直近2024年2月は77.25ドル、戻しの動き…原油先物(WTI)価格の推移

2024/03/19 06:00

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昨今ガソリン価格、そしてその大本となる原油価格の動向に大きな注目が集まっている。為替にも影響されるため日本国内のガソリン・灯油価格の変動は海外と比べればゆるやかなものだが、それでも小さからぬ値の動きが生じている。そして国際情勢は原油価格の変動を受け、大きな変化が生じ、また逆に国際情勢も原油価格の変動を起因として変化が起きている。そこで今回は原油先物(WTI、アメリカ南部などで産出される原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(West Texas Intermediate)の先物価格。原油価格の指標的な立ち位置にある)の動向を確認し、石油(原油)価格の変遷を眺めることにした。

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データ取得元はアメリカ合衆国のエネルギー省(EIA、Energy Information Administration・Official Energy Statistics from the U.S. Government)が提供している【原油などの価格動向に関する各種データ提供ページ(Petroleum & Other Liquids/DATA))】。ここから「Spot Prices」を選び、リスト上記にある「Crude Oil(原油)」から「WTI - Cushing, Oklahoma」を選択、「View History」ページに移行。その上で月次データを取得する。今件データはオクラホマ州のCushingに位置する売り手側施設での価格。現時点では2024年2月分までが確認できる。

↑ WTI価格(1バレルあたり、月次、ドル)
↑ WTI価格(1バレルあたり、月次、ドル)

直近の金融危機、いわゆる「サブプライムローンショック」後の資源価格高騰時における価格の急騰が一番目立つ(2008年中頃)が、それ以外でも中期的に原油価格は上昇傾向にあること、そして2009年以降は値を高値に戻した後、もみ合いを続けて100ドル内外での値を維持、さらにイレギュラー的な下げ方を示したことが分かる。

詳しくは後述するが2015年1月末あたりで原油価格は底値を打ち、その後復調の兆しを見せていたものの間もなく失速。昨今では月次に限れば失速を続けた後に底打ちを見せ(2016年2月、30.32ドル)、リバウンドを示したあと、節目の50ドル付近で踊り場的な動きを見せてから上昇、そしてここしばらくは大きく下げる動きが生じていた。2019年1月以降の動きはリバウンドと見てよいだろう。その後はもみ合いを見せ、2020年に入ってからは失速、急落したのちの反動の動きからさらなる上昇。昨今ではロシアによるウクライナへの侵略戦争を受けて上昇度合いに加速がつき、100ドル超えあたりの高値でのもみ合いを示していたが、ようやく値を落とし、70ドル台で安定していたものの、主要生産国のサウジアラビアやロシアによる減産・輸出削減政策の延長決定を受け、じわりと値を上げていた。中東情勢の悪化も上昇に拍車をかけている。

直近でやや値を落としていたのは、世界経済の成長や需要を巡る懸念が原因とも、投機筋によるものとも言われている。また、石油輸出国機構と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」で内部意見の対立が生じ、追加減産の観測が後退したのも要因。紅海の船舶攻撃が一時的な値上げ圧力につながったが、供給過多という状況に影響をおよぼすまでには至っていないようだ。直近月では前回月に続く形で、底打ち反転のような値の動きをしている。

月次ベースにおける最新の値は2024年2月分の77.25ドル。前回月の74.15ドルと比べて3.10ドルの上げ。前年同月の76.83ドルと比較すると0.42ドルの上げ。

続いて1946年1月から月次単位でWTI価格を保存している場所「Economagic.com」で取得したデータによるグラフ。【Price of West Texas Intermediate Crude; Monthly NSA, Dollars Per Barrel】から逐次データを取得していく。なお「年ベースでの最高値」「平均値」ではなく「毎年の12月の値」を元にしている(直近2023年はEIAから取得した最新月分の値を反映)ため、例えば2008年の値は同年で最高値を付けた夏の130ドル強ではなく、12月の40ドル強になっていることに注意。

↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル)(各年12月時点)
↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル)(各年12月時点)

1970年頃まではほとんど固定相場で非常に安価(例えば1950年なら2.57ドル)で推移していたのが、オイルショック(石油危機)前からじわじわと上昇。1970年代のオイルショックで大きく値を上げていく。その後はやや安値となり小刻みな上下を見せつつも安定していたが、21世紀に入ってから再び大きく上向いているようすが分かる。また2008年以降の資源高騰とその後の反動による急落が、いかに異常だったかも理解できよう。



