正規・非正規就業者数の詳細

2023/07/07 02:00

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日本の就業者(職員、従業員)の労働問題に関しては、正規・非正規の雇用形態による違いが大きくクローズアップされている。特に昨今では非正規就業者の増減にスポットライトが当てられ、物議がかもされている。そこで今回は、総務省統計局の労働力調査による公開値を基に、中期的な正規・非正規の状況変化について、具体的な数字を確認をしていくことにする(【労働力調査】)。

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男女・年齢階層別非正規率動向


最初に精査を行うのは、男女それぞれ、さらには年齢階層別の、非正規職員・従業者率。これは各年齢階層の雇用者(役員を除く)数に対する、非正規職員・従業員者の割合を示したもの。15-24歳は学生も多数含むため実態といくぶんのずれが生じるが、長期データは就学中の者も含めた値しかなく、こちらを採用している。また、年ベースの値で比較する際に取得できる期間を長くするため、毎年第1四半期の平均値、2001年以前は(2月と8月のみ調査が行われているため)2月の値を適用している。

まずは男性。

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年以前は2月の値を取得)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年以前は2月の値を取得)

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年は2月の値を取得)(2001年以降)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年は2月の値を取得)(2001年以降)

若年層が高い値を示しているのは、一つは学生のアルバイトによるもの、そしてもう一つがいわゆるフリーターによるもの。実数を見ると、2023年時点では男性で学生込みの15-24歳における非正規は120万人だが、就学中を除いた値は35万人にまで減る。実際には純粋なこの年齢階層の非正規率は半分足らずと見てよいだろう(試算をすると2023年時点のこの年齢階層の男性における、就学中を除いた場合の非正規率は21.9%となる)。またこの数年に限れば、高齢層以外は横ばい、あるいは減少の動きを見せつつある。

むしろ興味を引くのは高年齢層の高い値。65歳以上では実に70%を超えている。これは定年退職後に勤め先にパートやアルバイト、嘱託や顧問として再雇用される場合、そしてボランティア的な低賃金の就労に当たる場合が多いと考えられる。

続いて女性。

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(四半期のうち、1-3月平均を取得。2001年以前は2月の値を取得)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(四半期のうち、1-3月平均を取得。2001年以前は2月の値を取得)

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年は2月の値を取得)(2001年以降)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(四半期のうち1-3月平均を取得。2001年は2月の値を取得)(2001年以降)

高年齢層が高いのは男性と同じで、理由もほぼ同じ。他方、中年層も高い値を維持しているのは、子育てをしながら日中はパートやアルバイトに従事する、いわゆる兼業主婦をこなしているのが原因。兼業主婦率は漸増していることは別記事で記している通りだが、それとともに中年層の非正規率も確実に上昇していた。

そして直近数年に限ると、男性同様、むしろ男性よりも顕著な形で、高齢層をのぞけば横ばい、さらには減少の動きを示している。就労者の待遇改善の一環として、非正規から正規へのシフトが起きているとも解釈はできよう。2020-2022年において急速に、特に25-34歳や35-44歳で落ちているのは、新型コロナウイルス流行によりパート・アルバイトの需要が減った影響がほぼ直撃した結果だと考えられる。2023年では一部年齢階層で増加の気配が感じられる。

正規・非正規の具体的人数を見ていくと!?


以上は各年齢階層・男女別の役員を除く雇用者=就業者に占める正規・非正規の比率。次に示すのは、それぞれの絶対人数。正規・非正規の状況を把握するのには、非正規率そのものの増減とともに、重要な値ではある。

まず男性。総計、各年齢階層別を一気に算出し、掲載する。

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(15-24歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(15-24歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(25-34歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(25-34歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(35-44歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(35-44歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(45-54歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(45-54歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(55-64歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(55-64歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(65歳以上)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(65歳以上)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(2023年、四半期のうち1-3月平均を取得)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、男性、万人)(2023年、四半期のうち1-3月平均を取得)

非正規就業者の数の増加、比率の増大が問題視されているのは事実。一つのきっかけが関連法の改正にあったのも確かな話で、全体値ではそのきっかけ以降人数・比率ともに増大しているのが確認できる。

