携帯電話の普及率現状
2023/06/08 02:00
自動車搭載用の電話をベースに単純な持ち運びができる通話用電話機として始まり、ポケットに入るサイズにまで小型化するとともに、インターネットへのアクセスを可能とすることで、機動性の高い情報端末としての役割も果たすようになった携帯電話。昨今では従来型携帯電話に加え、タッチパネル方式で画面も大型化し、アプリケーションの活用によりパソコンに近い機能を持つスマートフォンの普及ぶりが著しい。今回は従来型とスマートフォンそれぞれにおける携帯電話の普及状況について、内閣府が定期的に公開している調査結果【消費動向調査】を基に確認していくことにする。
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単身と二人以上世帯それぞれ、そして男女別の世帯携帯電話普及率
「消費動向調査」そのものの解説や「世帯」の区分、「普及率」の定義についてはまとめ記事【定期更新記事:主要耐久消費財・普及率(内閣府・消費動向調査)】で説明されている。そちらで確認のこと。また同調査に関する携帯電話関連の精査記事では、以前は【携帯電話普及率の現状(2013年)】の通り携帯電話全般での精査を行っていた。しかし2014年調査分から調査項目において「スマートフォン」「スマートフォン以外(=従来型携帯電話)」に細分化したものが追加されたため、今件記事ではスマートフォン・従来型携帯電話それぞれを見ていくことにする(全体的な「携帯電話」としての普及率の現状やその推移は後日、他調査機関の調査結果とともに【複数データを基にした携帯電話の普及率推移】の内容更新で精査予定)。
まずは全般的な世帯普及率(質問票では「あなたの世帯で持っている耐久消費財などの数量を記入してください」とあり、保有率をも意味する)。単身世帯はスマートフォン84.5%、従来型携帯電話12.2%。二人以上世帯はスマートフォン92.6%、従来型携帯電話18.2%。案外単身世帯のスマートフォン普及率が低いように思えるが、これは高齢層まで勘案対象のため。
↑ スマートフォン普及率(世帯主男女別)(2023年)
↑ 従来型携帯電話普及率(世帯主男女別)(2023年)
世帯ベースの話ではあるが、二人以上世帯では過半数どころか9割強がスマートフォン持ちで、従来型携帯電話の普及率をはるかに超える状況が確認できる。そして単身世帯でも男女ともにスマートフォンの方が普及率は高い。
続いて「保有世帯あたりの」平均保有台数。「保有の有無を問わず全世帯に対する保有台数」ではないので注意が必要。保有実態を把握するには、この値の方が理解しやすい。
↑ スマートフォン保有世帯あたり平均保有台数(世帯主男女別、台)(2023年)
↑ 従来型携帯電話保有世帯あたり平均保有台数(世帯主男女別、台)(2023年)
単身世帯はスマートフォンも従来型携帯電話もほぼ1台。本人自身しか世帯におらず、同居人がいないのだからカウントすることもない。
一方、二人以上世帯ではスマートフォンは世帯あたり2台強ほどの保有状況にある。回答者(多くは世帯主)に加えて配偶者、さらには子供の保有もあるため、その分がカウントされる事例が多い。当然、本人などが複数台保有の場合もあるだろう(今件が回答者個人のみの普及率ではなく、回答者が所属する世帯の世帯普及率であることに注意)。二人以上世帯では従来型携帯電話も、単身世帯よりは多い値が出ているが、それでもスマートフォンほどではない。
男女別、年齢階層別で細分化をしてみる
続いて年齢階層別普及率。さらに年齢階層の区分は大まかなまとめになるが男女別の値も用意されているので、それぞれを確認していく。まずは単純な年齢階層別普及率。
↑ スマートフォン普及率(世帯主年齢階層別)(2023年)
↑ 従来型携帯電話普及率(世帯主年齢階層別)(2023年)
双方機種で二人以上世帯の方が普及率が高い傾向にあることは上記で説明した通り、世帯構成人数の問題。またスマートフォンは若年層、従来型携帯電話は高齢層の方が普及率は高い。
29歳以下でも数%は今なお従来型携帯電話を所有しているが、スマートフォンは40代までが9割強の普及率に達している。二人以上世帯に限れば、60代までが9割台。全体におけるスマートフォンの普及率は単身世帯で82.0%、二人以上世帯で91.9%であることは上記で記した通りだが、多分に高齢層の普及率の低さが全体値の頭を押さえていることが分かる。
続いて男女別・年齢階層別で区分した場合。
↑ スマートフォン普及率(世帯主男女別・年齢階層別)(2023年)
↑ 従来型携帯電話普及率(世帯主男女別・年齢階層別)(2023年)
スマートフォンでは男女差はさほどないように見えるが、従来型携帯電話では男性の方が高い値を示している属性が多い。しかし男女における違いが明確化されるような傾向は見当たらない。かつては女性の方が従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトが進んでいるように解釈できる値が示されていたのだが。
スマートフォンは世帯年収で大きく変わる
最後に世帯年収別普及率。携帯電話の種類別で大きな違いが確認できる。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」の表記を省略している。例えば「300-400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。なお単身世帯の1200万円以上は該当者がいないため空欄になっている。
↑ スマートフォン普及率(世帯年収別)(2023年)
↑ 従来型携帯電話普及率(世帯年収別)(2023年)
従来型携帯電話は二人以上世帯の場合、おおよそ低世帯年収ほど高普及率を示している(550万円以上ではほぼ横ばいとなるが)。他方単身世帯では低世帯年収で高普及率を示した後、世帯年収が増えるに連れて普及率は一旦落ち、再び上がっていく。世帯年収そのものよりも、世帯主の年齢に引きずられての動きかもしれない(単身世帯の場合は特に高世帯年収の世帯ほど、世帯主が高年齢である場合が多い)。
スマートフォンでは単身世帯・二人以上世帯ともに大体高世帯年収ほど高普及率の傾向にある。金銭的な余裕が生じるに連れて、世帯主自身、あるいは配偶者や子供にスマートフォンを持たせようとする考え、あるいは要望を叶えられる余裕が出てくるのだろう。見方を変えれば、スマートフォンは従来型携帯電話と比べてコストが大きいため、金銭的な余裕が無いと保有が難しいとの推論が導き出される。単身世帯の950-1200万円未満が有意に下げているのは、統計上のぶれが生じているようだ(該当世帯数は18世帯のみ)。
他の多様な調査や保有実態から、さらには携帯電話事業者各社の新作ラインアップからも分かる通り、携帯電話は猛烈な勢いで従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトが進んでいる。しかし単純な通話やシンプルなインターネットアクセス機能で十分とする使い方、需要の面から見れば(コストパフォーマンス的な意味合いも含め)、従来型携帯電話は今なおベストな端末に違いはない。また子供の防犯用携帯電話としても、従来型携帯電話は重宝されている。
今後もスマートフォンへのシフトは進み、普及率も年々底上げされていく。一方で従来型携帯電話の普及率は漸減を示すことになるが、一定数は維持されるに違いない。
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