持参弁当率35%、購入弁当は22%…サラリーマンのこづかいと昼食代の微妙な関係

2023/08/01 02:00

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多くのサラリーマンにとって昼食は欠かせないイベント。空腹のままでは就業を続けるのは困難なだけではなく、不健康に他ならない。また時間の区切り的にもランチタイムはよい息抜きとなるのは言うまでもない。その昼食事情を含め、多方面からサラリーマンのお財布事情を調査した定点観測的調査レポート「サラリーマンのお小遣い調査」の最新版が2023年6月29日付で、SBI新生銀行から発表された。今回はその資料を基に、多方面からサラリーマンのこづかいと昼食代の関係について精査を試みていくことにする(【男性会社員のお小遣い額は前年比微増の40557円、女性会社員も増加の35001円 「2023年会社員のお小遣い調査」結果について】)。

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こづかいの3割強が昼食代…出勤日すべてが「要昼食代」だった場合


今調査の調査要件などは先行解説記事【前年比1915円増の4万557円…2023年のサラリーマンこづかい事情(最新)】にあるので、そちらで確認のこと。

サラリーマンのこづかいのうち、メインの使い道が「昼食代」であることは、すでに【サラリーマンのおこづかい内部事情】で解説した通り。

↑ サラリーマンのこづかいの使い道として欠かせないもの(上位陣)(再録)
↑ サラリーマンのこづかいの使い道として欠かせないもの(上位陣)(再録)

そしてこづかい額そのものの平均もすでに公開されている。そこで一か月あたりの平均出勤日数を分かりやすく20日とし(1か月を4週間、週5日勤務)、休日は自宅で食べることから昼食代は使わない状況を設定する。その前提に従い、1日の昼食代を20倍し、一か月の昼食代を暫定的に算出、こづかい額に占める割合(昼食係数)を計算する。

実際には後述の通り、サラリーマン全体では出勤日の一部、あるいは日常的に持参弁当を食べる人もいる。今件昼食代でも「弁当持参時をのぞく」「勤務日に昼食を取る人ベース」とあるため、こづかい全体に占める比率はもう少し低くなる。その状況設定における検証は次の項目で行う。ここではあくまでも指標の一つとして、その設定で計算を行う。

↑ サラリーマンのこづかいと昼食費が占める割合(月平均勤務日20日すべてを要昼食代と仮定した場合)
↑ サラリーマンのこづかいと昼食費が占める割合(月平均勤務日20日すべてを要昼食代と仮定した場合)

このグラフを元に各値の動向から状況を推測する。

・サラリーマンの昼食費はこづかいの2割台から3割台。

・ITバブル崩壊、前回の金融恐慌時(2002年以降)にこづかいは激減するが、それには当初昼食代を削ることで対応しようとしている。しかし昼食係数(※)が上昇していることからも分かる通り、食生活の変化にはしばらく時間を要している。

・昼食係数の上昇は2004年がピーク。その後ようやくこづかい額も回復し、余裕が出てくる。しかしその後も昼食代の額面減少は継続する。

・2007年に昼食係数はITバブル崩壊水準にまで回復。その後直近の金融危機に伴う不景気でこづかい額は減少するが、先の不景気で慣れたこともあり、昼食費も漸減し、昼食係数は横ばいを見せる。

・2011年はこづかい額の激減もあり、昼食係数は一時的な増加。しかし翌年には再び減少し、それ以降は一定水準を維持している。

・2012年以降はこづかい額はほぼ変わらずか微減、昼食代は漸増、結果として昼食係数も増回傾向。

・2023年はこづかい額が増え、昼食代も増えた。昼食係数は前年比で減少。

※「昼食係数」……こづかい全体に占める昼食費の割合。生活の豊かさを示す指標として使われている「エンゲル係数」を模した設定

こづかいの中の使用先では欠かせない存在の昼食費だが、額面そのものは少しずつ削られる傾向にある。詳しくは別の機会で精査するが、2001年当時は710円だった昼食代は前不景気以降漸減し、景気が回復しても戻る幅は最小限のものとなり、ここ数年は500円台を維持している。いわゆる「ワンコインランチ」(500円玉一枚。実際には500円玉にプラス100円玉が必要だが)時代が続いている。直近2023年は前年に続き600円台を維持したが、これは新型コロナウイルスの流行の影響が考えられる。外食を使うにしても普段から使っている安価なお店が休業していたり、外食による感染リスクを考慮してお弁当を購入するために割高になるといった具合である。また、物価高による外食コストの上昇も大きく影響していると考えられる。

