2023年度第1四半期の紙巻たばこ販売本数はマイナス3.0%
2023/12/13 05:00
日本たばこ協会は2023年11月30日に同協会公式サイトにおいて、2023年度第2四半期(2023年7-9月、2023年度Q2)の紙巻たばこの販売実績を発表した。その発表データによれば2023年第2四半期の紙巻たばこの販売実績は230億本となり、前年同期比ではマイナス4.6%となった。販売代金はマイナス5.3%の6190億円を示している(【日本たばこ協会:公式ページ・トピックス一覧】)。
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↑ 紙巻たばこ販売実績(四半期単位)
↑ 紙巻たばこ販売実績(四半期単位、前年同期比)
↑ 主要たばこの販売本数と販売代金(種類別)(2023年度Q2)
たばこの税率引き上げに伴う大幅なたばこの販売価格の値上げは、2010年10月に開始されている。それに先立つ形で同年9月には安値で買えるうちにまとめ買いをする人たちによる「駆け込み特需(需要)」が発生した。そして同年10月以降は価格の上昇による喫煙者の減少(値上げに伴う喫煙者の禁煙者化)、喫煙継続者の利用本数の減少に加え、値上げ前の特需による大幅な需要のぶり返し(安値の時に購入したたばこを劣化する前に消費するために、新品は買いひかえられる)もあり、販売本数・代金ともに大きく減る状態がしばらく続いた。
さらに翌年2011年の3月には東日本大地震・震災が発生。それ以降はその影響、具体的には生産・輸送ラインの機能停止・稼働率低下、原材料の調達困難による生産数・種類調整で、販売本数は大きく減少している。他方販売金額は先の値上げ分が販売本数の減退をカバーする形でプラスを維持。時間の経過とともに、震災の直接被害と影響による損失からはほぼ回復を果たしたものの、2010年の値上げ、そして中期的な健康志向の高まりに伴う禁煙・減煙促進によって、販売本数は漸減状態を続けている。
2014年4月に実施された消費税率引上げに伴う実売価格のアップの際にも、直前の特需とその後の反動は多少ながらも生じていたが、その影響は前年同月比における反動も併せ、すでに過去のものとなっている。
そして【メビウスなどのたばこが4月1日から値上げへ】でも解説しているが、2016年4月からはメビウス35銘柄と旧3級品全6銘柄の値上げが成されたため(メビウスは430→440円。旧3級品はゴールデンバットがプラス50円、それ以外はプラス30円の値上げ)、それに向けて同年3月に発生した駆け込み需要の反動(買い置きしたたばこを先に消費するため、新たな購入機会が減少する)、さらには価格上昇に伴う消費性向の減退が生じた。
他方【たばこの「わかば」「エコー」など一部銘柄が4月から値上げ】でも伝えているように、たばこ税の軽減措置の縮小・廃止に伴い、「わかば」「エコー」など一部銘柄が2017年4月1日から値上げされており、この値上げによる販売の減退が多少ながらも生じた。2018年4月1日からも一部銘柄で値上げが行われているが、これに関してはほとんど影響が生じていない、というよりは市場全体の縮小傾向に隠れてしまった形となっている。
また【紙巻きたばこの販売が急減している理由】でも指摘しているが、2017年に入ってから、とりわけ2017年後半期以降、売上が大きく落ち込んでいるのは、今件で取り上げている紙巻たばこから、電子たばこや加熱式たばこへと需要が急速にシフトしているためとの指摘もある。
2018年度Q2は久々に前年同期比で販売代金がプラスを示したが、これは【JTのたばこ値上げ認可、10月1日から値上げ決定】にもある通り、2018年10月1日から主要銘柄が値上げされることに伴う駆け込み需要が発生した結果。当然その翌月の2019度Q2は反動が生じている。その後も漸次値上げが行われているが、そのたびに値上げ直前の駆け込み需要と、値上げ後の販売本数の減少・一時的な販売代金の増加(値上げによるもの)が生じている。