昨今では冒頭にある通り原油価格の大きな変化が国内外でさまざまな動き(株式市場や国レベルでの外交施策の変化)を誘発しており、原油の影響力の大きさが理解できる。変動の大きさをより詳しく確認するため、金融危機ぼっ発の2007年以降の月次、そして2014年頭以降の日次動向を取得できる範囲、さらには直近1年間の日次による動向をグラフ化しておく。

↑ WTI価格(1バレルあたり、月次、ドル)(2007年1月以降)
↑ WTI価格(1バレルあたり、月次、ドル)(2007年1月以降)

↑ WTI価格(1バレルあたり、日次、ドル)(2014年1月1日以降)
↑ WTI価格(1バレルあたり、日次、ドル)(2014年1月1日以降)

↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、日次)(直近1年間)
↑ WTI価格(1バレルあたり、ドル、日次)(直近1年間)

2014年以降に限っても、OPECなどの減産合意に伴う産油国、さらには消費国の思惑の錯綜、アメリカ合衆国のシェールオイルの生産動向、産油国の政治的混乱などから、WTI価格は小さからぬ影響を受け、動きを示している。

産油国の一つであるベネズエラの情勢が不安定化を強めていることやOPECの減産の継続で、原油価格は少しずつ上昇の動きを見せた。2020年に入ってからはイランによるイラク領内の米軍基地への攻撃をきっかけとした中東情勢の激化懸念から値を大きく上げたものの、新型コロナウイルス流行で中国を中心に世界経済の後退が生じ需要減が起きるのではとの懸念が大きなものとなり、さらにOPECと非OPEC国との間で構成するOPECプラスが減産強化に合意に至らず、一部産油国が増産に踏み切る動きを見せたことから急落している。そして欧米でも新型コロナウイルスの影響が大きくなるに連れて経済活動の縮退化が顕著となり、原油価格の下落に拍車がかかる状態に。

2020年4月20日にはWTIでもマイナス36.98ドルという記録的な安値がついた。詳しくは【逆オイルショック・原油先物価格がマイナスに。現物引き取ったらお金がもらえる時代】で解説しているが、原油のだぶつきが過度なものとなり、備蓄しておく場所がなくなり、先物を現引きする場所の確保が難しくなったので「代金を払うからどうか原油の現物を引き取ってほしい」という状態。その後は持ち直しを見せたものの、低迷感は否めない状態が続いていた。そして2020年の終わり頃からは新型コロナウイルスのワクチンの相次ぐ開発と本格的な接種が始まり、それが普及浸透することによる経済の復興を期待する形で、勢いよく値を上げている。需要拡大に伴いこれまでサポートしてきたアメリカ合衆国でのシェールオイル生産が、同国の政権交代を受けてのクリーンエネルギー政策によって弱腰化しているのも値上がりの大きな要因。

2021年半ばからはデルタ変異株の猛威により世界的な経済停滞・景気減速の懸念を受け、一時的に売り基調となっていたが、ワクチン接種率の上昇などを受けて持ち直しを見せた。さらに各国の地球温暖化対策の施策の実態とのアンバランスさによるエネルギー不足が顕著化しており、冬場を控えて需要は拡大を示し、原油や天然ガスは高騰するばかりだった。ところが新型コロナウイルスのさらなる変異株オミクロン株の出現で、再び経済停滞・景気減速の懸念が生じ、価格は一時的に下落したがすぐに持ち直しを見せる。ロシアによるウクライナへの侵略戦争は価格の上昇傾向に拍車をかける形となっている。2022年3月8日には、123.64ドルという高値を記録した。

直近の2024年3月11日では78.87ドルを付けている。2022年3月8日の高値からは落ちているが、これは米中経済の不安定化による需要落ち込みリスクや、G7によるロシア産原油への対ロ制裁措置(輸出価格の上限設定)が値の足を引っ張っている。2022年末あたりからは、70-80ドルのボックス圏内での値動きのようにも見えたが、その後、サウジアラビアとロシアの原油供給削減を年末まで延長したことや、中東情勢の悪化を受け、値を上げていた。この数か月は世界経済の成長や需要を巡る懸念や投機筋によるものとも言われる売り圧力で下げていたが、最近では中東情勢の悪化(武装組織による攻撃で生じている紅海商船のリスク高騰)で値を上げている。

原油価格動向が昨今の国際情勢、そして原油産出国(アメリカ合衆国含む)の思惑も多分に影響していることを思い返せば、今後も多方面にアンテナを向け、状況の確認と精査が求められるのは言うまでもない。


↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである



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