牛肉トップは和歌山県・年間2万9177円…日本の牛豚鶏肉の消費性向(上:金額編)
2023/05/29 02:00
以前掲載した記事【カレーのお肉は「西牛東豚」】に関して「カレーに入れる肉の傾向が『西牛東豚』なのは理解したが、ではなぜその傾向が現れるのか」との問合せをいただいた。大雑把な結論は【カレーのお肉が「西牛東豚」な件について】で覚え書きにしたものの、(肉をテーマとしているだけに)もう少し細かいデータを用い、情報の肉付けをすべきだと判断した。そこで今回は総務省統計局が定期的に調査を実施し、その結果を公知している「家計調査」から必要な値を抽出し精査の上、状況の確認を行うことにする。
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金額面のトップは牛肉が和歌山県、豚肉が福島県
今件でまとめる必要があるのは主要3種の精肉となる牛肉・豚肉・鶏肉(精肉で細かい区分を確認できるのはこの3種類のみ。羊肉などは無い)の地域別消費性向。そこで【家計調査年報】から、家計収支編のうちすべての世帯に相当する総世帯(単身世帯+二人以上世帯)に関して、「<品目分類>1世帯あたり品目別支出金額」の「都市階級・地方・都道府県庁所在市別」を選び、必要な値を取得することにした。ここには全国都道府県庁所在市別の各食品における年間平均支出金額が記載されている。そこで牛肉・豚肉・鶏肉それぞれのデータを抽出し、世帯あたりの年間支出金額における上位10位を寄り抜いてグラフ化したのが次のグラフ。現時点では年ベースの値は2022年のものが最新のため、当然2022年におけるランキングとなる。なお都道府県庁所在市は都道府県に直している。
↑ 年間牛肉支出金額トップ10(総世帯、都道府県別、円)(2022年)
↑ 年間豚肉支出金額トップ10(総世帯、都道府県別、円)(2022年)
↑ 年間鶏肉支出金額トップ10(総世帯、都道府県別、円)(2022年)
「肉の消費の多い少ないを考えるには、支出金額ではなく重量で見るべきでは。元々同じ重量なら牛肉が一番高く、豚肉、鶏肉の順に安くなるのだから」との意見がある。また「精肉を選択する際には支出金額は大きな要素」「消費で考えるのだから支出金額ベースで勘案すべき」との意見もあり、それもまた正論。そこで今記事では支出金額ベースでの考察に専念する。
いくつかの地域は複数のグラフ内に顔を見せており、特定の種類だけでなく多種目の精肉を支出金額面で多く購入=消費していることが分かる。また上位陣を見ると「牛肉は西日本が多い」「豚肉は東日本が多め」「鶏肉は西日本、特に九州が多い」のが見て取れる。
このうち「九州で鶏肉の支出金額が多い」のは、以前【北九州はから揚げのメッカなのか!?……から揚げ談義もろもろ】でも解説の通り、九州地方が「唐揚げのメッカ」的存在なのと深い関係がある。また鶏肉自身の消費が大きい理由に関しては【「肉」といえば牛?豚?鶏?(全国やきとり連絡協議会(現在は公式サイト消失))】の解説によると、「九州で鶏肉の消費が多いのは、古くから外国との交流があり、水炊き、筑前煮などの食文化もあったことが影響している」とのことである。鶏肉の消費が元々メジャーなため、唐揚げ文化も活性化したようだ(【日本唐揚協会の歴史解説「唐揚げの歴史」】でも、元々養鶏場が多くあり、それが戦後の食糧難打開という国策にも相まって、この地域で唐揚げが多く食されるようになったと説明されている)。
牛豚鶏の比率などを確認する
よい機会でもあるので、金額ベースのグラフ・図をいくつか追加で作成し、状況のさらなる把握を行う。次に示すのは「肉類(精肉以外に合いびき肉、他の生鮮肉、ハムやソーセージなどの加工肉も合わせたもの)全体額」の上位20位と、それぞれにおける牛肉・豚肉・鶏肉の金額を積み上げたグラフ。肉類を金額ベースで一番多く消費しているのは大分県で9万3948円、次いで奈良県が8万5690円との結果となった。
↑ 年間肉類支出金額トップ20(総世帯、都道府県別・牛豚鶏とその他の肉類別、円)(2022年)
鶏肉は単価が安いので牛・豚と比べると金額ベースでの比率は小さくなるが、それでも複数の地域でそれなりに大きな値を占めているのが分かる。
最後に支出金額ベースで都道府県別(各都道府県庁所在地がある地域別)に、世帯単位での支出金額を比較し、牛肉と豚肉のどちらを多く消費しているかで色分けした地図を作成した(鶏肉が最上位の場所は皆無)。
↑ 牛肉・豚肉の年間支出金額(家計調査・総世帯、牛肉の方が金額が多い都道府県は着色、都道府県別)(2022年)
一部飛び地的に「豚肉>牛肉」の地域もあるが、おおよそ近畿地方と九州北部-中国西部は牛肉の支出金額が、豚肉を上回っていることが分かる。カレーに使われる肉の件も併せ、「西牛東豚」な状況が確認できる次第ではある。
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