二人以上世帯では平均10.7年…カラーテレビの買い替え年数

2023/06/17 02:00

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最近ではインターネット機能を備えたタイプのが主流となりつつあるが、テレビが今なおテレビ番組を受信する一方向メディアの代表的な家電であることに違いはない。そして幼少児や中年層以降、中でも高齢層にとって欠かせない情報取得メディアであり、最大の娯楽機器でもある。今回はそのカラーテレビにスポットライトをあてて、内閣府が2023年4月10日付で発表した【消費動向調査】の2023年3月実施分のデータを基に、「カラーテレビの買い替え年数」の現状と過去からの推移を確認していくことにする。

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カラーテレビの買い替え年数は約10年!?


「消費動向調査」の詳細、実測値でなぜ3月分から抽出しているのかの理由、「買い替え」の定義に関しては、先行記事の【携帯電話の買い替え年数】にて解説済み。詳しくはそちらを参考のこと。

今回は「カラーテレビ」の買い替え年数を抽出する。買い替え状況において2014年分以降の調査票では「カラーテレビ 薄型(液晶、プラズマ等)」と記述されている。2013年までは単に「カラーテレビ」だったため、買い替え対象にはブラウン管・薄型テレビ双方を含んでいたことになる。地デジ化も果たし、実質的にブラウン管テレビの販売もほぼ終了したとの意向によるものだが、2013年と2014年との間に完全な連続性はないことに注意する必要がある(とはいえ、今更ブラウン管テレビ「に」買い替える人も滅多にいないだろう)。

世帯区分は単身世帯と二人以上世帯、そして双方を合算した総世帯の3つが用意されている。ところが長期時期系列としてデータが保存されているのは二人以上世帯のみ。そこで二人以上世帯について、買い替え年数推移を長期期間の範囲でグラフ化する。

↑ カラーテレビ買い替え年数(二人以上世帯、年)
↑ カラーテレビ買い替え年数(二人以上世帯、年)

中期的な動向を見るとテレビの買い替え年数は9年前後で安定。しかし2010年以降は毎年少しずつ、確実に年数が短縮されている動きを示した。2011年7月の地デジ化に伴い、チューナーで地デジ対応化したテレビを使っていても、調子が悪くなったり故障などをきっかけとして「安くなっていることもあるし、せっかくだからこの際、修理をせずに対応機種に買い替えるか」とする動きが起きた結果によるものだろう。

2014年にいたっては、取得できるデータ中ではもっとも短い6.3年を示した。これは一つに地デジ化による移行、そしてもう一つに2014年4月からの消費税率改定に伴い、それに先駆けて駆け込み的に、従来の買い替え期間よりも前倒しでテレビを新規調達した、いわゆる「駆け込み需要」によるものと考えられる。家電商品の多くはこの「駆け込み需要」の影響で買い替え年数の短縮現象が発生しているが、ここまで明確な値を示したものは今件カラーテレビぐらいなもの。また上記にある通り、調査対象のテレビの中身が微妙に変化したのも大きく短縮した一因だろう。

しかしその2014年がピークとなり、以降は少しずつ年数は元の長さに戻りつつある。2015年では地デジ関連の仕様変更の後遺症的なもの(アナログからデジタルへの移行時における特例措置として、ケーブルテレビ事業者が提供してきた経過措置的サービスのデジアナ変換サービスが2015年3月前後に相次ぎ終了する。CATVのテレビ受信サービスに加入していれば、デジタル対応のテレビでなくともそのままテレビ視聴が出来る状況が終わってしまうため、デジタル対応のテレビを調達するかチューナーを接続しないとテレビ視聴が続けられなくなる)が生じているため、平年よりは短めの7.4年との値となったが、直近の2023年では10.7年となり、記録のある中では最長の値を示した。ちなみにデータが取得可能な1997年以降の全年における平均値は9.3年、直近5年間に限れば10.1年となっている。

