二人以上世帯では平均7.7年…パソコンの買い替え年数

2023/06/19 02:00

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2023-0611インターネットへのアクセス窓口としてスマートフォンやタブレット型端末が多分に使われ、それらが「パソコンを補完する役割」から「パソコンと並び主要選択肢の一つ」になるとともに、パソコンの立場は微妙な変化を体験している。昨今では若年層を中心に、キーボードを入力機器とするパソコンを使う機会をほとんど持たず、必要な場面で利用に難儀する事例が増えているとの話もある。とはいえ今なお多くの人に、パソコンはインターネットへのアクセスツールをはじめ、多様な面で有意義、それどころか必要不可欠な存在には違いない。今回は内閣府が2023年4月10日に発表した【消費動向調査】の内容を基に、そのパソコンに関する買い替え年数の動向を確認していくことにする。

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年々延びるパソコンの買い替え年数


「消費動向調査」の詳細や、実測値で3月分から抽出している理由、「買い替え」の詳しい定義については、携帯電話に関する先行記事となる【携帯電話の買い替え年数】にて解説済み。詳細はそちらを参考のこと。まずは長期時系列データが用意されている二人以上世帯(以前は一般世帯と表記)におけるパソコンの買い替えについての推移をグラフ化し、その現状を確認する。

↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、年)
↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、年)

多少のぶれはあるものの、全般的には赤い破線による補助線の動向からも分かるように、パソコンの買い替え年数は延びる傾向を示している。もっとも古いデータの2002年から始まる3年間では平均4.2年ほど、直近3年間となる2021-2023年では平均7.3年ぐらい。3年ほど延びた計算になる。パソコンそのものの高性能化で買い替えの必要性が薄れたこと、OSのサポート期間延長などで「OSの入れ替えが面倒なので新機種へ買い替え」といった買い替え動機が減少したようだ。

2014年に限ると、2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要、さらにはWindows XPのサポート終了に伴うOS入れ替えの必要性から生じるパソコンそのものの買い替えと、大きな買い替え要因が2つもほぼ同時に発生している。これらの要因で、従来ならもう数年維持できるパソコンを前倒しで買い替えてしまおうとする雰囲気が生じ、買い替え年数が短くなることも予想された。しかし少なくとも年数の上ではそのような事態は生じていない。また2017年ではWindows Vistaのサポートが同年4月11日に終了したが、それに併せる形での前倒し買い替えによる年数短縮も見受けられない。

2021年では新型コロナウイルス流行による在宅勤務の促進により、パソコンの買い替えが必要になる機会が少なからず生じたものと考えられる。以前から考えていたパソコンの更新を前倒しにする人もいただろう。前年比で0.3年の短縮はその影響が出ているのかもしれない。他方直近の2023年ではそのような動きはなく、記録のある中では最長の7.7年を示すこととなった。

これを単身世帯の動向も含め、世帯種類別の動向を比較しやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ パソコン買い替え年数(世帯種類別、年)
↑ パソコン買い替え年数(世帯種類別、年)

全般的に単身世帯の方が買い替え年数は短い。1年前後の差が生じている。これは単身世帯の方が使用しているパソコンのライフサイクルが短い事実を表している。

他方2013年から2014年にかけて、両世帯種類間の差は確実に縮まる、厳密には単身世帯の買い替え年数が延びている動きが見られ、2016年ではついに肩を並べるまでとなった。2017年以降も両世帯種類間での差はさほど生じなくなっている。両世帯種類間の差異は事実上なくなったと見てもよいのかもしれない。

過去10年間の経年推移を探る


次のグラフは二人以上世帯・単身世帯それぞれの属性における、過去10年間の買い替え年数推移をまとめたものである。

↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)
↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)

↑ パソコン買い替え年数(単身世帯、属性別、年)
↑ パソコン買い替え年数(単身世帯、属性別、年)

二人以上世帯では男女に差異はさほどない。しかし単身世帯では男女間に明らかな差が見られる。二人以上世帯の女性は配偶者の男性にアドバイスを受け、購入をうながされる場合もあるものの、単身世帯の場合はその機会が少なく、自然と手持ちの機種を長く使い「こなして」しまう状況が想定される。

