二人以上世帯では平均7.4年…デジカメの買い替え年数
2023/06/18 02:00
昨今では高機能を実装し持ち運びにも便利なスマートフォンのデジカメ機能に押され、廉価型の開発撤退の話が相次いでいるが、中庸機能実装機や高性能機はまだそれなりに堅調なデジタルカメラ(デジカメ)。個人の映像取得事情を大きく変化させたデジタル機器としてはもちろんだが、携帯電話同様急速に進化発展をとげていることでも知られている。そのデジカメの買い替え事情について、内閣府が2023年4月10日に発表した【消費動向調査】の内容を基に、直近2023年分と過去数年にわたる変移を確認していくことにする。
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大きな延びを見せたデジカメ買い替え年数
「消費動向調査」の詳細、実測値で3月分から抽出している理由、「買い替え」の定義に関しては、先行記事の【携帯電話の買い替え年数】にて解説済み。詳細はそちらを参考のこと。まずは長期時系列データが用意されている二人以上世帯(かつては一般世帯と表記。指し示すものは同じ)における推移をグラフ化し、その現状を確認する。
↑ デジカメ買い替え年数(二人以上世帯、年)
やや凸凹感はあるものの、全般的には赤い破線による補助線の動きで分かるように、デジカメの買い替え年数は延びる傾向となっている。最古のデータである2005年から始まる3年間分の平均では3.2年だったものが、最新の2022年に終わる平均3年では約6.8年。4年近くもの延びを示している。
デジカメの高性能化が進み、手持ちの機種の買い替え必要性が薄れたこと(購入した時点で十分な高性能の機能を持ち、それ以上の機能を持つ新機種がその後に登場しても、購入意欲が沸かない)が主要因として考えられる。高性能化の一方面である小型化・使いやすさはすでにスマートフォンが確保した領域で、デジカメには大容量・高画質などの精密化・高機能化への方向しか残されていない。それ故に、価格もそれなりのものとなり、そう頻繁に買い替えられなくなっている状況を想定すれば道理は通る。
2014年の特異事項である消費税率引き上げに伴う「駆け込み需要」だが、0.1年分の減少があるものの、統計上のぶれの範囲に過ぎない。デジカメの買い替えにおける買い替え年数の上では、消費税率引き上げの影響は無かったものと考えてよい。
直近の2023年分は7.4年。昨年の6.9年と比べれば0.5年延びた形となった。記録のある期間では最長の値となる。
この二人以上世帯の動きを単身世帯のそれと重ねてグラフ化したのが次の図。
↑ デジカメ買い替え年数(世帯種類別、年)
全般的には他のデジタル系アイテム同様、単身世帯は二人以上世帯と比べて買い替え年数が短い。それだけ単身世帯の方が、使っているデジカメのライフサイクルが短いことになる。嗜好品の類であることや、配偶者の視線を気にしなくて済む、お財布事情の問題などが考えられる。
一方2017年以降数年ほど単身世帯が長い結果が相次いだ。さらに2017年をピークとして単身世帯では年々買い替え年数が短くなる動きを示した。これは多分に統計上の誤差が生じた結果と考えられる。要はこの数年の単身世帯の動向は、誤差によるぶれが生じた結果である可能性が否定できない次第である。何しろ今調査において買い替えを行った単身世帯数は2023年ではわずか10世帯のみ(対象調査世帯数は2271世帯)なのだから。
男女、年齢階層別のデジカメ買い替え事情
次のグラフは二人以上世帯・単身世帯それぞれにおける、過去10年間の買い替え年数推移をまとめたものである。
↑ デジカメ買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)
↑ デジカメ買い替え年数(単身世帯、属性別、年)
単身世帯で一部イレギュラーな値があるが(対象人数がごく少数によるぶれ)、一定数の結果が集まっている二人以上世帯では、おおよそ「次第に買い替え年数が延びる」動きを示している。デジカメそのものの高性能化、携帯電話の普及など周辺環境の変化に伴う、デジカメの買い替え年数の伸びは、属性に左右されることなく生じているようだ。2017年以降の大きな伸びもまた、属性による差異は見受けられない。
単身世帯の短縮ぶりは統計上のぶれの可能性があるが、どの属性でもほぼ一様に同じ動きなことから、ぶれではなく傾向としての短縮の動きとの解釈もできる。また、例えば2023年で単身世帯はわずか10世帯しか該当世帯がない実情を鑑みるに、やはり統計上のぶれが生じているとの仮説の方が正しいのかもしれない。
買い替え理由を見ると!?