これを単身世帯(記録があるのは2008年以降のみ)の動向と重ね、グラフ化したのが次の図。

↑ カラーテレビ買い替え年数(世帯種類別、年)
↑ カラーテレビ買い替え年数(世帯種類別、年)

2010年にややイレギュラーな動きがあり、それまでの二人以上世帯>単身世帯との流れが消え、双方世帯種類でほとんど変わらない値を示すようになった。地デジ化におけるテレビ買い替えへの圧力は、世帯構成で違いを見せなかったようだ。また上記で言及した「地デジ化に伴うテレビ買い替え年数の短縮化」そして「消費税率改定に伴う駆け込み需要による短縮化」は、世帯構成によらずに起きていたのも分かる。最近では再び二人以上世帯の方が長い傾向が出ているが、差異はほとんどない形となっている。

属性別におけるカラーテレビの買い替え年数を確認


次のグラフは二人以上世帯・単身世帯それぞれの属性における、過去10年間の買い替え年数推移をまとめたもの。一部区分では該当世帯が皆無、あるいはごく少数で統計値としての算出は不可能なため、グラフでは空白としている。

↑ カラーテレビ買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)
↑ カラーテレビ買い替え年数(二人以上世帯、属性別、年)

↑ カラーテレビ買い替え年数(単身世帯、属性別、年)
↑ カラーテレビ買い替え年数(単身世帯、属性別、年)

興味深いのは地デジ化の影響で買い替え年数が短縮化の動きを示した中でのピークとなる2014年以降。二人以上世帯ではどの属性も年数をかつての水準に戻しつつあるのに対し、単身世帯では属性を問わず低迷したままだった。テレビに対する買い替え傾向に関して、両種類世帯間に大きな隔たりが生じた感はある。ただし2017年以降ではそれら単身世帯でも大きく値が延びている。再び両種類世帯間で差異が縮まりを見せているのだろう。

なおこれらの値は「買い替えを行った世帯における平均買い替え年数」であり、買い替え実行世帯「数」ではないことに注意する必要がある。詳しくは機会を改めて解説するが、最近ではテレビを買い替える世帯比率そのものは減少する一方にある。耐久性能の向上や、買い替え動機につながるまでの魅力・新機能が登場し難くなりつつあるのだろう。

カラーテレビの買い替え理由は?


最後に示すのは「買い替え理由」を二人以上世帯・単身世帯それぞれ別途に算出したグラフ。いくつかの年で特殊事情による変移が確認でき、興味深い。

↑ カラーテレビ買い替え理由(二人以上世帯)
↑ カラーテレビ買い替え理由(二人以上世帯)

↑ カラーテレビ買い替え理由(単身世帯)
↑ カラーテレビ買い替え理由(単身世帯)

2014年では2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要が発生し、回答中「その他」の回答値が単身世帯・二人以上世帯双方で大きな値となっている。

2021年では「上位品目」が単身世帯・二人以上世帯双方で増えている。新型コロナウイルス流行による在宅時間が増えたことでテレビ視聴時間も増え、この際だからと高性能の機種に買い替えるきっかけとなったのかもしれない。また、特別定額給付金の支給も高性能な機種への買い替えには影響しているのだろう。もっとも2022年以降も「上位品目」は高めの値を維持しているのが興味深い(二人以上世帯では2022年でいくぶん低下したが)。



地デジ化、消費税率引上げ、さらにデジアナ変換サービスの終了などの特需要素を受け、大きく変化したこの数年のテレビ買い替え状況。しかし地デジ化や大型機種へのシフトもおおよそ終焉を迎え、上位品目に代える理由も特に見当たらない。4Kや有機ELは確かに魅力的だが、その魅力はどれだけの人のハートをつかむかは未知数。そしてテレビの機械的な寿命が伸びていることを併せて考えると、今後はテレビの買い替えをする世帯数比率は減り、故障で仕方なく買い替える世帯の比率がさらに上昇するかもしれない。


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