「持参弁当」で昼食代が不要だった場合を考慮すると2割強


次に示すのは調査対象母集団のサラリーマンにおける、出勤日での昼食回数の比率内訳。例えば2023年の「持参弁当」は35%なので、全サラリーマンの全出勤日における全昼食のうち、1/3強は持参弁当となる。「全サラリーマンの1/3強が、毎日持参弁当を食べている」わけではないことに注意。毎日以外に、一日おきに持参弁当、そうでない時は外食といったパターンもありうる。

↑ 平均的な一週間の勤務日の昼食における昼食回数の内訳(比率)
↑ 平均的な一週間の勤務日の昼食における昼食回数の内訳(比率)

「弁当(コンビニなど)」は2020年までは増加の流れ。利便性やヘルシーで低コストなメニューの増加により、利用が増えてきた感はある。あるいはこづかい事情に余裕が出てきた結果かもしれない。

2017年から2018年にかけて「社員食堂」の利用性向が減っていたのも目にとまる。安くて確実、安定した昼食との特性から、サラリーマンにとっては色々な意味で味方のはずなのだが、回答者の企業すべてに社員食堂があるとは限らず、社員食堂そのものの設置比率が減っていた可能性はある。企業側の経費削減のおり、社員食堂が閉鎖されるとの話は決して稀有なものではない。2019年以降は再び増加に転じているが。2021年以降大きく数字が落ち込んでいるのは、新型コロナウイルスの流行により在宅勤務者が増えて社員食堂を使う機会そのものがなくなったり、感染対策のために社員食堂が休業したことによるものと考えられる。

他方「持参弁当」はグラフの領域内では32-35%でほぼ安定した動き。実のところ領域外となる2009年では27%にとまっており、2013年の31%にいたるまで少しずつ増加する動きにあった。金融危機ぼっ発以降持参弁当が一種のトレンドとなり、サラリーマンの間にもお弁当を持参する動きが活発化したことが数字となって表れていた次第。

2023年に限ると、持参弁当や社員食堂の項目が増え、弁当(コンビニ)が減っている。コスト削減の動きだろうか。外食が増えたのは、新型コロナウイルス流行に関する規制がゆるやかなものとなったからかもしれない。

なお2021年で「その他」が大きく増えているが、これは内容的に過去においては「出前」「おごってもらう」「その他」の合算だったのが、2021年にはそれに「在宅勤務でお昼を作る」(8.1%)が加わったからに他ならない。見方を変えれば、2021年において「持参弁当」などの上位項目の値が押しなべて前年比で減少したのは、「在宅勤務でお昼を作る」にシフトした、せざるを得なくなった人が多くいたからだろう。

これら昼食の選択肢のうち、昼食代を使わない「持参弁当」分を除き(2021年以降は「在宅勤務でお昼を作る」分も除く)、上記における計算式と同じように「月昼食費」「こづかいに占める純昼食費率(=純昼食係数)」を算出したのが次のグラフ。こちらの方が、より実態に近い感はある。

↑ 月昼食費(実算、円)とこづかいに占める純昼食費率(月勤務日20日、弁当持参時などのみ昼食代ゼロと試算)
↑ 月昼食費(実算、円)とこづかいに占める純昼食費率(月勤務日20日、弁当持参時などのみ昼食代ゼロと試算)

勤務日20日すべてを要昼食代とした場合の昼食係数は2004年にかけて大きく上昇したあとに急落、2007年を底としてそれ以降はぶれを見せながらも漸増の傾向にある。しかし持参弁当などを考慮すると、純昼食係数とでも呼べる値(純昼食費率)はほぼ横ばい。増加と見たとしてもその増加度合いはわずかなものにとどまっている。こづかい額に対する昼食費の負担が増したように見えていたが、実際には持参弁当率が上昇していることで巧みなバランスが取られており、金額的な負担率はさほど変化がない状態なのが分かる(あるいは順序が逆で、負担が大きくなりそうなので持参弁当率が増加しているのかもしれない)。

もっともこれはあくまでも、持参弁当派とそうでない人たちを全部まとめた上での平均値。今発表リリースでは「弁当持参派とそうでない人それぞれにおけるこづかい額」は公開されていないため、個人ベースでの「弁当持参による、実質的な『昼食代を除いたこづかい額』」動向までは把握できない。また持参弁当でも飲み物を必要とするため、昼食代が毎食ゼロなのも難しい(水筒持参や会社で出されるお茶などを飲む場合もありうるが)。

いずれにせよ、昼食動向を見ても、サラリーマン諸氏の懐事情が厳しいことに変わりはあるまい。


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