「自分の資産・貯蓄に満足」3割近く、高齢者ほどより満足に
2023/02/13 02:00
内閣府は2023年1月24日付で、「国民生活に関する世論調査」の結果を公表した。その内容によれば、現在の自分の資産や貯蓄に満足している人は全体の3割近くにとどまり、不満を覚えている人は7割強であることが分かった。男女別ではわずかだが女性の方が、年齢階層別では高齢者の方が、より満足度が高くなる傾向が見受けられる(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。
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調査要件などは先行記事【政府への要望、社会保障に物価対策(最新)】を参考のこと。
現在の生活において、資産や貯蓄の面で回答者自身がどれほど満足しているかを聞いたところ、全体では満足している3.8%・やや満足している25.5%となり、合わせて29.3%が「満足派」との結果となった。
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄、男女別)(2022年)
逆に明確な不満を持つ人は31.1%、やや不満が39.1%となり、合わせて70.2%が「不満足派」。「満足派」と比べて40.9%ポイントもの開きを見せている。男女別ではやや女性の方が「満足派」が多いものの、その差異は1.6%ポイント。ほぼ誤差の範囲。
属性別の明確な差異が見られるのは、むしろ年齢階層別。
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄、年齢階層別)(2022年)
年齢階層別では40代で明確な不満の値が最大となる。これは多分に世帯を抱え、子供の養育費や住宅ローンの重圧により、首が回らない状態にあるからだと思われる(今件は生活全般ではなく、あくまでも資産・貯蓄に限定した満足度であることに注意)。50代に入ってようやく子供の養育費や住宅ローンから解放され始め、60代に入ると退職金などでまとまったお金が手に入り、資産・貯蓄の面で満足している人が増えてくると考えれば道理は通る。
もっとも70歳以上になれば(大抵の場合は)消費する金額の方が多いので、現時点での資産・貯蓄の満足度は60代と比べて減ってもおかしくはない。ところがむしろ満足度が増えているのは、この年齢における退職金の額が現在の相場よりも大きかったことや、金銭に対する価値観の世代間での違いなどに起因しているものと思われる。また、自らが消費する金額が小さくなり、所有する資産・貯蓄との比較の点で、より大きく思える点もあろう。今件はあくまでも回答者の心境に基づくものであり、同じ金額でも個々の価値観によって判断・回答は異なることに注意しなければならない。
余談になるが、二つのグラフをよく見直すと、全体における「満足派」の結果は、多分に高齢者層のかさ上げであることが分かる。今調査結果は国勢調査などの結果を基にしたウェイトバックは行われていないが、調査対象数・回収率ともに高齢層ほど多めとなっている。調査対象数は層化2段無作為抽出法で決められた対象への調査のため、現在の人口比率に対するに近い値を示している。さらに回答率は若年層ほど低いため、余計に「国政などに積極的に意見を出して参加する、高齢者の意見が大いに反映される」といった現状を表す結果が出ている。
「資産・貯蓄への満足派は3割近く」を、現在の人口構成比率にマッチした「全体としての意見」と見るべきか。その上で年齢階層別の意見にも目を向けるべきか。考えさせられる結果ではある。意見を問われて黙っていたのでは、聞く側としても対応のしようが無いからだ。
ちなみに全体としての「満足度」の経年変化に関しては、大きな動きは無かった。「満足派」4割前後、「不満足派」5割強から6割程度のラインを行き来していた。要は資産・貯蓄の上での現在の生活の満足度合いに大きな変化は無かった。
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄、満足派・不満足派別)
ところが2021年で大きな変化が生じている。これは新型コロナウイルス感染症への対策のため、過去の調査と比べると調査方法や設問様式に違いがあるのが一因だが、同じスタイルの2022年でも継続して前年比で満足派の増加・不満足派の減少が生じていることから、単純なスタイル変更によるものだけが原因とは考えにくい。むしろ新型コロナウイルス感染症で生じた経済環境の変化が、資産・貯蓄の上での現在の生活の満足度にも大きな影響を与えたと見なしてよいのだろう。
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