よい機会だからと買い替えを決意したのだろうか。
自動車そのものの耐久性の向上、利用周辺環境の整備などから、自動車の買い替えサイクルは少しずつ伸びる傾向を見せている。電気自動車やハイブリッドカーのような「劇的な変化(改善、メリットの上乗せ)」が得られない場合、買い替えのメリットがあまり無く、単価が高いため、現状の環境を維持することが多くなる。この事情は、他の高額耐久消費財と変わらない。
あるいは、二人以上世帯で子供が生まれ、育ち、送迎が必要になる場合、さらにはパート先までの行き来に必要な場合など、世帯環境の変化に伴い、乗用車の買い替えをうながされる場面がある。しかしながらそのような世帯内の環境変化ですら、少子化が進む中では、発生可能性も小さくなる。
今後自動車の新車販売はますます厳しさを増していく。これまでの方法を繰り返すのではなく、自動車に関連するあらゆる環境における変化を精査し直し、その上で新しい発想による切り口でのビジネスが求められている時代ではないだろうか。
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