元正規で再び正規になれた転職者は83万人…転職者の正規・非正規状況
2023/03/05 02:00
現在就業している職場の労働条件に耐え切れない、無理な長期出張を強要されるなどの自発的離職を余儀なくされる場合以外に、リストラの対象になる、定年退職や早期退職制度を活用して職を辞する、あるいは他企業からの引き抜きにあう、そして勤めている会社が倒産するなど、さまざまな理由で現職から離れ、新たな職に就くことを転職と呼んでいる。転職者の中には正規社員(職員・従業員)だったものが再就職の中で非正規社員としてしか再就職できない場合や、逆に非正規社員から正規社員への転職を果たす人もおり、雇用形態上の観点でもさまざまな人生の躍動感を垣間見ることができる。今回は総務省統計局が2023年2月14日に発表した、2022年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、直近1年間に離職して新たな職についた人における、正規・非正規の雇用形態の変化について確認をしていくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。
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次に示すのは前職を辞してから1年以内に再就職を果たした人のうち、雇用形態、具体的には正規社員と非正規社員の地位の変化を踏まえ、その動きを示したもの。なお公開値は万人単位までなので、前職と現職で合計人数が一致しない場合もある。
↑ 転職者移動状況(過去1年間限定、万人)(2022年)
↑ 転職者移動状況(過去1年間限定、男性、万人)(2022年)
↑ 転職者移動状況(過去1年間限定、女性、万人)(2022年)
2022年に転職をした人(役員以外、過去1年間に前職を辞した人。以下同)は277万人。そのうち正規社員だったのを辞した人は131万人、非正規は146万人(転職をしていない人もいるので、辞めた人が277万人ではないことに注意)。元正規社員で再び正規社員になれた人は83万人だが、残りの48万人は非正規社員として再就職している。一方非正規社員だった146万人のうち正社員になれた人は29万人で、残りの112万人は再び非正規社員の地位で再就職している。例えばスーパーでパートをしている女性がもう少しよい条件で働ける別のスーパーに転職する場合など、一概に非正規社員の地位が正規社員よりも望まれていないとは限らないが、非正規社員の人が転職をする場合も、正規社員になれる可能性は(人数的に)少数の事例となることが分かる。
男女別に確認しても、男女ともに正規から非正規のケースが、非正規から正規のケースを上回っている。これは多分に定年退職や早期退職者(壮齢・高齢層の離職者)が非正規として再雇用されるケースが多いと考えられる。実際、55歳以上に限定して(絶対人数が少ないため数字上のぶれがいくぶん大きくなることに注意)確認すると、正規社員だった人が非正規社員として転職している事例が極めて多いことが分かる。
↑ 転職者移動状況(過去1年間限定、男性、55歳以上、万人)(2022年)
↑ 転職者移動状況(過去1年間限定、女性、55歳以上、万人)(2022年)
この転職における正規・非正規の雇用状況の移転について、正規社員から非正規社員、非正規社員から正規社員、つまり就業状況の変化が生じた人に限り、さらに男女別に動向を経年推移で見たのが次のグラフ。
↑ 正規・非正規間を移動した転職者数(過去1年間、男女別、万人)
2013年のようなイレギュラーな値を示すこともあるが、おおよそ非正規社員は女性の方が多く、求人も非正規社員の職は女性が適している場合が多いこともあり、非正規社員から正規社員になれた人の数は男性よりも女性の方が多い。逆に正規社員の数は男性の方が多いことから、正社員から非正規社員となる人の数は男性の方が多くなる。
一方、2013年、そして2015年から2020年と2022年において、男性の正規社員から非正規社員への転職者の多さが目にとまるが、これは上記の通り高齢層の正規社員が早期退職・定年退職などで退職し、非正規社員として再就職した事例による結果である。
かつては専門誌がテレビCMなどで盛んに「転職で収入アップ」などのキャッチコピーを用いて喧伝し、転職を推し進める動きがあった。しかし最近ではそのような動きはあまり見られない。労働力調査でも2013年からは転職による収入の上下に関する問い合わせを止めており、今回は雇用状況の違いにのみスポットライトをあてて状況確認を行った。
ここ数年は男女ともに非正規から正規に転職がかなう事例が増加している。それが元々本人の希望によるものであれば、喜ばしい話には違いない。
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