2024年4月度外食産業売上プラス6.0%…29か月連続の前年比プラス
2024/05/27 14:00
日本フードサービス協会は2024年5月27日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2024年4月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス6.0%を示した。全国的に桜の開花が遅れたことで花見需要が昨年より増え、また春の歓送迎会の後押しもあり、観光客の消費活性化が後押しした形となった(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が233、店舗数は3万7030店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は増加、店舗数も増加している。
全業態すべてを合わせた2024年4月度売上状況は、前年同月比で106.0%となり、6.0%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で29か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は1日少なく、土曜日は変わらない、売上の観点ではマイナス。気象環境では雨天日は東京は多く、大阪は少なく、平均気温は東京・大阪ともに高く、客足への影響判断はいくぶんのプラスと判断できる。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これらが外食機運の高まりとともに売上増につながっている。今回月では桜の開花が遅れたことで、4月における花見需要が増え、さらに歓送迎会の増加、観光客の増加や消費の活発化があり、結果として客数は全体では前年同月比でプラス3.0%を示した。一方で客単価はプラス2.9%となり、結果として総合売上はプラス6.0%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で38か月連続のプラス(プラス5.4%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「割引キャンペーンの集客が従前に及ばなかったものの、高付加価値メニューの好調」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2024年4月における営業成績はプラス6.3%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はプラス3.0%、客単価はプラス3.2%と堅調な伸び。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス3.3%、客単価はプラス3.2%となり、売上はプラス6.7%。麺類は客数プラス3.5%、客単価はプラス6.5%となり、売上はプラス10.2%。麺類は「人気メニューの店頭訴求などが奏功」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス1.3%。「客単価が伸びて」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス4.6%、客単価はプラス2.3%、売上はプラス7.0%。新型コロナウイルス流行前との比較となる5年前同月比でも増加を示している(売上プラス6.1%)。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス7.1%、居酒屋の売上はプラス5.0%。部門全体では売上はプラス5.7%を示した。「「パブ・ビアホール」で週末の天候不良が若干影響したが、人流の回復傾向や年度初めの歓送迎会の需要」とある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス2.6%、客単価はプラス0.8%で売上はプラス3.5%を示した。「花見需要のずれ込みで、訪日外客をはじめとした利用客と客単価が増加」との説明がある。
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2024年4月分)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2024年4月)
↑ 外食産業売上5年前同月比(業態別)(2023年4月)
歓送迎会需要が後押し。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比でプラスを示している。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとはうって代わり、低迷感が否めない状態となった。中食に多分に客を奪われている感はある。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。
現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。
牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。
特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の5年前同月比では燦燦たる状況である(5年前同月比で売上高はマイナス30.9%。もっとも店舗数もマイナス30.7%と驚くべき値を示している)。また昨今では店舗の人員数不足が顕著化しており、とりわけピーク時間帯では著しい不足感が生じているとある。今回月ではさらに「物価高騰が続き、低価格重視の消費志向が高まる傾向にあり、利益を伴う売上増はおおむね前年ほどではない」との言及もある。
次回月の2024年5月分では、今回月に続き行動制限などは無く、東日本と九州北部で平年より気温が高い。降水量は北海道や関東、中部で多い。客足はいくぶん伸びるかもしれない。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
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