2.9%ポイント前年同期から好転…大学生の2022年10月1日時点での就職内定率は74.1%に

2022/11/19 02:00

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厚生労働省は2022年11月18日、2022年度(令和4年度、2022年4月1日から2023年3月31日)における大学や短期大学、高等専門学校、専修学校の卒業予定者就職内定状況に関する最新調査結果を公開した。その発表資料によれば2022年10月1日時点の大学卒業予定者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は74.1%となり、昨年同時期と比べ2.9%ポイントの増加(好転)が見られたことが明らかになった(【令和5年3月大学等卒業予定者の就職内定状況を公表します】)。

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新型コロナウイルスの影響から回復に


公表された調査結果によると、2022年10月1日時点で大学生の卒業予定者による就職内定率は74.1%となり、前年同期の71.2%と比べて2.9%ポイントのプラスとなった。つまりそれだけ同じ時期における就職内定状況が好転したことになる。

↑ 大学など卒業予定者の就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)
↑ 大学など卒業予定者の就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)

今回発表された10月1日時点における就職率は労働市場や景況感を反映する形で、前年同時期と比べて持ち直しを見せている。もっとも上げ幅はまだ大人しく、値そのものも新型コロナウイルス流行前に付けた最高値の77.0%(2019年3月卒者)にはおよばない。

↑ 就職率(大学・全体)(各年10月1日時点)
↑ 就職率(大学・全体)(各年10月1日時点)

就職率が好転した原因についてリリースでは一切言及されていないが、ほぼ間違いなく新型コロナウイルスの流行による景況感の後退で落ち込んだ2021年10月時点と比較して、いくぶんながらも回復したことによるによるものだろう。さらに詳しくは、現状よりもむしろ今後の景況感に関し、楽観的な思いを抱いている企業が増えていることが予想される。今後の景況感の見通しが明るければ、現状が厳しくても雇用の積極化を図る企業は多くなる。逆もまたさらなり。労働市場は景況感の先行き指数とも呼ばれるゆえんである。

高等専門学校は専門技術に特化し、企業側もその技術を頼りに求人を行うため、内定を出しやすい、囲い込みやすいのが、高就職(内定)率の主要因。企業側の「即戦力優遇主義」が多分に反映され、他の学校種類と比べて高い就職(内定)率が出る。今回もその実情が反映された結果が出ている。

国公立と私立大学、男女別で確認


今回発表された就職(内定)率のうち大学(国公立・私立の合計、個別)にスポットライトを当て、男女別にその動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 国公立・私立大の男女別就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)
↑ 国公立・私立大の男女別就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)

今グラフで対象とした区分において前年同時期比では、国公立大は男性・女性ともにプラス、私立大も男女ともにプラス、大学全体は男女ともにプラスを示している。特に国公立大の上げ幅が大きいのが目にとまる。また大学全体では絶対値・前年同期比の上げ率ともに、男子よりも女子の方がよい値が出ている。現時点では女性の方が労働市場では恵まれているのかもしれない。

中期的な就職(内定)率推移から就職戦線の動きを推し量る


厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定)率において、過去のデータを逐次抽出し、(金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため)過去18年間における動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後は下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にあったことが容易に把握できる。それゆえに、2015年における解禁日の大幅後ろ倒しに伴い就活学生側に混乱が生じ、(その2年前の同時期の値64.3%と比べればまだ上だが、)内定率の改善状況が一時的に足踏み状態となってしまったのは残念でならない。

↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2022年10月1日まで)
↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2022年10月1日まで)

今回対象となった10月1日時点の結果は2012年3月卒以降、ほぼ順調に上昇しつつあった(2016年3月卒が落ち込んだのは上記の説明の通り)。しかし2019年3月卒でほぼ頭打ち的な状態となり、2021年3月卒では新型コロナウイルス流行の影響を受け、大きな落ち込みを見せてしまう。新型コロナウイルスの流行が大学生の就職活動にどこまで悪影響を与えているのか、よく分かる動きとなっている。今回の2023年3月卒では前年よりはいくぶん持ち直したが、まだ歩みは遅い。

大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感ではなく、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気がよくても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。

つまり学生諸子の就職率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それとともに安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更をスナック感覚で行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。

また昨今の動向はいわば疫病、天災によるもの。人の力ですべてを回復できるはずもない。最善を尽くすべきではあるが、無理強いをしたり、過度な責めは道理に反するとの認識を持つべきである。


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