高気温で冷え物が好調、販促キャンペーンで来店客数増加…2024年6月度のコンビニ売上高は既存店が1.1%のプラス、7か月連続

2024/07/22 14:00

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日本フランチャイズチェーン協会は2024年7月22日に、コンビニエンスストアの2024年5月度分統計調査月報を、同協会公式サイト上で公開した。その内容によると協会加盟コンビニの同月度の売上高は既存店前年同月比でプラス1.1%となり、7か月連続のプラスを示すこととなった。高気温でカウンターコーヒーやソフトドリンク、アイスクリームなどの冷え物が好調だったのに加え、販促キャンペーンの効果などで来店客数が増加した(【日本フランチャイズチェーン協会公式ページ】)。

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今調査の概要、調査対象企業などの詳細、分析記事のバックナンバーは、過去の記事をまとめたページ【コンビニエンスストア(日本フランチャイズチェーン協会発表)】上で解説済み。詳しくはそちらを参照のこと。

主要項目における前年同月比は次の通りとなる。

●店舗売上高:既存店は7か月連続のプラス、全店は31か月連続のプラス
全店ベース……+1.6%
既存店ベース…+1.1%

●店舗数(前年同月比)
−0.2%

●来店客数:既存店は3か月連続のプラス、全店も3か月連続のプラス
全店ベース……+1.2%
既存店ベース…+0.7%

●平均客単価(税別):既存店は3か月ぶりのプラス、全店も3か月ぶりのプラス
全店ベース……+0.4%(709.1円)
既存店ベース…+0.4%(714.3円)

●商品構成別売上前年同月比(既存店ベース)
日配食品……+0.1%
加工食品……+2.6%
非食品………+1.3%
サービス……−1.0%
合計…………+1.1%

※既存店……1年以上営業中の店舗を指す(店舗増加による底上げでの数字上の誤差を防げる)

今回月は新型コロナウイルス感染症の流行による外出忌避や在宅勤務傾向は以前と比べれば弱まってはいるものの継続している。他方、気温が平年と比べて高かったことから、カウンターコーヒーやソフトドリンク、アイスクリームのような冷え物が大きく動き、さらに販促キャンペーンの効果もあり、来店客数も客単価もプラス。結果として売上高はプラスとなった。

商品構成別ではサービスのみがマイナスで、それ以外はプラス。加工食品のプラス幅が2.6%ポイントで最大。ソフトドリンクやし好品、アイスクリームが大きく動いたのがけん引したようだ。

ここ数年来懸念されていた雑誌の売上の減退、集客力の縮小は継続中で、歩みを止めるようには見えない。もっとも最近では下落ぶりは小休止、あるいは底打ちの状況にあるようで、報告書の言及に雑誌の売上が著しく落ちたなどの文言は今回月も含め、ここしばらくは見られなくなっている。雑誌の売上の影響力そのものが、コンビニにおいては考慮に値しないほどの値にとどまっているのが実情かもしれない。どのみち新型コロナウイルスの流行で外出機会(他人との不用意な接触リスク)を控えるようにと諭されていることから、雑誌の見定めをするためだけにコンビニに足を運ぶ人も以前と比べれば減っているだろう。感染リスクを考慮すると立ち読みも敬遠されるに違いない(あるいは感染リスクを大義名分として立ち読み自身が禁止されている可能性もある)。

セブンカフェ&ドーナツ数年前まではコンビニの集客と客単価の主軸であった雑誌とたばこ。これらは時代の流れの中で、その勢いを確実に減じている。双方とも業界全体、商品そのものの特性や周辺環境の変化に伴う勢力の変化であり、今後復権の可能性も低い。

たばこと雑誌それぞれ単独の動向を知りたいところだが、日本フランチャイズチェーン協会の月次レポートではそれを推し量ることはできない。他方、年次ベースなら、紙巻たばこは大手コンビニが発表しているアニュアルレポート、雑誌ならば「出版物販売額の実態」を通して概況を推測することはできる(【コンビニの出版物販売額(全体編)(最新)】)。

