主要先進国や主要新興国の携帯電話の利用可能領域カバー率の実情
2020/12/05 05:00
国連の専門機関で無線通信や電気通信分野において、各国間の標準化と規制の確立を目的として設立運用されている国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では、同公式サイト内の【データ項目ページ(Statistics)】にて、毎年加盟国の携帯電話やインターネットの普及率など、各種電気通信関連の統計データを更新・公開している。今回はその中から、「携帯電話が利用できる領域としてカバーされている領域」について人口比の観点から先進国や新興国の主要国の実情を確認する。
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先進国の実情
次以降に示すのは携帯電話のサービス網がどの程度普及しているのか、利用可能な領域のカバー率を人口比で示したもの。例えばこの値が90.0%なら、その国・地域に住む人のうち90.0%が携帯電話のサービスを受けられる場所に住んでいることになる。その人が実際に携帯電話を利用しているか否かは勘案されていない。また、単純な携帯電話の利用可能領域カバー率のため、スマートフォンだけでなく従来型携帯電話も含んだものであり、さらにインターネットが利用できるか否かも問われていない。
まずは先進国の実情。「先進(諸)国」との言葉には色々な定義、見方があり、その定義に関して意見の対立も見られる。そこで今回は明確な基準として「G7対象国」を用い、その各国を対象とする。ロシアを加えてG8でもよいが、ロシアの携帯電話普及率推移は、むしろ新興国のそれに近い。よって同国動向は新興国で取り扱う。
↑ 携帯電話利用領域カバー率(G7対象国、対人口比)(2015-2019年)
国土構成の事情もあり100.0%の値はなかなか得難いが、取り上げたすべての国では99.0%以上を達成している。また現状の値がほぼ上限のようで、この5年の限りでは大きな変化は見られない。カナダが0.1%ポイントのレベルで漸増している動きがある程度だろうか。
続いてこれを前世紀末の2000年以降の推移で見たもの。
↑ 携帯電話利用領域カバー率(G7対象国、対人口比)
カナダが2000年時点で90.0%だったのが少しずつカバー率を増やし、2009年にようやく99.0%にまで達したのを除けば、他の国では2000年時点ですでに99.0%の値に届いている。実質的にほぼ自国内の全域をカバーしていると見てよいだろう。インターネットやスマートフォンの利用可能な領域となるとまた別の話だが、少なくとも携帯電話の利用の点では、先進国は前世紀末でほとんどの地域が利用できたことになる。
新興国の実情
続いて新興国。「新興国」との言葉には色々な定義、区分があり、さらに国数も多い。すべてを追いかけていては雑多に過ぎるので、今回はG20各国のうち目に留まった国、具体的にはアジア諸国からは「シンガポール・マレーシア・韓国・インドネシア・中国・インド」、それ以外の国から「サウジアラビア・ロシア・ブラジル・トルコ・メキシコ」を対象とする。なおデータがない年の部分は空白となっている。
↑ 携帯電話利用領域カバー率(新興国などその1、対人口比)(2015-2019年)
↑ 携帯電話利用領域カバー率(新興国などその2、対人口比)(2015-2019年)
先進国ほどではないものの、いずれも高い値を示している。特にシンガポールは直近5年ではすべて100.0%。インドネシアやロシアでは80%台後半を示していたが、直近年の2019年までには99.0%内外にまで達している。インドやマレーシア、ブラジル、メキシコはやや低めだが、それでも95.0%(20人のうち19人)には届いている。
続いて2000年以降の動向を示したのが次のグラフ。
↑ 携帯電話利用領域カバー率(新興国などその1、対人口比)
↑ 携帯電話利用領域カバー率(新興国などその2、対人口比)
今世紀初頭では半数程度、さらには半数足らずの国もいくつかあったものの、2010年ぐらいまでには9割を超える値を示している。韓国で一時的に値が落ちたのは原因不明。
中国やトルコでは2000年時点で50.0%ぐらいでしかなかったものが(中国は50.0%、トルコは50.2%)、急速に環境が整備され、2005年までには95.0%を超えるまでになっている。インドにいたっては2000年時点で21.1%だったのが2009年には83.0%、2015年には95.0%と、カバー率が大きく伸びているのが分かる。
先進国と比べれば数%ポイント足りない国もあるが、今回挙げた国に限れば、新興国でもおおよそ携帯電話のサービスをすべての国民が享受できる状態となっていると見てよいだろう。
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