1080.9兆円、海外保有率6.7%・中央銀行53.8%…日本の国債の保有者内訳

2024/03/21 12:00

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国(政府)が「これだけの金額を預かりました」として発行する借用証書が「国債」。国の財政、そして国そのものの信頼性に関する重要な有価証券であることから、その発行総額は多くの経済面での分析に使われ、また格付けも行われ、為替や株式市場にまで影響を及ぼし得る。一方、国債は他の債券同様に、借り手にとっては債務だが、貸し手においては債権であり資産に他ならない。貸し手と借り手、資産を検証する際の領域区分により、国債が持つ意味は大きな変化を示すことになる。今回は日本銀行(日銀)の公開データを基に、日本国が発行する国債の保有者区分をグラフ化し、現状を把握していくことにする。

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データの掲載場所は【日本銀行の資金循環データ】。この一覧から「四半期計数」項目で公開されている値を基に、現時点で最新値(2024年3月21日更新)に該当する2023年第4四半期(Q4)(暫定値)の日本国国債の保有者別内訳(長期国債・財融債合計1080.9兆円)をグラフ化したのが次の図。

↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳(2023年Q4暫定・合計1080.9兆円、比率)
↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳(2023年Q4暫定・合計1080.9兆円、比率)

↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳(2023年Q4暫定・合計1080.9兆円、兆円)
↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳(2023年Q4暫定・合計1080.9兆円、兆円)

くだけた例えで表現すれば「日本家の家計には1080.9万円の借金(負債)があります。しかしご近所さんから借りているのは72.2万円だけです。後は同居しているおじいちゃんや、自宅から職場に通っている息子たちから借りています」となる。そして「日本家全体の」借金(負債)は、おじいちゃんや息子たちの立場から見れば「それぞれの債権(資産)」に他ならない。

これは個人事業主なら、社長本人の資産を会社に貸し付けているようなもの。つまり日本政府が発行した国債のうち93.3%は、国内の民間・地方自治体などの資産でもある(付け加えるならば、6.7%の外国人購入者の国債はすべて日本円建て。一方、「民間銀行など」に含まれる投信・証券などの一部は海外勢も購入しているはずなので、現実にはもう少し海外比率は高いものとなる)。

国債の発行額だけを比較して、「国の借金は云々、国民一人あたり云々」「日本の財政はアルゼンチンやギリシャのようにデフォルト直前だ」と危機感を必要以上にあおるのは、筋が少々異なる。特に「国民一人あたりに換算すると」のような表現には、その直後に「(国内消費がほとんどなので)その分、国民一人一人の資産でもあります」と付け加えないと不十分である。

無論、国家財政面だけ見れば、それだけの負債があり利子が発生し、財務を圧迫していることには違いない。また、国内消費にも限界があり、さらに発行額を積み増した場合、国内消費比率が減少していく可能性もある(その分日銀が吸収すれば問題はないのだが)。要は「危機意識を持つ必要はあるが、必要以上の動揺とそれに伴う誤判断は無意味どころか弊害でしかない」である(年金問題が好例)。

日本国国債の利回りが(政府の負債が増加しても)なぜ低いままで推移しているのか、銀行などがなぜ日本国国債を買っているのかあたりと併せて、考える必要があろう。

ちなみに当方で取得している過去の公開値分と併せた比率の経年推移グラフのは次の通り(直近発表分の時系列データに関しては更新されたものはすべて差し替えて再計算している)。

↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳
↑ 日本国国債(長期)保有者別内訳

現時点で時系列的に捕捉しているのは38四半期分だが、「中央銀行」、つまり日本銀行のシェアが増加している。2013年4月4日の金融政策決定会合で決定された量的・質的金融緩和政策(異次元緩和)で、国債購入を積極的に行った結果、シェアが増加している次第である。そして第二次金融緩和が2014年10月末に実施の発表がされており、それも反映された形となっている。詳しくは【日銀の追加金融緩和政策に関する覚え書き】参照のこと。前期では公開値の確認できる期間の限りでは、「中央銀行」のシェアがはじめて50%を超える形となったが、今期でもその状態は継続しているどころか、さらにシェアを上乗せしている。なお2024年3月19日付で日銀はマイナス金利政策の解除を決定している。今後保有者動向にどのような変化が生じるのか、気になるところではある。

また海外部門のシェアについてだが、「国債・財政投融資債」以外に「国庫短期証券」(償還期間が1年未満の短期債権)も含めて計算し直すと、合計額は1221.7兆円、海外比率は13.5%となる。定義、解釈は人それぞれで、「国庫短期証券」を含めるか否かは判断が分かれるところだが(「事業債」「投資信託受益証券」すら含めるべきだとする意見もある)、念のためこちらについても簡易的ながら、海外投資家のシェア推移を確認しておくことにする。

↑ 日本国国債保有比率(「海外」部門、国債・財政投融資債以外に国庫短期証券も含めた場合、兆円)
↑ 日本国国債保有比率(「海外」部門、国債・財政投融資債以外に国庫短期証券も含めた場合、兆円)

昨今では日銀の国債買取に伴い、シェアも小さからぬ変動を示している。今後の動向を注意深く見守りたい。


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