直近四半期においては販売本数はマイナス4.6%、販売代金はマイナス5.3%。本数は減少、売上はさらに減少している。単価の高いたばこが、より多く買われなくなったのだろうか。
なお2020年度Q1から紙巻たばこ以外にリトルシガー(たばこの葉を巻紙で巻いたたばこ。たばこ税法上は葉巻たばこに分類されるため、紙巻たばこと比べて安価で提供される)と加熱式たばこ(販売数量は1箱20本換算)の販売本数・販売代金も公開されるようになった。それによると直近四半期ではリトルシガーは8億本・199億円、加熱式たばこは144億本・3942億円となっている。リトルシガーはともかく、加熱式たばこは現状ですでに相当のシェアを確保している。
たばこは物価上昇や市場、その他各方面からの要請(例えば価格引き上げにより間接的なたばこ離れを誘うべきとの健康面での意見)に伴い、何度となく値上げされてきた。その値上げ後における販売数変移の傾向を、以前【値上げによる家計のたばこ支出金額推移への影響を過去二回分と合わせて検証】で検証している。
それによれば「(1)販売本数減の売上面でのマイナス影響を打ち消すほど、値上げ分の売上増の影響が大きく、総売上は増加する」「(2)販売本数の減少幅は拡大し、値上げ分ではカバーしきれなくなる。売上も前年比プラスからマイナスに」とのパターンが確認できる。2010年10月の値上げは上げ幅が非常に大きく、必然的に販売本数の減少分を補う単価上昇分も大きいため、売上プラスの状態が長期化していた。
↑ たばこ税(従量税、1本あたり、消費税含まず、円)(再録)
しかし2012年の6月以降は概して販売本数・販売代金ともに前年同月比でマイナスを維持。時折プラスに転じる場面があっても長続きせず、再びマイナスに戻る動きを示している。
2014年4月の消費税率改定に伴う値上げ以降は、販売本数は前年同月でマイナスを維持し、さらに販売金額もマイナスのまま。「(1)」の行程を経ること無く「(2)」の状況が継続しており、価格改定直前の特需をのぞけば実質的に「(2)」の状態が維持されていたと判断できる。さらに2016年4月の値上げも同様に「(1)」無しに「(2)」の状態へ移行していることが分かる。2020年10月の大幅値上げもしかり。ところが2021年10月の値上げでは直近四半期に至るまで「(1)」の状態が続いている。
【コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる】でも記している通り、コンビニでは売上全体に占めるたばこの比率は高い(2割強)。さらに来店時の「ついで買い」による相乗効果も期待できる。ところがたばこ販売実績の減退状態は継続しており、各コンビニとも代替品の模索と普及を急ピッチで続けている。
昨今では消費者の決済性向の変化に伴い、プリペイドカードを積極的に展開しており、こちらも「流れ」の一つになりつつある。フライヤー商品を中心とした(そして利益率の高い)各種作りたての惣菜を多数取り揃えることで、一人身世帯・主婦層、さらには調理の手間を省きたい高齢層のハートもつかみつつある。
高性能の情報端末の導入により、その端末経由で取引されるさまざまなチケットの売買も、生活拠点のコンビニとしての立ち位置を確かにし、金銭の流れを大きなものとしている。その上、従来では考えにくかった健康志向の食品も多数開発し、独自色を持たせた上でシリーズ化し、健康に強い関心を持つ層をも魅了しつつある。
昨今では公的機関や飲食店を中心に、喫煙に関する各種制限がさらに厳しくなる動きを示している。これに伴いたばこの販売実績もまた、減退傾向に拍車がかかることだろう。
今後も価格動向とともに、販売本数・販売代金の動きについて注意深く見守りたい。
※日本たばこ協会における月次の販売本数・販売代金の公開は2020年3月分で終了しました。現状では四半期単位の公開のみとなります。今記事も過去分は四半期単位に換算した形での更新となります。
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