ところが年齢階層別に見ると、若年層では非正規の数はほぼ横ばい、よくて微増の範囲にとどまり、正規が漸減し、就業者数全体が減り、結果として非正規の比率が大きく伸びている実態が分かる。一方中年層では総就業数は横ばいか漸増、正規も横ばいかやや増、非正規は漸増となり、若年層とは状況を異にしている。

そして一番大きな変化を示しているのが55歳以上の高齢者。特に65歳以上では正規の数はあまり変わらず(とはいえここ10年ほどの間では増加の動きを示しているが)、非正規の数が大幅に増加し、この年齢階層における就業者数がかさ上げされているのが分かる。この増加の原因は上記にある通り、定年退職を迎えた人たちが(元の職場に)再就職した事案によるところが大きい。

見方を変えれば社会全体として、若年層の雇用は抑えられ、特に正規が削られ、少しずつ非正規は増えていく。代わりに高齢層の非正規があてがわれていく。就業者の年齢階層的な新陳代謝がスピードダウンすることを意味するが、この状況は以前【若年労働者の変化の実情(2013年→2018年)(最新)】でも指摘した内容を裏付けるものとなる。ここ数年では雇用者数が減少しているのが気になるところだが、これは雇用状況が悪化したのではなく、その年齢階層の人口そのものの減少によるところが大きい。

続いて女性。女性は元々非正規の数・比率が大きいだけに、この「就業者の年齢階層の上での新陳代謝のスピードダウン」がより分かりやすい結果となっている。

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(15-24歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(15-24歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(25-34歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(25-34歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(35-44歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(35-44歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(45-54歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(45-54歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(55-64歳)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(55-64歳)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(65歳以上)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(65歳以上)

↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(役員を除いた雇用者数、女性、万人)(2022年、四半期のうち1-3月平均を取得)
↑ 年齢階層別正規職員・従業者と非正規職員・従業員数(万人)(女性)(役員を除いた雇用者数)(2022年、四半期のうち、1-3月平均を取得)

非正規率が高めな以外は、男性と大きな違いはない。若年層は漸減、中年層は総就業者数が横ばいか漸増、正規も横ばいか漸減、非正規は漸増となり、比率も増大。そして高齢層は正規が横ばいかゆるやかな増加で、非正規がグンと伸びる形となっている。また若年層のここ数年における正規・非正規ともに増加する傾向も男性と同じ。15-24歳の正規社員は2014年の97万人を底値に、2021年では127万人にまで回復している(新型コロナウイルス流行の影響で非正規は大きく減ったが、正規は逆に増えるという現象が生じている)。もっとも直近の2023年では118万人にまで減少してしまったが。



若年層の就業者(雇用者)数が減少していた理由は、若年層の人数そのものが減っていること、そして大学への進学率が上昇しているのが要因。また昨今における増加は景況感の回復に加え、大学進学率の上昇に伴いアルバイトをする学生の値の上乗せが増え、結果として雇用者数は増加し、その中でも非正規の増加が目立つ形となっている

一方、上記の「学歴・業種別などの若年労働者の変化」で指摘の通り、企業内の新陳代謝が遅れているのも大きな要因として挙げられる。満員電車ならば一度出た乗客がホームに足を踏み入れた直後に再び電車内に戻り、駅ホームの乗客が中に入れないような状態にある。そして高齢層の急激な非正規率・人数の増加。

昨今における就業者(雇用者)全体としての非正規率の上昇原因は、各年齢階層における非正規数の増加・正規の減少が原因に違いはないが、多分に男女ならば女性、そして年齢階層別ならば高齢層の非正規の増加によるところが大きいことが分かる。

ちなみに直近となる2023年における、非正規率は次の通り。本文中で触れている就学中を含む・含まないことによる差異を把握しやすいよう、15-24歳においては、在学中の人をのぞいた値も算出して併記する。

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(2022年、四半期のうち1-3月平均を取得)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、男性)(2022年、四半期のうち1-3月平均を取得)

↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(2022年、四半期のうち1-3月平均を取得)
↑ 年齢階層別非正規職員・従業者率(役員を除いた雇用者数に対する比率、女性)(2022年、四半期のうち1-3月平均を取得)

正規・非正規の問題は全体として見れば大きな要件に違いないが、表面的な部分だけにとらわれず、その中身、そして関連する各種動向も併せ、考える必要があるに違いない。


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