自転車交通「死亡」事故の相手の推移
2023/03/15 02:00
自転車運転中に発生する交通事故で不幸にも本人が死亡してしまった場合、大多数は自動車が相手方との統計結果が出ている。バイクや歩行者が相手、あるいは自転車同士による衝突で自転車側が死亡に至る事例は、対自動車と比較すればそれほど多くはない。実際に自転車、あるいは自動車を運転していても、自転車が自動車と接触、衝突しそうになる状況を体験した人は多いはずだ。それでは具体的にどの程度の割合で自動車との事故による死亡事例が発生し、死者数はどの程度なのだろうか。2023年3月2日付で警察庁が公開した、日本国内における2022年中の交通事故の状況をまとめた報告書「令和4年における交通事故の発生状況などについて」の掲載データから、自転車による死亡事故の、相手方の動向を確認していくことにする(【警察庁リリース発表ページ】)。
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まずはグラフなどで用いる用語の解説をしておく。「自転車(第1・2当事者)の相手当事者別」だが、これらの意味は次の通り。
・第2当事者…最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人
例えば自転車の故障によるトラブルで転んだり、不注意で電信柱にぶつかった場合は自転車の運転手がそのまま第1当事者となり、第2当事者は存在しない。一方、正しい場所を走行していた自転車に自動車が不注意で接触して事故が発生した場合、自動車側が第1当事者となり、自転車は第2当事者となる。
その自転車による交通死亡事故の件数を相手別に区分した上で積み上げグラフ式にしたのが次の図。自動車相手の事故数が多いため、それを除いたグラフも併記した。
↑ 自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通死亡事故件数(件)
↑ 自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通死亡事故件数(件、自動車除く)
自転車事故・死亡事故の件数はおおよそ年々減少を続けている。そして自転車による死亡事故において、相手の大半が自動車であることには違いはない。
これを分かりやすいように比率換算したのが次のグラフだが、対自動車の値が大きすぎて、他の項目が相対的に小さくなり、見えにくい状態のグラフとなってしまった。そこで縦軸をずらし、最小値を底上げした形で再構築したものも併記しておく。
↑ 自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通死亡事故件数(全体比)
↑ 自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通死亡事故件数(全体比、縦軸調整)
対自動車比率がわずかずつだが減っており、自転車死亡事故件数よりも速いスピードで、自転車の対自動車死亡事故件数が減少していることが分かる(同じ比率で「数」が減るのなら、シェアもそう大きくは変わらない)。他の項目はほぼ横ばいの中で、自転車単独事故が(比率の上で)大きく増加しているのが確認できる。自転車単独事故は最古データの1997年・3.4%と比較すれば、2022年・27.8%は8倍強となる。
この自転車単独事故とは具体的には工作物との衝突、転倒事故を意味する。この件数は50件/年前後で推移していたが、2013年は一挙に87件にまで増加、2014年にはやや減少して78件となったが、2015年では113件となり、初の3ケタ突破。直近の2022年では前年比でプラスの12件。
↑ 自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通死亡事故件数(自転車単独、件)
自動車や他人との接触ならともかく、自転車単独事故は自責によるところが大きい。自転車に乗る際には無理をせず、注意を十分に払って運転するべきである。自転車も道交法の適用範囲となる車両に違いない。特に判断力に劣りがちな高齢者には「大重量で高速移動する自動車ではなく、人力で動く軽量の自転車だから」「免許のいらないものだから」と油断することなく、安全第一を心掛けてほしい。
なお自転車乗用中による交通事故死者数そのもの、そして該当属性の人口10万人あたりの交通事故死者数を確認すると、ハンドル操作や安全不確認のような安全運転義務違反、交差点安全進行や一時不停止、信号無視などの点で、高齢者(65歳以上)の死者数が、高齢者以外と比べて大きいことが確認できる。単純な人数だけでなく、人口10万人あたりでも差が出ているため、高齢者による自転車乗用の死亡事故リスクが高いことがあらためて認識できる。
↑ 自転車乗用中(第1・第2当事者)の法令違反別人口10万人あたり交通事故死者数(人)(2022年)
↑ 自転車乗用中(第1・第2当事者)の法令違反別交通事故死者数(人)(2022年)
↑ 自転車乗用中(第1・第2当事者)の法令違反別交通事故死者数(前年比、人)(2022年)
今後高齢者の自転車乗用中による死亡事故件数・全体比率が増加することは容易に想像できる環境である以上、安全な自転車運転に関しても、これまでにも増して積極的な手立てを講じることが求められよう。
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