また二人以上世帯・単身世帯ともに若い人ほどパソコンのライフサイクルは短く、年上ほど長い。特に29歳以下ではそれより上の年齢階層と比べ2-3年ほどの違いが見られる調査年が多い。やはり若年層の場合、新しい技術を持ち話題にあふれる新機種・新OSに目移りしてしまうのだろう。

ただし2017年以降ではほぼ属性を問わず大きな延びが確認できる。他の家電でも見られた傾向だが、耐久性能の向上や魅力的な機能増加の機会が減る(=性能需要の向上天井化)ことによる、故障以外の購入動機が減った結果によるものだろう。

駆け込み需要は買い替え理由で明確化


最後に「買い替え理由」に関して、二人以上世帯・単身世帯それぞれの動向を確認したのが次のグラフ。

↑ パソコン買い替え理由(二人以上世帯)
↑ パソコン買い替え理由(二人以上世帯)

↑ パソコン買い替え理由(単身世帯)
↑ パソコン買い替え理由(単身世帯)

両世帯種類とも年々「上位品目」が減り「故障」が増える流れ。これはパソコンが故障しやすくなったからではなく、「上位品目」の回答数が減ったため、相対的に回答率が上がったのがその理由。パソコンの高性能化やOSのサポート期間延長などから、上位機種への買い替えの必要性が低下したことによるもの。Windows3.1から95にシフトした時のような、「パソコンそのものを買い替えて実装しないと時代に乗り遅れる」的な雰囲気は今やない。

単身世帯ではほぼ一貫して、「上位品目」の比率が落ちている。配偶者によるサポートのある無しに関係無く、パソコンそのものの買い替え必要性が薄れている(と判断されている)可能性が高い。「新OSが出たので必要性が高いとは言い切れないが、よい機会だから新しいパソコンを買って環境を整備しよう」との事例が少なくなっているのだろう。

2019年の単身世帯で「その他」が大きく伸びているのは、上記で挙げたWindows7のサポート終了に伴う先駆け的な買い替えではなく、単なる統計上のぶれの可能性が高い。あるいは某電子マネーのキャンペーンに乗る形で買い替えを決意したのかもしれない。

2020年では単身世帯・二人以上世帯ともに、「その他」の割合が4割を超え、過去最大値を示している。買い替え理由としてはもっとも大きなもの。これはWindows7が2020年1月14日に延長サポートを終了したため、OSを組み替えるぐらいならば本体を丸ごと買い替えようとする動機によるものと考えられる。さらには2019年10月からの消費税率引き上げを前に、駆け込み的なパソコンの買い替え需要が生じたのも要因にあるかもしれない。これらの理由は「上位品目」でも「故障」でも「住所変更」でもないのは言うまでもない。この動きでそれまで傾向として見られていた「故障」の増加の動きがいったん止められた形となった。

他方2021年は2020年までと比べ、単身世帯・二人以上世帯ともに「上位品目」の割合が大きな増加を示している。これは新型コロナウイルスの流行による在宅勤務機会の増加で、自宅パソコンの性能アップが求められたことによる買い替えというパターンが多々生じた結果だと考えられる。そして2022年以降はこれまでの傾向のように、「故障」の増加の動きが見受けられる。



パソコン売り場最初のグラフで記されている通り、パソコン業界では高性能化や買い替え必然性の高い新技術・OSが登場しなくなり、買い替えサイクルは少しずつ延びる傾向にある。WindowsのOSにおいて新バージョンが登場するたびに、東京秋葉原などで大規模イベントが開かれ、テレビ各局が特集を組むような騒ぎが起きることは、すでに無い。上記にあるXPのサポート切れ騒ぎは、ある意味稀有な特例といえる(もっとも似たような事例は今後随時発生しえるのだが)。

今後スマートフォンやタブレット型端末のさらなる普及に伴い、パソコンのウェイトが下がり、ますます買い替え年数の延びが加速化するかもしれない。少なくとも「上位品目が登場したので買い替える必要性を覚える」事例はさらに減るに違いない。


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