お米とパンと麺類と…世帯単位での主食3品目の購入性向推移(家計調査報告(家計収支編))
2023/05/18 02:00
食事の際に主役的存在となる主食において、日本ではお米で作るご飯が一番食べられているとの考えが多数意見であり、また日常生活でも実感している人が多い。一方で昨今では手軽さや種類の豊富さからパン類の進出が著しく、特に朝食時にはパンを主食とする人が増加しているとの実態が、複数の調査結果から明らかにされている。今回は総務省統計局が2023年2月7日付で発表した【家計調査報告(家計収支編)における2022年分平均速報結果】の各種データを基に、全部の世帯を意味する「総世帯」(単身世帯と二人以上世帯を合わせたもの)における、主食を代表するお米、パン、麺類の購入性向の推移について、確認をしていくことにする。
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お米よりパンの方が支出金額は上!?
次以降のデータは家計調査報告(家計収支編)の総世帯から、米、パン、麺類を選択、該当項目の値を抽出したもの。なお総世帯では購入世帯数の項目は無いので(単身世帯と二人以上世帯を合わせていることから、数値上の意味はないと判断しているのだろう)、世帯購入頻度と支出金額のみを確認していく。またグラフ中などに登場する購入世帯率や世帯購入頻度などの言葉に関しては、先行記事【週刊誌や雑誌、書籍の支出金額(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)】などで解説しているので、そちらを参照のこと。
まずは直近データの2022年分に関する概要を。主要項目の世帯購入頻度と支出金額、さらには一人あたりの支出金額をグラフ化したのが次の図。
↑ 主食3項目の支出金額・世帯購入頻度(総世帯、月あたり、種類別、円)(2022年)
↑ 主食3項目の一人あたり支出金額(総世帯、月あたり、種類別、円)(2022年)
何より最初に目にとまるのは米の世帯購入頻度の低さ。2022年は世帯あたり月で0.553(回)しか買われていない。「深刻な米離れが発生している!?」と受け止めてしまいがちだが、実はこの低い値は米の購入スタイルによるもの。パンや麺類は数食分単位でのまとめ買いが常だが、米は一人暮らしでも(自炊する場合)5キロ・10キロの袋単位で購入される(コンビニなどでは2キロタイプもよく見られる)。今件は「消費頻度」ではなく「世帯購入頻度」であり、袋単位での購入頻度が数字に現れていることになる。
つまりこの値は「月に0.55食分ほどのお米が買われている」ではなく、5か月に3回近くの割合で、お米屋さんなどで袋に詰められたお米を買う状況を意味する。一方支出金額では、米とパンとの間に世帯購入頻度ほどの大きな違いはない。パンの方が2倍近く額が多い程度。
なお詳しくは後述するが、この結果のみで「主食が米からパンに移行している。その結果が数字に出た」と完全に断じるのは早計。あくまでも米とパンの自前による調達に限られ、中食などは考慮外とされているからである。
経年推移でたどる主食動向
この世帯購入頻度と支出金額の推移を、総務省統計局の公開データベースe-stat上にデータが収録されている2002年以降のものにつき、時系列で再整理したのが次のグラフ。
↑ 主食3項目の世帯購入頻度(総世帯、月あたり、種類別)
↑ 主食3項目の支出金額(総世帯、月あたり、種類別、円)
米の世帯購入頻度が低い理由は先の説明にある通り、購入時の量による違いによるもの。しかしそれとは別に、経年推移で少しずつ値を減らしているのが分かる。2002年から2022年までの間に21.5%ポイントもの減少。一方パンと麺類、特にパンは2005-2006年の微減期間を除けばおおよそ上昇しており、同時期に250.6%ポイント増えている。つまり「月8.5回ほどの購入」が「月11.0回ほどの購入」となり、月2.5回分ぐらいも世帯購入頻度が増えたことになる。
麺類はこの数年横ばいで大きな動きは無い。やや増えたかな、という程度。ただし2020年はイレギュラーな形で増えており、これは新型コロナウイルス流行の影響で生じた中食・内食増加傾向の中で、パン同様に調理がしやすく手間もかかりにくい、しかも日持ちがする麺類が見直されたのが要因だと考えられる。
支出金額から見ると、中期的に生じているお米の小売価格の値下がりも影響し、データがある中では2004年をピークに米の支出金額は減少。2010年時点でついにパンに抜かれることとなった。以降支出金額では「パン>お米」の状態が続いている。
【朝食は ご飯とパンが ほぼ均衡 二十歳の男性 5割が「ご飯だ!」】などにもある通り、パンは時間と手間があまりかからないのが好まれ、朝食のお供となる場面が多い。やや意外だが高齢者の方がパンを好む傾向がある。今後高齢世帯が増えることから、パンの需要はさらに伸びることは容易に想像ができる。実際、セブン-イレブンの「金の食パン」に始まる高級ブランド志向な食パン類の流行は、中年層以降が支えている面が大きい。2020年以降における麺類の大幅な伸びは、新型コロナウイルス流行という特殊条件下で生じた食生活の変化によるもので、今後似たような傾向が続くかは現時点では不明。実際、2021年以降では2020年よりいくぶんながらも落ち込んでいる。
なお今件記事で主食の定義について「米そのものだけで米食の動向を云々するのは問題ではないか」「中食系のご飯ものを加算すべきだ」との意見をいくつかいただいている。あくまでも今件記事は内食としての購入様式から見た検証ではあるのだが、意見内容には一理ある。特に昨今では中食文化の急速な普及浸透により、食生活そのものに大きな変化が生じているのは、先行記事【中食系食品などの購入動向推移】でも解説した通り。
今件の「米」「パン」「麺類」それぞれに関連しそうな品目を品目分類から探すと、
おにぎり・その他、すし(弁当)、すし(外食)
●パン
調理パン、ハンバーガー(外食)
●麺類
日本そば・うどん(外食)、中華そば(外食)、他の麺類外食
などの中食・外食的品目が、主食としてカウントすべき検討対象として挙げられる。一方、例えば「調理食品内、主食的調理食品内の『弁当』」は、ご飯もの以外にパンもの、麺類ものなども想定されるため、抽出することはできない。
外食まで含めるか否かも併せ、これらの項目に関する検証は、後程機会をあらため、じっくりと精査することにしよう。
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