宿泊費、運賃、パック旅行費(ネット上での決済)3852円で最多、電子書籍が大きく伸びる…ネットショッピング動向の詳細(2024年3月分)(最新)

2024/05/10 09:50

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2024-0510総務省統計局が定点観測的に実施している調査の一つ【「家計消費状況調査」】は、元々「家計調査」の補完として、消費性向をより詳細に確認するのが目的。昨今のインターネットを用いた商品やサービスの購入(ネットショッピング)機会の増加状況に併せ、同調査でもその動きを詳しく追いかけるため、2015年1月実施分からネットショッピング支出に関し、大幅に調査項目を増やしている。今回はその調査項目の結果を基に、ネットショッピング支出の詳しい現状を確認していくことにする。同調査の以前からのデータを用いた、大まかな動向を眺められる【利用世帯率55.2%・平均支出額2万4788円、利用世帯に限れば4万4881円…ネットショッピング動向(最新)】と併せて読み進めることをお勧めする。

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直近月の支出詳細…食料品や旅行関連が多い


最初に示すのは、主要項目別のインターネットを利用した支出の明細。月次データを基にしているので、今回は2024年3月における月次の平均額となる。区分される項目は、他人向けが「贈呈品」、本人向けが「食料品」「飲料」「出前」「家電」「家具」「紳士用衣服」「婦人用衣服」「履物・その他衣類」「医薬品」「健康食品」「化粧品」「自動車等関係用品」「書籍」「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」「電子書籍」「ダウンロード版の音楽・映像、アプリなど」「保険」「宿泊料、運賃、パック旅行費(ネット上での決済)」「宿泊料、運賃、パック旅行費(上記以外の決済)」「チケット」「前述に当てはまらない商品・サービス」の全部で22種類。

あくまでもインターネットを利用している世帯・いない世帯を併せた、そしてインターネットを利用していてもネットショッピングをしていない世帯も含めた全世帯における平均値であること、さらに今件は二人以上世帯に限定した値であることに注意しなければならない。一人世帯(単身世帯)、さらには一人世帯と二人以上世帯を合算した総世帯の動向は四半期以上のペースの公開となる。それらの支出度合いは別の機会に精査を行う予定。

また参考値として、インターネットを通じて注文をした世帯比率、さらにはその世帯に限定した場合の総支出額の推移も示しておく(主要項目別の値までは公開されていない)。

↑ インターネットを利用した支出明細(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、円)(2024年3月)
↑ インターネットを利用した支出明細(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、円)(2024年3月)

↑ インターネットを利用した支出明細(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、前年同月比)(2024年3月)
↑ インターネットを利用した支出明細(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、前年同月比)(2024年3月)

↑ インターネットを通じての世帯注文動向(二人以上世帯)(2015年1月以降)
↑ インターネットを通じての世帯注文動向(二人以上世帯)(2015年1月以降)

3つ目のグラフにおける最新値は先行記事の「ネットショッピング動向」で記した通り(世帯比率は四捨五入をするケタが異なっているため、表示上の違いが生じている場合もある)。2016年後半以降、じわりとインターネットを通じて注文をした世帯比率が増加しているようすが把握できる。ただし2020年以降は支出金額が漸増する中で、世帯比率はほぼ横ばいにも見える。

他方1つ目の詳細グラフだが、こちらは支出金額の平均で、利用件数・頻度までは分からない。各商品の平均的な単価から推測するしかない。宿泊関係は単価が高いことから、平均値の算出の際にも大きな値が出ることが多い。とはいえ利用率も相応のものであることは容易に想像できる。

前年同月比を見るとネット上での決済における宿泊関係が大きく伸びている。前年同月と比べれば、各種規制も解除されたからだろう。出前もあるいはそうかもしれない(出先でのオーダー)。一方で、電子書籍が大きく伸びているのは気になるところではある。

書籍やゲームソフト、電子書籍などの変移は


せっかく詳細な区分が行われたこともあり、いくつかの注目項目に関する平均支出金額の時系列的変移を見ていくことにする。他の分析記事との連動性を考慮し、「書籍」「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」「電子書籍」「ダウンロード版の音楽・映像、アプリなど」の4項目に的を絞り、その変移を見たのが次のグラフ。

↑ インターネットを利用した支出明細動向(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、一部項目、円)
↑ インターネットを利用した支出明細動向(二人以上世帯、非利用世帯も含めた平均、一部項目、円)

商品単価はさほど変わりないはずの「書籍」と「電子書籍」の間に大きな差異があり、同じインターネット経由で購入されるにもかかわらず、双方の消費性向には大きな違いがあることが、改めて確認できる。紙媒体による書籍調達がいまだに圧倒的多数である現実が見えてくる。あるいは電子書籍は割引によるプロモーションが多いので、その機会が多用されているのだろうか。

物理メディアとなる「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」と比べると、ダウンロード版の音楽や映像データ、アプリの支出金額も小さめ。デジタル系の支出は利用者が少ない上に、購入単価も低いため、全体平均としては値が低く抑えられてしまうと考えられる。