最後に「買い替え理由」について、二人以上世帯・単身世帯それぞれの属性で見たグラフ。
↑ デジカメ買い替え理由(二人以上世帯)
↑ デジカメ買い替え理由(単身世帯)
二人以上世帯は比較的理由が安定し、大きな区分変化がないのが特徴。大体「上位品目」5割前後、「故障」3割台から4割台、「その他」1割から2割ぐらい。デジカメの高性能化や携帯電話のデジカメ機能の高度化でも、配偶者(の視線)がある中でのデジカメ買い替えには、変化を生じさせないようだ。
一方単身世帯はかなりばらつきが見えるが、「上位品目への乗り換え」が概して多い。逆に「故障」要因ではおおよそ二人以上世帯が上(ただしこの数年では単身世帯の方が多くなるケースが多々生じている)。二人以上世帯と比べて回答者の強い意向によるもの、趣味の対象としてデジカメの買い替えを進めているようすがうかがえる。ただし単身世帯では該当世帯数の少なさから生じる統計上のぶれが生じてしまい、値の動きが粗くなっているので、傾向の類を見い出しにくくなっているのは否めない(特に直近5-6年ほどの間は)。
2020年の二人以上世帯における「その他」の延びは、2019年10月の消費税率改定に伴う駆け込み需要の結果だろうか。
冒頭でも触れている通り、廉価型のデジカメはスマートフォン搭載のデジカメ機能に押される形で売上が伸びず(そもそもスマートフォンは外出時に携帯必須な立ち位置にある。それに加えて1つ持ち物が増えるのは不便に違いない。少々機能に劣るところがあっても、荷物が減らせる、そしてインターネット経由によるソーシャルメディアなどの各種サービスとの連動が容易なスマートフォンに軍配があがるのは、誰の目にも明らか)、続々とメーカーはその分野から撤退している。そして従来型携帯電話やスマートフォン搭載のデジカメでは太刀打ちできない高性能な機器への注力が進んでおり、ますます低価格のデジカメは肩身が狭い思いとすることになる。
【スマートフォンでの写真撮影、一般携帯より頻度は上】などでも解説しているように、写真を趣味にしている人、こだわりを持つ人、仕事で使う人にはデジカメ(しかも高性能なもの)が必要不可欠なことに違いない。しかし「一定レベルの綺麗さで撮れればよい」と割り切れる人、こだわりを持たない人には、手持ちのデジカメを封印、少なくとも買い替えを止め、携帯電話のデジカメ機能に頼る動きを見せている。特にソーシャルメディアとの連動性・即時対応性は大きな魅力で、写真や動画の取得を第三者への披露のためと考えている人には、スマートフォンは何よりも頼もしい存在となるだけに、相対的にデジカメとの距離が置かれるのも致し方ない。
今後スマートフォンの普及率上昇とともに、ますますデジカメの買い替えをする人は減り、仕事など必要性から高機能の機種を持つ人に限られてくることになる。それらの機種は当然価格も高く、長持ちもするため、買い替え年数はさらに延びることになるだろう。あるいは買い替えをする人そのものが減り、統計値としての確認が難しくなるかもしれない。すでに単身世帯はその領域に片足を踏み込んでいるとすら表現できるのだが。
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