単身87.2%、二人以上95.1%…カラーテレビの普及率現状
2023/06/10 02:00
配信される内容(テレビ番組)の質的劣化や競合メディアの浸透に伴う立ち位置の変化と連動性への模索、年齢階層別人口構成比率における高齢層の増加を受けての相対的なメディア力の持ち直しなど、周辺環境も含めて目まぐるしい動きを見せるテレビ界隈。そのテレビの本体の浸透率を把握できる、公的機関による調査の一つとして挙げられるのが内閣府の【消費動向調査】。今回はこの調査結果を基に、多方面の切り口からテレビの普及状況を確認していくことにする。同調査結果をソースにした先行記事【年齢階層別のテレビ普及率】と併せて目を通されることをお勧めする。
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ブラウン管テレビ除外が影響を
「消費動向調査」そのものの解説や「世帯」の区分、「普及率」の定義についてはまとめ記事【定期更新記事:主要耐久消費財・普及率(内閣府・消費動向調査)】で説明されている。そちらで確認のこと。
また先行記事「年齢階層別のテレビ普及率」でも触れている通り、該当項目では2013年までは薄型テレビとブラウン管テレビの双方を対象としていたものの、2014年からは薄型テレビのみを回答対象としており、ブラウン管テレビは除外されることになった。これが過去のデータとの兼ね合わせの点で、小さからぬ影響を与えている。
まず直近2023年の全般的な世帯普及率だが、単身世帯は87.2%、二人以上世帯は95.1%。やや単身世帯が低めなものの、実質的には前者が9割近く、後者は10割近くと表現できる。
↑ カラーテレビ普及率(世帯種類別・世帯主男女別)(2023年)
続いて「保有世帯の」平均保有台数。消費動向調査の公開データに収録されている「保有の有無を問わず全世帯での値」ではないので要注意。保有状況の把握としては、こちらの値の方が実態をイメージしやすい。
↑ カラーテレビ保有世帯あたり平均保有台数(世帯種類別・世帯主男女別、台)(2023年)
単身世帯は1.5台足らず。視聴する人が一人なのにもかかわらずテレビが複数台あるのはおかしな話に思える。しかしリビングと自室(寝室)それぞれにテレビを置いているのかもしれない。
一方二人以上世帯では2台以上。世帯構成人数も多く(最低でも単身世帯の2倍)、部屋割も多数におよび、家族共通のテレビ以外に一部の個室にもテレビを置いていることが考えられる。同じ部屋に複数台のテレビが置かれることは考えにくく、少なくとも2部屋にテレビがそれぞれ置かれている計算となる。リビング、そして子供部屋や夫婦の部屋が自然な状況として想定できよう。
世帯主の年齢階層別ではどのような変化を見せるのか
続いて年齢階層別普及率。男女別とクロスしたデータと、男女合わせてではあるがより細かい年齢階層区分のデータが取得できるので、双方をそれぞれグラフ化する。
↑ カラーテレビ普及率(世帯種類別・世帯主男女別・年齢階層別)(2023年)
↑ カラーテレビ普及率(世帯種類別・世帯主年齢階層別)(2023年)
各年齢階層とも単身世帯より二人以上世帯の方が普及率は高い。この理由については上記の通り。また単身世帯では若年層の普及率が低い傾向にある。今流行の「若年層のテレビ離れ」との言葉が当てはまりそうな感もあるが、それでも8割前後の普及率では少々無理がある。もっとも今件はあくまでも普及率=テレビ放送受信機保有率の話で、テレビ番組の視聴状況はまた別の話なのだが。
世帯年収差では普及率にあまり変化は無し
世帯年収別普及率では大きな変化は見られない。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300-400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。
↑ カラーテレビ普及率(世帯種類別・世帯年収別)(2023年)
前述の通りブラウン管テレビが回答範ちゅうから外されたため、いくぶん値が以前と比べて落ちてはいるものの、100%に近い状態に違いはない。テレビ視聴は基本的に無料(初期投資以外に電気料金は必要。また、有料放送も無料では視聴できない)。そのため世帯年収による普及率の差はほとんど見られない。多少の違いはあれど法則性はなく、また多い少ないも誤差レベル。「テレビは貧富の隔てなく楽しめる娯楽」「もっとも安価な大衆娯楽」との言葉に間違いはない。
