政府への要望、社会保障に物価対策
2023/02/12 03:00
内閣府は2023年1月24日、定点観測的に調査を行っている「国民生活に関する世論調査」の最新版となる2022年版の結果を発表した。それによると、日本国民が今後政府に力を入れてほしい政策の最上位には「医療・年金などの社会保障の整備」がついた。64.5%の人が同意を示している。前回2020年時点における調査の結果から順位は変わらず、高齢化社会への対応の重視を要望する声が全体として大きい状況が把握できる。それに続く高回答値の項目は「物価対策」だった(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。
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今調査は2022年10月13日から11月20日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段階無作為抽出法で3000人を選んだ上で、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1888人。回答者の男女比は45.7対54.3、年齢階層別構成比は18-19歳が2.1%・20代7.6%・30代11.3%・40代15.1%・50代16.4%・60代17.8%・70歳以上29.7%。
調査時点において、今後日本国政府はどのようなことに力を入れるべきか、複数回答形式で尋ねたところ、最上位の回答値を示したのは「医療・年金などの社会保障の整備」だった。全体では64.5%の人が望んでいる。
↑ 政府に対する要望(上位抜粋)
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、前回調査比、ppt)(2022年)
最上位の「医療・年金などの社会保障の整備」は前回調査と比べると2.9%ポイントのマイナスだが第2位の「物価対策」は31.5%ポイントのプラス。ロシアのウクライナへの侵略戦争の影響で生じた大きな物価上昇への対策を、多くの人が求めていることがうかがえる。「景気対策」の7.1%ポイントのプラス、「防衛・安全保障」のプラス6.5%もまた、ロシアのウクライナへの侵略戦争の影響によるところが大きいとみてよいだろう。他方、「新型コロナウイルス感染症への対応」は35.8%ポイントのマイナスと大きなマイナス値を示しているが、他の選択肢と比べて優先順位が落ちたなどの理由によって、前回年の2021年時点と比べれば要望の声が小さくなっていると解釈できる。
これを男女別に見たのが次のグラフ。
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、男女別)(2022年)
男性の方が高い値なのは「防衛・安全保障」「少子化対策」「税制改革」「外交・国際協力」「資源・エネルギー対策」。「防衛・安全保障」などはともかく、「少子化対策」でも男性の方が上の値が出ているのは、いくぶんの意外感を覚えさせる。
女性が男性比で大きく伸びているのは「医療・年金などの社会保障の整備」「高齢社会対策」「雇用・労働問題への対応」「新型コロナウイルス感染症への対応」「自然環境保護・地球環境保全・公害対策」。どちらかといえば男性よりもより日常生活に身近な話題についての要望であり、見方を変えれば現状への不満を抱いているのが分かる。
これを年齢階層別に見ると、各項目の年齢別関心事項が透けて見える。
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、年齢階層別)(2022年)
「景気対策」「雇用・労働問題への対応」は若年層から中年層までに高い関心が寄せられているが、高齢層では急速に値が低下する。一方で「医療・年金などの社会保障の整備」「高齢社会対策」「新型コロナウイルス感染症への対応」「自然環境保護・地球環境保全・公害対策」などは高齢層の方が高い値となる。以前【失業対策が第一、少子化対策が次点…現在不十分で今後力を入れるべき社会福祉とは】でも触れたが、回答者自身にとって何が一番望まれるのかを第一に考えてしまい、それがそのまま値に反映されているのが分かる(「我が身恋しや」である)。全体的に要望への関心が低い高齢層でも、「高齢社会対策」以外に「物価対策」において他年齢階層とさほど変わらない値を見せているのが好例といえる。
また、「少子化対策」など、一見若年層が無関心な姿勢を見せているように伝えられている問題も、概して若い年齢階層ほど要望への値が高い。「若者は政治や社会に無関心だ」との印象は実情とは異なることを把握できる次第である。無論「雇用・労働問題への対応」は若年層ほど高い値を示し、30代では「高齢社会対策」よりも上の値となっている。切実な問題であることをうかがわせる。
なお今件はそれぞれ独立した項目で「要望のある・無し」を尋ねているが、本来政策は多数項目が連動して行われる(べき)もの。どれか一つの政策のみに焦点を絞って注力しても、他の項目が足を引っ張られることになり(リソースは有限)、結局マイナスの影響を受けた項目が注力した部分にも悪影響を及ぼし、全体的な環境も悪化してしまう。それぞれの項目の連鎖性・波及効果を思慮深く考慮した上で、政策方針が決定され、具体的施策が打たれるべきであることは言うまでもない。
余談ではあるが、「国民生活に関する世論調査」は2016年調査分から調査対象をこれまでの20歳以上から18歳以上とし、対象年齢を引き下げている。リリースでは特に説明はないが、公職選挙法の改正に伴い、2016年の参議院議員選挙以降、選挙権がこれまでの20歳以上から18歳以上に引き下げられたものに連動しての変更と考えられる。この点からも「国民生活に関する世論調査」をはじめとした内閣府の調査が、多分に選挙などで具体的に声を挙げる、意思表示をする人を意識していることがうかがい知れよう(時折未成年者を対象とした調査も行われるが)。
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