基本は現金・クレカ…二人以上世帯の代金支払い方法の移り変わり

2023/02/18 03:00

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人が日常生活を過ごしていく中で、欠かせないのが金銭消費行動。要はお金を払って物品やサービスを調達する行為だが、その際の対価支払いには現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなど、多彩な手段を用いることができる。そして昨今では使い捨て型のプリペイドカード(マネーカードやギフトカードと呼ばれるもの)の普及にあわせ、「支払い」の概念もさらに多様化しつつある。今回は金融広報中央委員会の「知るぽると」が2023年2月3日に詳細統計表を発表した「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版となる2022年分などのデータを基に、「二人以上世帯における、お金の決済手段とその移り変わり」について、状況の確認と精査をしていくことにする(【家計の金融行動に関する世論調査】)。

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少額は現金、多額はクレジットカード


今回は支払いの決済方法のうち、二人以上世帯にスポットライトを当てることにする。単身世帯との間では大きな違いが生じるため、別個で見ていく方が混乱を招かずに済む(差異が生じる理由は後述)。

まずは直近2022年における、金額別主要決済手段。4つの選択肢のうち「主なもの2つ」を答えてもらっているので、事実上「普段は何を使っているのか」に等しい結果となっている。

↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答、金額別)(2022年)
↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答、金額別)(2022年)

二人以上世帯の場合、小口決済でも電子マネーなどが使われる状況は4割に満たない。大体が現金支払いで、金額が大きくなるに連れ、クレジットカードの率が高くなる。1000円を超えると現金以上の率にまで上昇する。

ここで、電子マネーの利用頻度の低さに首をかしげてしまいそうになる。スマートフォンの普及、対応店舗数の拡大に伴い、少額決済が便利な電子マネーはもっと普及しているはずではないか、と。

そこで質問用紙を確認すると、文言には「あなたのご家庭では、日常的支払い-」とある。つまり世帯構成員一人ひとりのプライベートでの支払いではなく「世帯全体の家計として」との認識で回答している可能性が高い。

クレジットカードを家族全体の買い物に使うことはあっても、基本的に個々の持ち物である(スマートフォンなどの携帯電話に組み込んでいる)電子マネーを「家庭全体向けの」買い物に使うことは多くない。電子マネーは「家計全体のお財布」ではなく、「世帯構成員一人ひとりのお小遣い・お財布」的な要素が強い(例えば本人に無断でおサイフケータイを使って、妹の漫画雑誌や家族全員の夕食の材料を買われたら、怒らないはずがない)。そのように考えれば、二人以上世帯で電子マネーの「日常的支払」比率がそれほど高くないのも納得できる(必然的に家庭(世帯)の支払い=個人の支払いとなる単身世帯では、電子マネーの利用頻度も高い結果が出ている)。

新型コロナなどで急激に増えるクレカや電子マネー利用率


二人以上世帯では現金とクレジットカードが主流で、電子マネーなどはさほど多くは使われない。これが基本となるが、時代の流れとともに少しずつ変化も見受けられる。

↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「現金」率、支払金額別)
↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「現金」率、支払金額別)

↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「クレジットカード」率、支払金額別)
↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「クレジットカード」率、支払金額別)

↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「電子マネー・デビットカード」率、支払金額別)
↑ 日常的な支払での主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「電子マネー・デビットカード」率、支払金額別)

グラフには直近分を含め過去12年間の値を反映させたが、12年の間で現金の値は各金額領域で漸減し、クレジットカードや電子マネーの利用が少しずつ増加していたのが分かる。電子マネーは2011年以降急増しており(調査結果の数字的にはグラフの領域外だが2010年から増加している)、「おサイフケータイ」普及が大きなトリガーとなったことは容易に想像できる。また、その時期においてもクレジットカードの少額決済での利用頻度は落ちておらず(むしろ増加中)、現金の率が1000円超の金額では減少していることから、「おサイフケータイなどの電子マネーが現金の代わりに(少しずつながらも)使われ始めた」と考えれば道理は通る。

また電子マネーの動向を詳しく見ると、5000円以下ではますます利用率が高まるのに対し、それを超えると利用率の上昇度合いは半ば足踏み状態だった。少額決済の便利ツールとしての認識が強まり、クレジットカードとの使い分けが進んでいるようだ。

他方2020年以降では現金の値が大幅に減り、クレジットカードと電子マネー・デビットカードが大きく増えている。イレギュラーにすら見えるこの動きは、消費税率引き上げによる景況感下落への対策として2019年10月1日から2020年6月30日まで実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業と、2020年春から確認された新型コロナウイルスの流行(で現金による接触型支払いが避けられたこと)によるものと思われる。たまたま偶然ではあるが、この2要素が同時に影響することで、ここまで大きな変化が生じたのだろう。

特に2021年におけるクレジットカードと電子マネー・デビットカードの増加ぶりは、目を見張るものがある。ただし2021年については、二人以上世帯で調査方法がこれまでの訪問・郵送の複合・選択式から、インターネットモニター調査法に変わったため、その変更が影響している可能性は否定できない。



余談ではあるが。「日常生活における買い物」ではなく、公共料金などの定期的な支払いでは、口座振替が主流となっている。ただしポイント制の恩恵(利用金額次第でポイントが加算され、ポイントが貯まると色々なサービスを受けられる仕組み)を受けるためと考えられるが、クレジットカードの利用が漸増している。2017年ではついに、クレジットカードの利用率が現金利用率を上回る形となり、その状況は2018年以降も続いている。それどころか2021年では、クレジットカードの利用率は口座振替の利用率すら上回ってしまった。

↑ 公共料金などの定期的な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答)
↑ 公共料金などの定期的な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答)

現金比率に大きな変化が無かったこと、口座振替の値が漸減していたことから、現金支払いをする対象はほぼそのまま、そして口座振替の手口が一部クレジットカード支払に切り替えられていたようだ。少しでも特典を得ようとする、賢い選択をしている動きなのだろう。そして2020年以降では上記にある通りキャッシュレス・ポイント還元事業と新型コロナウイルス流行で口座振替と現金が大きく減り、その分クレジットカードが有意に増えている。政策や社会環境の変化が決済手段をも変えてしまうという動きの具体的な値として、注目すべき結果に違いない。


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