また、2017年に入ってから今グラフの対象項目、特に「書籍」「音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフト」で金額の上乗せが確認できる。これは利用者の単価増加ではなく、利用者率の増加に伴う平均値の底上げが原因だと考えられる。これらの項目でネット通販がますます浸透している証でもあろう。

2020年春先以降に限れば、新型コロナウイルスの流行を受けて発生したトレンド「巣ごもり化」による影響と思われる動き、書籍や音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフトが大きく伸びている実情があらためて確認できる。電子書籍やダウンロード版の音楽・映像、アプリなども伸びているが、物理メディアほどの伸び方は見られない。もっともグラフの傾斜が急になっていることに変わりはないが。

他方、書籍や音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフトは2021年初頭以降、ゆっくりとではあるが漸減の動きが見られる。景況感全体の失速の影響によるものか、それとも物理的なエンタメ商品の低迷の動きなのか、今調査の結果だけでは判断が難しいが、注目すべき動向に違いはない。さらに2023年に入ってからは減少の度合いが大きくなった感はある。ここ1年ほどの動向からは、音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフトの失速ぶりがよく分かる。電子書籍やダウンロード版の音楽・映像、アプリなどもほぼ同じタイミングで横ばいの動きを見せていた。

ただし、この数か月はいずれも急速に持ち直しを見せ、値を伸ばしていた。特に音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲームソフトの伸びが著しい。やはり年末年始のギフト用に買われているのだろう。そのせいか、2024年の1月に入ると大きな失速を見せてしまっている。一方で電子書籍の回復ぶりは維持されたままである。

地域別の違いを見ていこう


「家計調査状況調査」の月次公開値では全体の値以外に、回答者の居住地域や居住都市規模別の集計結果も公開されている。インターネット通販の利用性向を推し量る上で興味深い違いが確認できるので、こちらも一部を精査しておく。

まずは地域、居住都市規模別の直近月におけるインターネットショッピング支出平均額と、利用世帯比率。支出平均額は非利用世帯も含むことに注意。要は、インターネットそのものを使っていない世帯や、ネットショッピングをしていない世帯の割合に、少なからぬ影響を受けることになる。また各区分の構成要素については【家計消費状況調査の用語の説明 支出関連項目】を参考のこと。

↑ 地域・都市規模別インターネットを通じて注文をした世帯比率(二人以上世帯)(2024年3月)
↑ 地域・都市規模別インターネットを通じて注文をした世帯比率(二人以上世帯)(2024年3月)

↑ 地域・都市規模別インターネットを通じて注文をした支出平均額(二人以上世帯、非利用世帯含む、円)(2024年3月)
↑ 地域・都市規模別インターネットを通じて注文をした支出平均額(二人以上世帯、非利用世帯含む、円)(2024年3月)

インターネットそのものの利用度合い、ネットショッピングの利用度合いが高い若年層の比率の違いなども影響し、地域区分では関東の利用度合いが高く、当然平均支出額も高めの値が出ている。今回月は特に関東の利用度合いが群を抜いている。一方で注文金額は関東がトップに変わりはないものの、近畿や東海、北陸が高めの値を示しており、注文世帯比率の差異よりも随分と差を縮めている。興味深い傾向には違いない。逆算すると近畿や東海、北陸のインターネット通販利用者は、世帯単位での利用単価が高いことになる(あるいは関東地域での利用性向として、少額利用者が多いとも解釈できる)。

地域別の推定総支出金額を試算するには、今件の二人以上世帯ではなく総世帯で勘案する必要があり、さらに各地域の世帯数を乗じねばならないため、単純に上記の世帯比率や金額からのみでは判断できない。しかし関東地域の人口が多いことを考えると、やはりインターネットによる支出総額も、概して関東地域によるものがかなりの比率を有していると考えてもよさそうだ。

具体的な項目だが、やはり今サイトの他記事との関連性も考慮し、「書籍」「電子書籍」の2項目を確認する。もっとも「電子書籍」は金額そのものが少額となるため、多分にぶれが生じるリスクがあることを前提に見る必要がある。その懸念がないぐらいに支出額が増える=利用されるようになるのが好ましいのだが。

↑ インターネットを通じて注文をした支出平均額(地域・都市規模別、二人以上世帯、書籍、非利用世帯含む、円)(2024年3月)
↑ インターネットを通じて注文をした支出平均額(地域・都市規模別、二人以上世帯、書籍、非利用世帯含む、円)(2024年3月)

↑ インターネットを通じて注文をした支出平均額(地域・都市規模別、二人以上世帯、電子書籍、非利用世帯含む、円)(2024年3月)
↑ インターネットを通じて注文をした支出平均額(地域・都市規模別、二人以上世帯、電子書籍、非利用世帯含む、円)(2024年3月)

インターネットの普及率や世帯所得の違いなども影響していると思われるが、やはり大都市圏の方が支出額は大きい。ただし今件は単月ベースで金額も3ケタ程度であることから、ぶれが生じている可能性は否定できない。ある程度まとまった計測機会による平均値の算出が必要なのだろう。最近は電子書籍の額も増えており、書籍に追い付きそうな地域もあるほどなのだが。


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