1日1.49件発生・前年比137件増…鉄道係員への暴力行為、2022年度は543件
2023/07/12 04:00
日本民営鉄道協会は2023年7月5日に、2022年度(2022年4月から2023年3月)に発生した、大手民鉄16社・JR6社・札幌市交通局・東京都交通局・横浜市交通局・名古屋市交通局・福岡市交通局・ニューシャトル・北総鉄道・東京モノレール・ゆりかもめ・首都圏新都市鉄道・多摩都市モノレール・東京臨海高速鉄道・横浜シーサイドライン・愛知環状鉄道・Osaka Metro(計37社局)における、駅員や乗務員など鉄道係員へ行われた暴力行為の件数に関する集計結果を発表した。その内容によれば2022年度の該当件数は543件となり、昨年度からは増加し、高い水準にあることが分かった。行為発生の時間帯では昨年度に続き深夜時間帯が多く、発生場所ではホームでの事案がもっとも多い結果が出ている(【発表リリース:鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について】)。
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2022年度における該当鉄道会社各社の、鉄道係員に向けて行われた(利用客による)暴力行為件数は543件。昨年度の406件より137件増加し、一日あたりの平均回数は1.49件となった。2年連続の前年度比増となったが、2022年度は新型コロナウイルスの流行による行動制限措置が緩和され、前年より輸送人員が増加したため、暴力行為件数も増加したものと思われる。
一方で長期的には減少している傾向についてリリースでは、ポスターによる啓蒙や警察官・警備員の巡回配置、駅員の研修などの取り組み、監視カメラの設置、利用客側の暴力行為の認知などが要因だと推測している。
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(件)
曜日別の動向としては例年のように週末にかけて多く発生しているのが注目に値する。時間帯別では深夜帯での発生件数が多いことが確認できる。また飲酒を伴った事例が顕著であったことから、リリースでも特記事項として「時間帯別では夜・深夜の発生件数が多いことから、暴力行為と飲酒に相関関係が見られます」との表現が見られる。
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(時間帯別)(2022年度)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(曜日別)(2022年度)
事件発生時における加害者側(利用客側)の飲酒状況についてだが、5割強が「飲酒あり」との結果が出ている。上記の値と併せ、お酒を飲んで気が大きくなった利用客による事案発生を想像させる。
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者の飲酒ありか無しか別、件数)(2022年度)
事件の発生場所だが、これは「ホーム」が最多で210件。次いで「改札」が145件、「車内」が86件で続いている。「ホーム」は電車待ちの状態で他の客といざこざを起こして止めに入った鉄道係員に暴力をふるったり、酩酊状態を鉄道係員に注意されたところ逆上したりというパターンが考えられる。「改札」は切符などを使わない無理な通過の試みやICカードの誤動作をはじめとする、改札通過時のトラブルがきっかけとなり、鉄道係員との間のいざこざ発生が容易に想像できる。実際にホームや改札でその類のトラブルを目撃した経験がある人もいるはずだ。
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(発生場所別)(2022年度)
最後は加害者(利用者)側の年齢。絶対数と全体比の算出を年齢階層別に行っている。比率の観点では大きな変化はない。あえていえば、20代以下や30代がいくぶん少なくなっているように見えるぐらいだろうか。ただしこの数年では40代までの比率が増加に転じているような動きをしている。
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢階層別)
↑ 駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為の発生件数(加害者年齢「不明」をのぞいた年齢階層別比率)
日本の高齢化に伴い人口構成比上でも高齢比率が高まり、それとともに利用客の高齢化も起きているはず(具体的な鉄道利用客における年齢階層構成比のデータは残念ながら確認できない)。すべての年齢階層の事件発生確率が等しいのなら、加害者側の年齢構成比も高齢者が多くなるのは容易に想像ができる。しかしながらその連動性を見出すほどの、明らかに暴力行為の発生件数における、年齢階層別比率の動きは確認できない。
鉄道係員への加害事案は「自分はお客の立場で偉い。多少の暴挙でも許容範囲」と横柄な考えを持つ人によるものであることは容易に想像できる。それが明確な意思でなくとも、潜在的なものとして持っていれば、各種暴挙につながりうる。
しかしその考えはひとりよがりのものでしかない。自分と相手がどのような立場でも、そして自分がさらに飲酒状態でも、今回挙げられた各種行為は犯罪以外の何物でもない。その事実を改めて認識すべきである。
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