2022年は74万人…「ニート」数推移

2023/03/13 02:00

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内閣府で毎年発表している「子供・若者白書(旧青少年白書)」では、「ニート」に相当する属性として「若年無業者」を定義し、その推移と現状の分析を行っている。その「若年無業者」の算出に用いられる各値のベースとなる、総務省統計局による労働力調査(詳細集計)の年ベースでの最新値が2023年2月14日に発表された。今回はその値を用い、「若年無業者」の状況を確認していくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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「ニート」の概念と昨今の動向


「ニート」は「NEET(Not in Employment、Education or Training)」の日本語読みをしたもの。そのまま直訳すると「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」となる。子供・若者白書では類似概念の「若年無業者」と表現しているが、その定義は「15-39歳の非労働力人口(状況をかんがみて求職活動をしていない人など)のうち、家事も通学もしていない人」となっている(「子供・若者白書(旧青少年白書)」では2017年版までは「15-34歳」が年齢の区切りだった。各種状況を鑑み、定義の変更が行われたようだ。なお労働力調査でも「若年無業者」に関する精査は行われており、そちらでは2022年版・2021年分でもなお15-34歳である。ただし同条件で35-44歳の人に対して「35-44歳無業者」との定義を行い、「若年無業者」と同じ項目で取り扱いをしている)。求職活動と職業訓練はまったくの同一ではないが、当事者の意思としてはほぼ同じであり、「若年無業者」と「ニート」は大体同列のものと見なしてよい。

その「若年無業者」の推移は次の通り。

↑ 若年無業者(≒ニート)数(万人)
↑ 若年無業者(≒ニート)数(万人)

・直近2022年のニート総数は74万人で前年比1万人の減少。

・15-29歳では最初のピーク時の2002年の値47万人と比べて6万人減少。30-39歳は同年比較で1万人の増加。

若年層の人口そのものが減少していることを考慮すると、若年層に当てはまる15-29歳の若年無業者数が減少傾向にあったのは当然の話。一方でその上の年齢階層における人数が増加していた状況は、あまり好ましい話ではない。

また2001年から2002年にかけて有意に値が増加しているが、この原因は不明。子供・若者白書にも労働力調査の報告書にもそれに関する分析は無い(ニートに近い概念として若年無業者が子供・若者白書に登場したのは2005年版・2004年分、「「ニート」に近い概念である若年無業者」として文言が明確に記されたのは2006年版・2005年分以降)。タイミングも含め、2002年度から開始された学校完全週5日制との関連を指摘する論文も見受けられるが、因果関係までは不明。

2017年発表の子供・若者白書までは参考値としてのみ提示され、「高齢ニート」との暫定的な定義をしていた35-39歳層だが、2002年に全体数が大きく増加したのとほぼ同じタイミングで大きく増加し、2009年・2010年・2012年には最大値の21万人に。2013年以降にようやく減少に転じた雰囲気を示している。

直近2022年ではニート数は74万人で、記録のある1995年以降では最大の人数となった2020年の87万人からは13万人の減少。前年からの動きを見るに、15-19歳の層での2万人の減少が全体数の減少に大きな影響を与えている。この動きは2020年において飲食業などのパート・アルバイト先が新型コロナウイルス流行によって時間短縮営業や休業となり、職を失っていた若年層が、2021年に続き少しずつパート・アルバイトに復帰した結果だといえる。新型コロナウイルスの流行がニートの増減を生み出す流れは、注目に値すべきものだろう。

ニートになる、ならざるを得ない原因


子供・若者白書では「若年無業者」について、「仕事につきたいけれども求職活動をしていない(就業意欲はある)」「仕事につきたくない・つけない(就業意欲が無い)」それぞれの立場において、その理由を提示している。大本のデータは「就業構造基本調査」からのもので、5年おきの調査のため、最新値は2017年調査分。原典となる【平成29年就業構造基本調査】から詳しい値を抽出し、グラフを作成する。なお今グラフも若年無業者(≒ニート)の定義が従来の15-34歳から15-39歳に変わったことを受け、該当する年齢階層の値を抽出して計算している。

↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)(2017年)
↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)(2017年)

↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)(2017年)
↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)(2017年)

「就業希望者のうち非求職者」の場合、現在病気やけがで求職がかなわない事例がもっとも多く33.6%。次いで「知識・能力に自信が無い」が11.9%、「急いで仕事につく必要が無い」が7.3%と続く。一方、就業そのものを望んでいない人(非就業希望者)も病気やけがによるものが最多で33.4%。次いで仕事そのものへの自信が無いとする人が6.9%。さらに学校以外で進学や資格取得などの勉強中だから就業を希望していないとの人が6.6%。他方、「特に理由は無い」を考察に加えると、病気やけがによるものに続く第2位の理由となっている。

内容を項目別に精査すると、

・「病気・けが」などは仕方が無く、回復すれば容易にニート状態から脱せられる可能性は”比較的”高い。

・「学校以外で勉強をしている」などは先を見据えた上で自らその立場についている「若年無業者」であり、問題視されている「ニート」とは本質的な意味合いが異なる。

・「急いで仕事につく必要が無い」「特に理由は無い」は、世間一般的に語られる「ニート」の筆頭に挙げられる。

・「探したが見つからない」「希望する仕事がありそうにない」「知識・能力に自信が無い」は、「個人の問題(努力不足、現状認識不足など)」「雇用環境の問題」双方の可能性、あるいは両方の複合的な結果による場合があり、一概に振り分けるのは難しい。

などとなり、ひとくくりで全部を「ニート」とまとめるのには問題があることが分かる。また、両パターンで「その他」の回答率が高いことから、さらに提示項目だけでは説明しきれない、個々の多様な事情も想定される。

今件の「若年無業者(ニート)」問題は「ニートの状態とは、そもそも何が問題なのか」といった根本部分から考察し直す必要があり、そして解決は一筋縄ではいかない。その実態が、今回のデータからあらためて想像できよう。


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