たばこは機会があるたびに税負担の上乗せが論議され、実施されており、それに伴いたばこ自身の価格も引き上げられている。健康志向による忌避圧力も勢いを増すばかりとなり、今後も縮小する方向性に変化はない。ただし加熱式たばこが現時点ではその減少分を補っており、今後の動向の見通しはつきにくい。

一方雑誌に関しては価値観の多様化や電子雑誌の進出、すき間時間の活用の仕方の変化を受け、やはり規模の縮小は避けられそうにないが、コンビニにおける同じ出版物として今件月次報告書では取り上げられることはまずなかった書籍に関して、一部チェーン店で新しい動きが生じていた。

セブン-イレブンの街の本屋さんプロジェクト詳しくは【コンビニの出版物販売額(前編:各社編)(2016年)(最新)】で説明しているが、スリーエフで書籍を中心としたミニ書店化形態が売上・集客の点で成果が出たことから、今後さらにそのスタイルの拡大が明言されていた。またローソンでも【ローソンの書籍棚設置店舗が4000店舗にまで拡大していた件】にある通り専用の書籍棚を設置する店舗が4000店を超えたと公式に発表され、それなりの成果を示していることが確認できる。

一時期は総撤退の気配すら見受けられたコンビニの雑誌群も、一部で戻し、再配置の気配もあり、コンビニ側も手探りの状態であることがうかがえる。駅の売店がコンビニ化(コンビニチェーンによる運営店舗の展開)するに伴い、鉄道利用者による雑誌へのアプローチの仕方も変化を遂げており、今後の動向に注目が集まっている。セブン-イレブンが継続的に「街の本屋さん」を自称し、ネット経由で書籍の調達をする受け皿を推進し続けているのも注目に値する。

一方で一部報道で伝えられている通り、出版取次大手の日販は2025年2月でコンビニ(ローソンとファミリーマート)への雑誌や書籍の配送を終了するとし、これに伴い同じく出版取次大手のトーハンが引き継ぐことが決まっている。その引き継ぎ内容に関して、ローソンとファミリーマートの計3万店舗のうち2万店舗のみの引継ぎとなるとの話が伝えられている。すでにコンビニの売上における出版物の売上比率は1%を割っているが、それでも少なからぬ影響が今後出てくるに違いない。

各種サービス(情報端末やカウンター経由)の提供や、カウンターで提供されるいれたてコーヒーをはじめとする新鮮味あふれる日配食品は順調に成長を続けているが、今なおあくなき探求は続けられている。昨今の報告書におけるコメントでも好調さに関する言及が常連化しているように、中食に関する需要はこの数年大きく増加しており、それが具体的な形で小売各方面に現れるようになっている。高齢化や少数世帯化による需要の増加、技術進歩などによる提供商品種類の多様化が相乗効果を示し、ポジティブな意味でのスパイラル現象を引き起こしている。時間や手間を簡略化し、より楽しい食生活を受給する対価としてコンビニやスーパーの食品を選択するという、新しいライフスタイルの浸透といえる。エンゲル係数の上昇は、この要因が大きい。

一方で昨今では24時間営業をはじめとしたコンビニのこれまでの基本方針・施策に疑問符が投げかけられるようになった。特に運用する従業員の労働負担の大きさや金銭的な負荷で問題視される事例が見受けられる。状況改善の施策の一例として挙げられている、営業時間の変化が生じれば、当然売上はその分減ることになる。またレジの自動化の話もあり、実証実験も積極的に進められている。売上には影響が生じるだろうか。

今回月は高気温で高単価商品が売れ、販促で来店客数が増加し、売上は底上げされた。来月発表分の2024年7月では、気温は全国的に、特に北海道と東日本の太平洋側で高く、降水量は本州と九州の日本海側で多め。天候における影響はややプラスとなるもよう。どのような結果となるだろうか。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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