人口動向も含めた正規・非正規就業者数などの詳細

2023/03/10 02:00

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以前労働力調査の経年データを基に【正規・非正規就業者数の詳細】を展開したが、その中で就業者の動向には各世代・年齢階層の人口そのものも影響している点について触れた。今回はその点を詳しく確認するため、同じく労働力調査の最新年次公開データを基に、男女別・年齢階層別における、例えば正規・非正規社員だけでなく、完全失業者や非労働力人口まで含め、労働に関する観点から区分した人口動向の精査を行うことにする(【労働力調査】)。

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「正規・非正規就業者数の詳細」では原則毎年第1四半期の平均値を取得し、その動向を確認したが、今回は各種就業状態によって区分された人口を確認していくため、それらの値が用意されている年次時系列(年平均)のデータを取得する。現時点では2022年分までが確認できる。15歳以上の人すべてが対象となるが、雇用者の正規・非正規別の区分で値を確認できるのは2002年以降であることから、2002年以降について精査を行う。

【労働力調査 用語の解説】を元に、15歳以上の人について就業状態別に区分すると、次のような関係になる。

↑ 今回精査する就業状態別区分
↑ 今回精査する就業状態別区分

・労働力人口…就業者と完全失業者の合計

・完全失業者…仕事が無く調査期間中は仕事をしていない、仕事があればすぐに就ける、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた、以上のすべての条件を満たしている

・非労働力人口…15歳以上人口のうち労働力人口以外の人

・就業者…仕事をしている人(育児休業なども含む)

・自営業者…個人経営事業を営む人

・家庭従業者…自営業主の家族で、その事業に無給で従事している人

・雇用者…会社、団体、官公庁または自営業主や個人家庭に雇われて給料、賃金を得ている者および会社、団体の役員

・正規、非正規の職員・従業員…勤め先での呼称による。「正規の職員・従業員」以外はまとめて非正規の職員・従業員(パ−ト、アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託、その他)。正(規)社員、非正規社員とも呼んでいる

なお、労働力調査の公開値は原則万人単位でのものであり、それ未満のケタ部分は四捨五入している。それらの値を足し引きしている部分があるため、合計値が必ずしも一致しない場合がある。また自営業者と家庭従業者は今回の精査においては「自営業者など」でまとめている。

まずは男性。全体と年齢階層区分別のグラフを一気に作成する。

↑ 就業状況別人口構成(男性・全体・15歳以上、万人)
↑ 就業状況別人口構成(男性・全体・15歳以上、万人)

↑ 就業状況別人口構成(男性・15-24歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(男性・15-24歳、万人)

↑ 就業状況別人口(男性・25-34歳、万人)
↑ 就業状況別人口(男性・25-34歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(男性・35-44歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(男性・35-44歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成比(男性・45-54歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成比(男性・45-54歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(男性・55-64歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(男性・55-64歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(男性・65歳以上、万人)
↑ 就業状況別人口構成(男性・65歳以上、万人)

15歳以上人口そのものはほぼ横ばい。非労働力人口が少しずつ増えていたが、この動きは主に65歳以上の人口比率が増加しているために起きている。ただしここ数年では前年比でいくぶん減っているが、これは景況感、労働市場の改善により労働意欲が底上げされ、就業をあきらめていた人が求職に転じた動きによるものと考えられる。また正規社員や自営業者などが漸減し、非正規社員が漸増しているのも、多分に高齢層の増加に起因していることは、先の「正規・非正規就業者数の詳細」でも解説した通り。さらに2010年をピークとし、完全失業者が減少していたことは注目に値する。ただし2020年以降は新型コロナウイルスの流行による景況感の悪化で、非正規社員が大きな減少を見せていたのも確認できる(直近2022年では前年比で減少したのは幸い)。

年齢階層別に見ると、15-24歳の非労働力人口の多さが目にとまるが、これは学生が含まれているため。それよりも総人口が減少しているのが気になるところ。正規社員は漸減、非正規社員は横ばい、完全失業者も漸減していた。もっとも総人口数同様にここ数年では正規社員が増え、非正規社員も増えている。

25-34歳は総人口が漸減、35-44歳は漸増から頭打ち、さらには漸減に移行している。おおよそ人口が減る過程では正規が減り、非正規は横ばいか、やや増加の動きを示すのが共通している。完全失業者は横ばいか漸増する気配もあったが、ここ数年では減少へとかじ取りを変えている。

高齢化の気配を覚えるのは45歳以上。45-54歳では総人口が漸減から漸増に転じている。それに伴い正規・非正規社員、さらには自営業者なども増えている。

完全失業者は横ばいで、この数年はやはり漸減。55-64歳では人口減少の動きを見せるが(団塊の世代が歳を取って抜けたことによるもの)、非正規社員が大きく増えて雇用者数の維持が図られている。多分に以前解説したように、退職者による再雇用が非正規社員で成された事例が生じているものと考えられる。非労働力人口・完全失業者がともに減っていることが、その裏付けとなる。ただしここ数年では非正規社員が減り、正規社員が横ばい、あるいは増える動きもある。全体数が減る中での正規社員の増加は、純粋に雇用市場の改善の結果と見てよいだろう。

