単身世帯と二人以上世帯で大きく異なる老後の生活費の目当て
2023/02/18 03:00
若い時分と異なり就業そのものに難儀するのが高齢者。昨今では公的後押しも積極的に行われているものの、若者時代のような機敏な、あるいは重労働がおぼつかなくなることに違いはなく、また就職が継続できても手取りはかつての額よりも少なく、多分に蓄財の取り崩しや公的・私的年金で日々の生活を営むことになる。しかしその収入源の確保の仕方は人によりさまざま。中には利子配当所得や家賃収入だけで優雅な日々を過ごす人もいるだろう。今回は金融広報中央委員会の「知るぽると」が2023年2月3日に発表した「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版である2022年分の詳細統計値などのデータを基に、「老後の生活費の収入源として考えている手立て」に焦点を当てることにする(【家計の金融行動に関する世論調査】)。
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老後の支えは公的年金、就業収入、私的年金の順
一部自営業などを除けば60歳以降の定年退職で就業していた職場を離れ、セカンドライフ(第二の人生)を堪能するようになる。その際の生活費をどのような手段でまかなうかは人それぞれ。冒頭で触れたように年金や利子配当所得、所有している賃貸用不動産から得られる家賃収入だけで十分生活できる人もいれば、到底足りずに再び職に就く人、これまでの蓄財を取り崩していく人もいる。今件では老後の生活費をどのような収入源で賄うかについて尋ねているが、単身・二人以上世帯双方ともトップは「公的年金」となっている。
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答、世帯種類別)(2022年)
二人以上世帯の方が「公的年金」への依存度が高いが、これは多分に受給額が大きい厚生年金を対象としているからだと考えられる。また夫婦二人分ともなれば、単純計算で世帯あたりの受給額が大きくなり、電気代や家賃などの固定費の節約も合わせ、やりくりもしやすくなるのも道理である。
第2位には「就業収入」がついているが、こちらは単身世帯と二人以上世帯の差が3.6%ポイントにとどまっている。単身者は配偶者の就業収入に頼ることもできず、「公的年金」の不足分は自らの手で稼ぐしかないとの選択肢として考えれば納得はいく。一方第3位の「企業・個人年金、保険金」(私的年金)は老後を迎える前の備えを利用するものだが、やはり雇用事例や老後に至るまでの金銭的な余裕の比較で、二人以上世帯の方が単身世帯と大きな差をつけて高い値を示している。
「公的年金」がメインで、「就業収入」「企業・個人年金、保険金」が補完、余裕がある人は「金融資産の取り崩し」も併用など、老後における金関連事情がすけて見えてくる。なお生活保護などが該当する「国・自治体からの公的援助」は単身世帯で9.2%が想定している。二人以上世帯でも6.0%。
2013年と2016年には変化が起きた経年変化の状況
さてこれらの動向を直近10年の推移でみると、いくつかの動きが確認できる。なお「国・自治体からの公的援助」は2014年から加わった項目なので、2013年以前の値は無い。項目の序列はそれぞれの世帯種類別で、直近年において高い順となっている。
↑ 老後の生活費収入源(単身世帯、3つまでの複数回答)
↑ 老後の生活費収入源(二人以上世帯、3つまでの複数回答)
過去においても大まかなウエイトは直近の2022年と変わらないものの、
・単身世帯の2021年以降では「公的年金」が大きく増え、その分「就業収入」が減るという、特異な動きが見られる。
・二人以上世帯では「就業収入」がおおよそ増加の流れ。
→漠然とした収入の減少不安、それを補完するために自ら働こうという意志の高まり。
・二人以上世帯の2021年以降では「公的年金」が大きく減り、その分「利子配当所得」が増える、特異な動きが見られる。
が確認できる。単身世帯と二人以上世帯それぞれの、世間一般に語られる「リスク」の違いがそのまま表れている。また、2021年以降において世帯種類別に特異な動きが見られるのにも注目したい。単なる統計上のイレギュラーなのか、それとも老後の生活費収入源に関する考え方に大きな変化が生じつつあるのだろうか。
老後の生活を支える収入源としては、「公的年金」に依存や期待をしながらも、単身・二人以上世帯それぞれが各個の事情や思惑に従い、対策を練り実行していることがうかがえる。特に二人以上世帯で「就業収入」への傾注が継続して値が増える状況は、現時点でも大きな社会問題化している失業率・雇用市場との関係も深いことから、今後の動きを見据える必要がある。少なくとも現状では、高齢者の労働への参加意欲は、さらに高まりそうである。
また、2016年以降において単身世帯で「公的年金」が増加傾向にあるのは興味深い動きに違いない。「公的年金」に期待できるとの思惑を持つ、そうせざるを得ないとの判断をした人が増えたということだろうか。
さらに、2014年以降の設問ではあるが、単身世帯で「国・自治体からの公的援助」を選択する人が単身世帯で1割前後、二人以上世帯でも5%前後と高水準を維持している点も問題に違いない。
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