時系列推移も確認
よい機会でもあるので、時系列的な推移も確認していく。まずは単身世帯・二人以上世帯の区分別による、時系列的な普及率推移。消費動向調査はかつて二人以上世帯のみを対象としており、単身世帯は別途「単身世帯消費動向調査」で調査が行われていた。そこで1998年以降の動向では、一部にその単身世帯消費動向調査の結果を用いている。
↑ カラーテレビ普及率(世帯種類別)
単身世帯の方が普及率は低い。これは昔も今も変わらず。そして二人以上世帯の普及率が高いまま推移していた一方、単身世帯では多少の上下がありながらも、少しずつ値が減っているように見える。
また上記にある通り、ブラウン管テレビの除外に伴う普及率の急落だが、単身世帯の方が下落率が大きい。単身世帯ではブラウン管テレビから薄型テレビへの買い換え率が低いと考えられる。外部周辺機器を使うなどでブラウン管テレビでも地デジ放送を視聴することは不可能ではないが、画質などの点であまり合理的ではない。一人暮らしだから我慢できる、同居人の反対もないといったところだろうか。
ただしブラウン管除外で大きく下落した後は、少しずつだが元の値に戻りつつあったのも事実。しかし2016年にはブラウン管除外後のピークを早くも迎え、二人以上世帯は急落の後になだらかな、単身世帯ではなだらかな動きの後に急落の形で下落の動きを示している。2014-2016年の動きはいわゆる相場用語のデッド・キャット・バウンス的な動きだったようだ。
ついで大まかな枠組みでの年齢階層別。二人以上世帯は2005年以降のもののみ、単身世帯は先の単身世帯消費動向調査の値を用いて、1998年以降で作成する。
↑ カラーテレビ普及率(単身世帯、世帯主年齢階層別)
↑ カラーテレビ普及率(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)
二人以上世帯が高いまま推移しているのはどの年齢階層も変わらない。2013年に29歳以下が大きく落ちているが、これは調査対象母数が42世帯でしか無く、統計上のぶれによるもの。そして2014年は上記の通りブラウン管テレビ除外のための下落だが、29歳以下は逆に上昇している。これはブラウン管テレビ除外によるマイナスの影響がほとんど無く、純粋な上昇の結果といえる。とはいえ該当回答世帯が46世帯のみであることから、こちらもまた統計上のぶれの可能性も否定できない。
2015年以降も29歳以下は大きな動きを示している。これも回答世帯が少ないのが原因。例えば2023年では69世帯しかない。30-59歳と60歳以上では2016年をピークに減少傾向にある、と読めるだろうか。
大きな変化が見えるのは単身世帯。2005年前後を境目に、29歳以下と30-59歳の層で明らかに低下傾向を示している。いわゆる「若者のテレビ離れ」の体現化だろう。「若者の(固定受信型)テレビ離れ(≒ワンセグの利用増加)」の可能性もゼロではないが、複数の携帯電話関連の機能利用調査の限りでは、動画視聴はともかくテレビ番組をワンセグ機能を用いて視聴する機会はさほど無いことから、あまり影響は与えていないと考えた方が妥当。
2008年では30-59歳では持ち直したものの、29歳以下では急落し、両層の差が大きく開く形となった。2015年では29歳以下において前年比で6.8%ポイントもの下落を示しており、大いに驚きを覚えさせた。2016年以降はリバウンド的な盛り上がりを示したが、それでも30-59歳の値には届いていない。
なお2014年分のブラウン管テレビ除外の影響だが、二人以上世帯同様単身世帯でも、29歳以下がもっとも影響は小さい。そのため29歳以下の下げ幅がゆるやかなものとなり、30-59歳との間で逆転現象が起きてしまった。しかし2015年では29歳以下の下落は著しく、再びこれまで通りの序列に戻り、その状況は2016年以降も継続中。
ここ数年では多少のぶれがあるものの、どの年齢階層でも普及率は減少し、結果として全体値も減少を示している。単身世帯では少しずつテレビ離れが進んでいると解釈できるだろう。
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