最大の増加傾向を示すのは65歳以上。正規の数は漸増しているが、それ以上に非正規社員と非労働力人口の増加が著しい。全体像としての非正規社員および非労働力人口の増加は、多分にこの年齢階層が担っていることが改めて実感できる。そして非正規社員の増加理由は55-64歳区分同様に退職者による再雇用が非正規社員として成されたものであり、非労働力人口の増加は定年退職を迎えたのちの悠々自適生活へ移行した人たちがカウントされている。特にこの数年の急増ぶりは注目に値するが、これはいわゆる「団塊の世代」によるところが大きい。

他方、2020年以降に限れば新型コロナウイルス流行で労働市場が急激に悪化し、完全失業者が増える事態が生じている(直近2022年では減少している)。ただし値の動きをよく見ると、若年層から中年層では大幅な悪化が生じているが、壮齢層から高齢層では正規社員や役員の増加が起きており、労働市場の悪化で大きな悪影響を受けたのは若年層から中年層が中心だったことが見て取れる。

続いて女性。

↑ 就業状況別人口構成(女性・全体・15歳以上、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・全体・15歳以上、万人)

↑ 就業状況別人口構成(女性・15-24歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・15-24歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(女性・25-34歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・25-34歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(女性・35-44歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・35-44歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(女性・45-54歳、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・45-54歳、万人)

↑ 就業状況別人口構成(万人)(女性・55-64歳)
↑ 就業状況別人口構成(万人)(女性・55-64歳)

↑ 就業状況別人口構成(女性・65歳以上、万人)
↑ 就業状況別人口構成(女性・65歳以上、万人)

学生が含まれていることによる15-24歳における非労働力人口の多さ、34歳までの総人口の減少や35-44歳の漸増から頭打ち、さらには減少への転換、45歳以上層における総人口の増加、55-64歳が増加から減少に転じているなどの傾向は男性とあまり変わりない。

非正規社員の数が男性と比べて非常に多いのが目にとまるが、これは兼業主婦によるパートやアルバイトによるところが大きい。また中年層において非労働力人口が漸減しているが、これは専業主婦が兼業主婦に転じたのが大きな原因で、兼業主婦の増加傾向の裏付けにもなる。さらにこの数年では35-44歳層などで非正規社員が大きく減り、その分正規社員が増えている。先行記事でも言及の通り、女性の雇用市場の改善ぶりが数字となって表れている。

そして65歳以上だが、男性よりも寿命が長いこともあり、総人口も男性より大きなものとなっている(75歳でも85歳でもすべて「65歳以上」で包括される)。年齢階層内総人口から比べれば少数だが、非正規社員が大きく増加していることも確認できる。

2020年以降における新型コロナウイルス流行による労働市場の急激な悪化の影響だが、数字の限りでは若年層での非労働力人口の増加や非正規社員の減少などが確認できる。パートやアルバイトの立場の人が解雇させられ、新たに職を求めることをあきらめざるを得なくなった感は強い。他方、正規社員数は増加しており、雇用側の守りの方向性での体制強化として、女性正規社員の雇用がさらに積極化されたのではないかとの推測ができる。



正規・非正規社員のみの状況は先の記事で解説した通りだが、その他の就業状況、そして世代の総人口も照らし合わせてみると、また違った一面が見えてくる。いわゆる団塊の世代がすべて65歳以上の領域に突入したことから、今後は65歳以上人口や各種就業状態にある人のさらなる増加、45-54歳層の漸増とそれ以外の層の漸減は続くものと思われる。また女性を中心に非正規社員の数がますます増加する可能性は高い。

↑ 就業状況別人口構成(男性・全体・15歳以上、年齢階層別、万人)(2022年)
↑ 就業状況別人口構成(男性・全体・15歳以上、年齢階層別、万人)(2022年)

↑ 就業状況別人口構成(女性・全体・15歳以上、年齢階層別、万人)(2022年)
↑ 就業状況別人口構成(女性・全体・15歳以上、年齢階層別、万人)(2022年)

さらにいえば完全失業者数がほぼすべての属性で減少しているのはよい傾向といえる(2020年以降の増加は新型コロナウイルス流行という特殊事情によるものだから仕方がない)。若年層から中年層の一部では非労働力人口も減り、これもまた労働力人口に転じている感はある。

今件の各種データから、昨今の労働市場に関する指標に対する論調の多分は、景況感の改善とシニア層の動向が影響していることが改めて確認できよう。


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