1000万世帯を超えなお増加中…共働き世帯の現状
2023/09/13 02:00
厚生労働省は2023年7月4日に同省公式サイトおよび総務省統計局のデータベースe-Statにおいて、令和4年版(2022年版)の「国民生活基礎調査の概況」を発表した。今件調査は国民生活の基本事項を調査し、各行政の企画や運用に必要な資料を収集する目的で行われているもので、日本の社会環境の概要を把握できるデータが数多く盛り込まれている。今回はその中などから「共働き世帯の増減」などについて確認をしていくことにする。日本では核家族化の進行と消費性向や可処分所得の変化に伴い、共働きはごく普通のライフスタイルとなりつつあるが、現状ではどこまで浸透しているのだろうか(【発表ページ:令和4年 国民生活基礎調査の概況】)。
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共働き世帯数は1000万を超えさらに増加中
今調査の調査要件および注意事項は、今調査に関する先行記事【世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)】で解説済み。必要な場合はそちらを参考のこと。
子供がいる世帯における母親の就労状況は「世帯平均人数は2.25人…平均世帯人数と世帯数の推移(最新)」にある通り。しかし子供がいない世帯でも共働き(夫婦双方の就労状態)をしている場合はよくあるパターンで、その記事で解説されている内容だけでは、共働き全体の現状を把握することはできない。
そこで【男女共同参画白書】の最新版(2023年6月発行分)を確認し、その中から該当するデータを抽出。過去のデータと照らし合わせて整合性を確認した上で、2022年分を反映させたのが次のグラフ。直近の動向が分かりやすいよう、21世紀以降のもののみのグラフも併記した。なお2011年はグラフ中特記にある通り、2011年の東日本大震災における被災三県を除外して計算している。
↑ 共働きなど世帯数(万世帯)
↑ 共働きなど世帯数(万世帯)(2001年以降)
なおグラフ中の項目で「男性雇用者と無業の妻からなる世帯(妻64歳以下)」とは「夫が非農林雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口か完全失業者)で64歳以下」、「雇用者の共働き世帯(妻64歳以下)」とは「夫婦ともに非農林業雇用者の世帯で妻は64歳以下」を意味する。つまり今件では「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」などは含まれない。
今件データの対象となる「夫が勤め人、妻が専業主婦」世帯と「夫も妻も勤め人」といった共働き世帯数の推移としては、「夫が勤め人、妻が専業主婦」世帯が1990年まで漸減、それ以降はしばらく横ばい。しかし2000年以降は再び漸減の傾向にある。一方で「共働き世帯」は1990年まで漸増、それ以降は横ばい。しかし2005年あたりから再び増加に転じ、2012年以降は増加の勢いが強くなっている。2019年以降でようやく頭打ちの気配が感じられる。
両項目の関係で見ると、1990年から2000年の間はほぼ同数で推移しているが、2000年以降は1990年以前と比べて逆転現象が起き、「共働き世帯数 > 夫が勤め人・妻が専業主婦世帯」の構図が維持されている。しかも両種類世帯数の差は年々広がる傾向にある。これは夫の可処分所得の減少を妻がパートで補う、妻が働きやすい非正規雇用の仕組みが整備された(さらには企業による需要が増えた)ことなどを起因とする。
視点を変えて、全世帯に占める割合を計算してみる
別記事にある通り、世帯数そのものは世帯構成人数の減少に伴い増加傾向にある。そこで単純に共働き世帯数の推移だけでなく、「全世帯に占める割合」も算出し、グラフ化する。
つまり上記ではグラフ作成時に該当しなかった世帯、「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」などを合わせた全世帯数に対し、「共働き世帯」などが占める割合、その変移をグラフにする。世帯数そのものは「国民生活基礎調査の概況」から容易に取得できるため、これを用い、比率計算を行う。なおグラフ中にある通り2011年分は東日本大震災による被災三圏を除外して計算しているため、そしてグラフ中の特記はないが2016年分に関しては、全世帯数の値において熊本地震に伴う熊本県の調査対象外措置により、実数値よりは少ない値が示されているため、本来の値からはいくぶんのずれが生じている可能性がある。また2020年分は新型コロナウイルス流行の影響で国民生活基礎調査そのものが実施されていないため、世帯数が用意できず、割合の算出もできなくなっている。
↑ 共働きなど世帯数の全世帯数に占める割合
↑ 共働きなど世帯数の全世帯数に占める割合(2001年以降)
「就労夫に専業主婦」の割合が年々減少している(約40年で約1/3)のはともかくとして、「全世帯数に占める共働き世帯の占める割合」は1990年以降ほぼ横ばいを維持していたという、意外な結果が確認できる。これは【「お年寄りがいる家」のうち28.3%・638万世帯は「一人きり」(最新)】でも触れたように、そして上記でも解説している通り、年金生活者や単身生活者の増加により、日本の世帯数そのものが増加傾向にあるので、(共働き世帯数そのものが増加していても)全体に占める比率としては一定率が維持されたままになる仕組みである。
もっとも2010年以降は少しずつ増加の気配があり、2015年以降は明らかな増加傾向にある。ライフスタイルの変化や可処分所得の物足りなさへの対応、さらには景況感の回復に伴う労働力需要の増加による雇用条件の改善によるものと考えられる。また人数そのもの同様に、2020年あたりからは横ばいに流れが変わったように見える。さらに直近の2022年では、世帯数は増加しているものの、全世帯数に占める割合では減少している実情も確認できる。
「共働き世帯数の全世帯数比率がほぼ2割を維持」し続けていた理由については、納得のいく説明が見つからない。裏付けとなる社会的規範・法令の変化があればよいのだが、それも見当たらない。不思議な現象だが、社会構造学的にこのような均衡が自然に生じる結果となった可能性はある。
見方を変えれば、この比率がさらに上向くようなら、社会全体として大きな変化が生じていることのシグナルととらえるべきだろう。その点では2015年以降に生じた大きな上昇は、まさにそのシグナルといえよう。
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