日本の家計資産残高は増加、2043兆円に…日米家計資産推移

2023/09/28 10:00

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日本銀行は2023年8月25日付で、2023年第1四半期(1-3月、Q1)の「資金循環の日米比較」レポートを公開した。その内容によれば日本では前回公開値比で「現金・預金」「債券」「株式・出資金」「その他」の額が増え、「投資信託」「保険・年金準備金」の額が減少し、金融資産総額は増加し2043兆円となった。高い貯蓄性向は継続されており、日本の「現金・預金」比率は相変わらず5割を超えている(【日本銀行:資金循環リリース掲載ページ】)。

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日米の金融資産への考え方が顕著に分かる資産分布


今リリースは日本銀行がこれまで年4回定期的に「資金循環の日米欧比較」の速報値として発表していた。ところが2016年Q3期分を最後に、【日銀の情報公開が縮小した件について】にもある通り、情報開示の頻度を年1回、毎年Q1分のみの公開とする姿勢に変更してしまった。今回は2023年8月25日に発表された最新版公開値(2023年Q1)を反映したものとなる。

まずは直近となる2023年第1四半期(Q1)時点での、日米、そして参考値としてユーロエリアでの家計に関する資産構成比率。日本が「現金・預金」で半数超えと大きく傾倒している一方で、アメリカ合衆国が「株式・出資金」や「投資信託」さらには「債券」を大量に保有している図式はこれまで通り。リスクを許容し投資を重視し成果に期待するアメリカ合衆国、確実性に重点を置く日本と、両国の貯蓄性向、金融資産への考え方の違いがそのまま数字に表れている。また日本で「現金・預金」が多いのは、主に高齢者による貯蓄性向の表れでもある。

↑ 日米欧家計金融資産構成比率比較(2023年Q1)
↑ 日米欧家計金融資産構成比率比較(2023年Q1)

3国・地域とも「保険・年金準備金」の比率はほぼ同じ(いくぶん日本が少ないが)。一方で”「現金・預金」”と、”「債券」「投資信託」「株式・出資金」で構成される有価証券”の保有比率が、ユーロ圏は日米の中間にあるのが興味深い。バランスの観点では、日本は現預金過多、アメリカ合衆国はリスク商品が多め。ユーロエリアのバランスが一番リスク分散の上では優れている。

「現金第一」は以前から…日本の家計金融資産


これを定例のフォーマットに従い日米別に、その推移をグラフ化して状況を精査する。まずは日本について、構成比率と絶対額の推移を確認する。なお日本に関しては2009年Q1以降は四半期単位だが、それ以前はおおよそ1年単位でしか値を取得できなかったため、さらに上記の通り2017年Q1以降は値は四半期でのものだが、公開頻度は年単位となっており、それぞれの期間で期間の区分の幅が異なることに注意されたい。

↑ 日本の家計金融資産構成比率(1997年-2023年Q1)
↑ 日本の家計金融資産構成比率(1997年-2023年Q1)

↑ 日本の家計金融資産構成比率
↑ 日本の家計金融資産構成比率

↑ 日本の家計金融資産構成(1997年-2023年Q1)(兆円)
↑ 日本の家計金融資産構成(1997年-2023年Q1)(兆円)

↑ 日本の家計金融資産構成(兆円)
↑ 日本の家計金融資産構成(兆円)

大きな変化として目にとまるのは、2008年前後で「現金・預金」の比率が伸びていること。約5%ポイントの増加が見られる。貯金額そのものが増えたのも多少の影響はあるが、それ以上に株価の低迷を起因としていると考えられる。つまり絶対額の増加は影響が小さく、他の要素が減って相対的に「現金・預金」比率が上がったと考えた方が道理は通る。その上損切り(有価証券などについてこれ以上の価格下落によるさらなる損失可能性を避けるため、売却損を覚悟して売り、現金化する)による「株式・出資金」から「現金・預金」へのシフトも多分にある。

「株式・出資金」の比率だけでなく、額そのものが同じタイミングで大きく減少していることからも、その動きは裏付けられる。2007年夏に始まる金融危機、株価下落は、家計の金融資産にも大きな影響をもたらしたことになる。

今2023年Q1期では前回四半期(2022年Q1)と比較して、「現金・預金」「債券」「株式・出資金」「その他」の額が増え、「投資信託」「保険・年金準備金」の額面が減少している。

なお2015年Q4から「保険・年金準備金」の額・比率が急増しているが、資料を確認するとこの時期から定義が「保険・年金・定型保証」と微妙に変化している。この点がかかわっており、本質的な変化は無いものと見られる。

中期的には増加継続中の米家計金融資産


一方アメリカ合衆国。同国のデータは2008年Q4からは四半期単位で取得できているが、それ以前はおおよそ年ベース。その期間をまたいだグラフでは、前後で期間の区分が異なることに注意してほしい。また2016年Q3から2017年Q1に至る状況は、日本のものと変わらない。

↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成比率(2006年Q1-2023年Q1)
↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成比率(2006年Q1-2023年Q1)

↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成比率
↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成比率

↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成額(2006年Q1-2023年Q1)(兆ドル)
↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成額(2006年Q1-2023年Q1)(兆ドル)

↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成額(兆ドル)
↑ アメリカ合衆国の家計金融資産構成額(兆ドル)

前年同期比で「債券」「株式・出資金」「その他」が増加、「現金・預金」「投資信託」「保険・年金準備金」が減少している。資産総額の114.4兆ドルは、記録のある限りでは最高額となる2022年Q1の114.3兆ドルに続く値である。



家計金融資産の総額は2023年Q1時点で日本が2043兆円、アメリカが114.3兆ドル。これはそれぞれ直近前回期(1年前)から(日本)プラス1.90%・(アメリカ合衆国)マイナス1.04%の変移。日本は増加を果たし、アメリカ合衆国は減少を示している。

上記にある通り、日銀の今件「家計金融資産」は年一ベースでの公開情報となってしまった。連続性が途絶え、情報の質が低下したのは否めず、まことに残念でならない。


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