2022年は前年比プラス2万人、100万人超え…高齢フリーターの推移

2023/03/09 02:00

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職業選択の自由は日本国憲法に定められた基本的人権の一つではあるが、一方で社会的論点として「ニート」と並ぶ形で「フリーター」に関する問題がしばしば挙げられる。さらにこの「フリーター」と立場はほぼ同じものの、一般的定義では年齢の上限を超えるために該当しない「高齢フリーター(壮齢フリーター)」にも注目が集まりつつある。今回は総務省統計局が2023年2月14日に発表した、2022年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果から必要な値を抽出し、この高齢フリーターの動向を推し量ることにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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フリーターとは、年齢が15歳から34歳までで、男性は卒業者・女性は卒業で未婚の者のうち、「(1)雇用者のうち”パート・アルバイト”の者」「(2)失業者(※)のうち探している仕事の形態が”パート・アルバイト”の者」「(3)非労働力人口で、家事も通学もしていない”その他”の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態が”パート・アルバイト”の者」のいずれかの条件を満たす者を指す(配偶者と死別、別離した女性は該当しない)。そして労働力調査では2010年版で他の条件に合致するものの、年齢が35歳から54歳までの者に対し、はじめて高齢フリーターとの表現を使い、フリーターより年上の人達に対する定義づけを行った。

2011年版以降は解説が行われず、労働力調査でもその値を見つけることはできない。しかし算出方法は2010年版で明らかにされており、個々の要素となる値は発表値から抽出できるため、2011年分以降は当サイト側で独自に算出している。なお55歳以上をカウントしないのは、その年齢に達すると通常雇用されていた人の退職者(高齢フリーターとは言い難い)も多数混じってしまうためである。

↑ 中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者数(いわゆる「高齢フリーター」、万人)(2022年)
↑ 中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者数(いわゆる「高齢フリーター」、万人)(2022年)

↑ 中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者数(いわゆる「高齢フリーター」、年齢階層別、万人)
↑ 中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者数(いわゆる「高齢フリーター」、年齢階層別、万人)

従来の意味でのフリーターは2002年以降しばらく数を減らし、2008年を底値としてやや上昇、2010年以降は横ばい、さらには減少の傾向にある。それに対し高齢フリーターはほぼ一貫して(多少の起伏はあるが)増加する傾向だった。35歳にまで歳を重ねた時点で突如フリーターを脱し、雇用上の安定感を得ているわけではなく、35歳以降も引き続き不安定な雇用情勢に置かれている人がおり、それが年々増加している状況。もっとも2014年以降は増加の動きが鈍り、2016年の101万人を天井としてそれ以降はほぼ横ばいの流れにある。直近年となる2022年では前年比で2万人のプラスとなり、過去最高値の103万人に。新型コロナウイルスの流行による経済の低迷が、高齢フリーターの増加にも影響したのかもしれない。横ばいの傾向も終わりを告げるのだろうか。

フリーター数が漸減しているにもかかわらず高齢フリーターが減らないのは、フリーターから脱することができない人が増加しているのが一因と考えられる。無論、自分からそのライフスタイルを望んで維持している人も、多数いるのには違いないため、ここでカウントされた人すべてが仕方なくフリーター状態にあるわけではない。

年齢階層別で見ると2011年までは45-54歳層はほとんど横ばいだったのに対し、35-44歳の増加が著しい。このことから、本来のフリーター基準で定義された25-34歳の人たちが逐次年を取り、この層に加わって高齢フリーターの数を押し上げていることが想像できる。特に2011年は35-44歳層の増加幅が大きく、計測・データがある期間内では最大の増加数(前年比8万人プラス)なのが確認できる。

一方2012年以降はより高齢となる45-54歳層の増加も始まっている。万単位のカウントなので多少の誤差はあるが、2012年以降はおおよそ35-44歳層よりも45-54歳層の増加幅が大きくなっている。通常フリーター層から高齢フリーターの前半期の増加への移行による高齢フリーターの増加だけでなく、前半期から後半期への移行増加も始まったものと考えられる。ややこしい話になるが「高齢フリーターの高齢化」な次第である。

直近の2022年では高齢フリーターの若年層部分、つまり35歳から44歳層の人口は1万人減ったが、45-54歳層は前年から3万人の増加となり過去最高値を示し、結果として合計値は前年比で2万人の増加となった。

年齢階層別人口に対する構成比率の前年比変移は、直近年では35-44歳の区分はほとんど変わらず、その上の45-54歳では増加。中長期的に見ると天井感の雰囲気を覚えさせた45-54歳が再び増加の動きを見せているのは注目に値する。

↑ 「中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者(いわゆる「高齢フリーター」)が該当年齢階層人口に占める割合
↑ 「中高年層のパート・アルバイトおよびその希望者(いわゆる「高齢フリーター」)が該当年齢階層人口に占める割合

該当者の内訳をみると、多くが失業者ではなくパート・アルバイトの雇用状況にある(例えば男性35-44歳における27万人のうち、パート・アルバイトは25万人に達している)。長年フリーターを続けた中年層において、パート・アルバイト「以外」として雇用されることが難しい実情が、高齢フリーターを生み出す大きな要因なのだろう。



繰り返しになるが「(高齢)フリーター」すべてを「大人として望ましくない姿」「社会的に批判される立場」のような、否定的な存在としてとらえるべきではない。そのようなライフスタイルを望む、そしてそれをかなえられるだけの条件が整っている人も多数いる。一方で、フリーターから抜け出たいにもかかわらず、悪循環の繰り返しでフリーターの立場に居続けざるを得ない人も大勢いる。よほどのスキルや推薦、コネが無い限り、フリーターの期間が長いほど、職歴の上でも、経験の上でも正規雇用は難しくなる(雇用する側の立場で考えれば、容易に理解はできるはず)。【転職者の正規・非正規状況】で示した通り、元非正規社員の転職者の多くが、やはり非正規社員の立場となるのがよい例である。

このような状況に対し、企業、行政、そして周囲の人たちはどのような手立てを講じるべきか。該当者一人ひとりはもちろん、関係各部局の意識改革が求められ、必要であれば状況改善のための行動が求められている。


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※失業者
2018年分の労働力調査から、「完全失業者」に加え「失業者」の概念が追加された。

・失業者
次の3つの条件を満たす者
【1】仕事が無く調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)。
【2】仕事があればすぐ就くことができる。
【3】調査週間を含む1か月間に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。

・完全失業者
次の3つの条件を満たす者
【1】仕事が無く調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)。
【2】仕事があればすぐ就くことができる。
【3】調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。

完全失業者は2017年分までと同じ定義で、失業者は仕事を探す活動や事業を始める準備の期間が異なるのみ。報告書では失業者が多く用いられるようになっており、今件の高齢フリーターのベースとなるフリーターでも要素の一つである「完全失業者で探している職種がパートかアルバイト」が「失業者で探している職種がパートかアルバイト」に差し替えられることとなった。完全失業者に関する公開データでは一部取得できない値が生じてしまったため、2018年分以降は報告書同様に失業者の値を基に各値を算出している。

なお条件から分かる通り失業者は完全失業者よりも多いため、2018年分以降の値は2017年分以前の基準で計算すれば、もう少し低くなるはずである。

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