利用世帯率54.5%・平均支出額2万3577円、利用世帯に限れば4万3250円…ネットショッピング動向
2024/03/08 09:00
スマートフォンやパソコンなどを使い、気軽に、そして瞬時に、距離を感じさせずに情報のやりとりを可能とする技術とインフラ、インターネット。その普及は多様な方面に革新的な変化をもたらしている。その一つが通信販売(通販)部門。インターネットを用いて実商品やサービスの注文をしたり、さらにはデジタルデータ・権利を購入する仕組みは、通販のハードルを大いに下げ、それこそ近所のコンビニで買い物をするかのような手軽さを提供するようになった。今回はインターネットが利用できる端末の普及率向上、サービスの充実や取り扱い業者の増加でますます生活に密着したものとなりつつあるインターネットショッピング(ネットショッピング)に関し、総務省の定点観測的調査の一つ、家計消費状況調査の結果を基に、その動向を確認していくことにする(【家計消費状況調査】)。
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増加する利用率、利用額
家計消費状況調査は2002年1月分から調査結果が公開されているが、月単位では二人以上世帯のみの公開となる。そこで二人以上世帯の動向を確認していくことにする。まずはインターネットを利用した支出額の推移。ここにおける「利用」とはインターネット上で商品やサービスの注文、予約をした場合を意味し、店頭で直接注文や予約をした場合は含めない。各種物理的商品(ピザの注文など、さらにはネットで注文して外食した場合も含む)、サービス、デジタルコンテンツの購入も含まれる。インターネットで購入手続きを行い、コンビニで支払いをした場合は含むが、不動産の購入や投資活動、財産の移動、寄付などは該当しない。
次に示すのは二人以上世帯における、インターネットを利用した支出額の推移。非利用者も含めた平均額であることから、利用世帯率と利用世帯における利用額の動向双方を併せた、一般的な利用状況を示すことになる。
↑ インターネットを利用した支出額(二人以上世帯、月次、平均、非利用世帯含む、円)
↑ インターネットを利用した支出額(二人以上世帯、月次、平均、非利用世帯含む、円)(2011年1月以降)
インターネットそのものの普及やインターネット上で買い物が可能なサービスの増加もあり、まさに右肩上がりの状態を示している。またここ数年間に限れば、広告費動向の記事で言及している「年末と年度末はインターネット広告費が有意に上昇する。これはインターネット通販の需要が急増するのに併せて」云々との話を裏付ける動きが確認できる。
非利用者も含めた世帯単位でのインターネットを利用した支出額は、直近の2024年1月においては2万3577円。2002年1月の時点では1000円にも満たなかった(889円)のと比べて、格段に増加していることになる。
なおグラフを見返せば分かる通り、2015年1月以降はそれ以前と比べ、有意な形での(イレギュラーにも見える)増加が見受けられる。これはインターネットによる支出が何らかの形で活性化したのではなく、調査方法が変更・細分化されたのが原因。家計消費状況調査のただし書きにも
と明記されている。要は購入性向が変化したのではなく、回答者の区分における認識が変わったことが原因。
非利用者も含めた世帯単位の平均額が上昇しているのは、利用世帯率の増加と、利用している世帯の利用額の上昇、双方を理由としている。実際、利用世帯率もまた右肩上がりで、直近の2024年1月では54.5%に達している。
↑ インターネット経由で注文をした世帯割合(二人以上世帯、月次)
今では二人以上世帯においては半数強の世帯がネットショッピングをしている計算になる。
なお2020年4月以降において大きな上昇が確認できるが、これは新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言などを受け、巣ごもり現象が加速し、インターネット経由での買い物の必要性が高まったことによるものと思われる。ただしその上昇が数年分の上昇分を先取りしたようで、ここ数年は世帯割合は横ばいを示している。
利用者における利用額は微増?!
インターネットショッピングに関して世帯全体の利用額は右肩上がり、利用率も右肩上がり。ならば利用世帯に限定した平均額はどのような推移を示しているのだろうか。
↑ インターネットを利用した支出額(二人以上世帯、月次、平均、利用世帯限定、円)
↑ インターネットを利用した支出額(二人以上世帯、月次、平均、利用世帯限定、円)(2011年1月以降)
直近の2024年1月では4万3250円を示している。利用者限定で見ても、利用額は増えている。しかし世帯全体の上昇度合いと比べると穏やかなものにとどまっている(2015年1月分が有意、かつ特異な上昇を示している理由は上記の説明の通り)。これは本来の「インターネット通販利用者における利用金額の漸増ぶり」が示されたまでの話。前項目で解説した「非利用者含む」の支出額が勢いよく伸びているのは、「利用者における利用金額が伸びている」と「利用者比率が上昇している」の双方が同時に起きているからに他ならない。
また2015年以降は伸びが止まり、一時的に横ばいに移行したように見える。そして2022年以降再び上昇を開始したようだ。2022年までの横ばいの動きは、世帯全体の構成比率において、高齢者≒インターネット通販とは疎遠な層が増えているのが多分な理由と考えられる。直近の2024年1月においては、二人以上世帯全体におけるインターネットを通じて注文をした世帯割合は上記の通り54.5%だが、多分が現役世代で構成される二人以上世帯のうち勤労者世帯では65.5%にまで跳ね上がり、インターネットを利用した支出総額(非利用世帯含む)も2万8612円となるからだ。
一方で、インターネット通販の利用ハードルが下がり、サービスも拡充したことでより多くの人が少額でも使うようになり、それも平均値を押し下げる要因になっている可能性は否定できない。これを裏付けるのには、一か月の利用金額別利用者率や利用者絶対数の精査が必要になろう。
年末・年度末に利用額が上昇するのは利用者に限定しても明らかな形で数字となって表れている。しかしながら世帯全体の動向と比べると盛り上がり方はいくぶん穏やか。これは年末・年度末のみにネットショッピングをする世帯が少なからずいるのが原因。
本文でも言及しているが、2015年以降2020年ぐらいまでに限ると、インターネット通販を利用した世帯における平均支出額が横ばいに推移している感はある。もう少し状況を見極める必要があるが、ネット通販のサービス向上と領域拡大に伴い、単純な利用する・しないにおける利用者の増加とともに、利用者における利用額も増加を見せるはずだが、その動きが見られない。これは本文で言及の通り「二人以上世帯における(インターネット通販が苦手な)高齢層の割合が増加していること」「利用ハードルが下がったことによって、少額でも気軽に利用する人が増えた」がブレーキをかけている一因かもしれない。その分、2021年以降、再び上昇を始めたのは、さらにインターネット通販での利用が増えてきたからなのだろう。
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