20代の結婚と出産、これだけ年収があれば「いいかな」と思える水準は?
2023/02/07 03:00
結婚しない、あるいは結婚しても子供をもうけない若年層が増えているとの指摘がある。価値観の変化や他人との接触機会の減少、子育てをする環境の整備不足など想定される理由は多々あるが、大きな理由の一つとして挙げられるのが現状、そして将来の見通しまで含めての可処分所得の減少。要は金銭的な負担が大きいため、結婚、さらには出産・子育てをしない、できないといった説明である。それでは若年層は年収でどれほどの額面が確保できれば、結婚や出産を考えるようになるだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2023年1月19日に発表した調査結果から、その心境を確認していく(【発表リリース:20代の金銭感覚についての意識調査2023】)。
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「年収800万円あれば結婚検討」が約7割
今調査は2022年11月25日から28日にかけて、携帯電話を用いたインターネット経由で20代男女に対して行われたもので、有効回答数は1000件。男女・20代前半と後半の区切りで均等割り当て。未婚者780人、既婚者220人。調査協力機関はネットエイジア。今件における「年収」の定義は先行記事【自家用車と自宅、「これなら買ってもいいな」と若年層が思う年収は!?】を参照のこと。
冒頭で解説の通り、結婚や出産を敬遠する若年層が増えた理由は多々あるが、その一つが金銭的な問題。結婚や出産をすることで確実に金銭面での負担が増えるため、生活が立ち行かなくなるのを懸念し、諦める、積極的行動をしないというものである。それでは世帯年収(収入総額。税金や社会保険料込みの値)でいくらぐらいあれば、結婚や出産・子育てを考えるだろうか。
次に示すのは択一で答えてもらった「世帯年収がこれぐらいなら結婚を考えてもよい」とする額。棒グラフはそれぞれの回答値、折れ線グラフは累積回答値。後者はその額面なら結局どれだけの人が考えるかというもので、例えば「300万円」と答えた人そのものは7.5%しかいないが、「世帯年収300万円を提示されれば結婚をしようと考える人」の総計は「300万円」回答者以外に「200万円」「年収問わず」も含まれるため、累計の23.2%となる。
↑ しようと思える世帯年収は(結婚、円)(2022年)
具体的金額区分別回答値では500万円がもっとも多く、それに600万円、400万円、300万円が続く。この「300万円から600万円」の層で45.3%。
一方累積回答値を見ると、800万円で73.2%と7割を超えた値となっている。相手の存在を含め、結婚ができるか否かは他の条件も多分に絡んでくるのだが、世帯年収だけで勘案すれば、800万円が確保できれば7割以上の人が結婚を検討するとのこと。他方、世帯年収がいくら上がっても結婚したいとは思わない人も1割強確認できる。
同様の調査は過去においても実施していることから、累積検討値を直近5年分に限り併記したのが次のグラフ。
↑ しようと思える世帯年収は(結婚、累積、円)
「年収問わず」もあわせ結婚をしたいとの意欲は全体的に減少傾向だった。2019年では大きな減少を見せた。
そして2020年では明らかな形での急降下状態に。先行記事にある住宅や自家用車同様に、新型コロナウイルスの流行とそれに伴う景況感の後退が大きく影響したものと考えられる。2021年では前年の2020年から大きく持ち直しを見せている。先の自家用車に関する話同様、新型コロナウイルスの流行における景況感の後退が、ある程度落ち着いてきたとの認識があり、それが影響しているものと思われる。ところが直近の2022年では前年の2021年から多少落ち込み、再び減少傾向に戻ってしまった。要注意な動きといえる。
子育てはどうだろうか
結婚に続いて出産・子育て。結婚以上に金銭的な負担も大きくなり、しかも出産前後に女性は就業できなくなることに加え、子供が成長するに連れて養育費など出費もかさ上げされるため、世帯年収に関しても慎重な値が示されるようになる。当然、子供の数が多い方が、世帯年収のハードルは上がる。今件では子育て1人に限定した設問となっている。
↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て1人、円)(2022年)
結婚における累積回答値7割超えは年収800万円だった。同じ割合を出産・子育てで得ようとすると、年収は1000万円以上となる。900万円でも70%には届かない。年収の観点では結婚よりも出産・子育ての方がハードルは高いという認識なのだろう。
出産・子育てに対する年収における検討額も、過去の調査結果からの変化を確認できる(直近5年分について確認)。
↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て1人、累積、円)
結婚同様に、ここ数年は減少する傾向が見受けられたが、2020年では新型コロナウイルスの流行とそれに伴う景況感の後退から大きな減少が確認できる。金銭面で慎重にならざるを得ない状況だと判断しているのだろう。そして2021年では結婚同様に前年の2020年から大きな持ち直し。新型コロナウイルスの流行における景況感の後退が、ある程度落ち着いてきたとの認識があり、それが影響しているのだろう。ところが直近2022年では、やはり結婚同様に前年の2021年からは落ち込んでしまう。減少の動きに戻ってしまったのだろうか。
余談となるが、直近年における結婚、子育て1人それぞれの累積回答率をまとめたのが次のグラフ。
↑ 世帯年収と結婚、出産・子育ての動機づけの関係(累積、円)(2022年)
結婚と出産・子育て1人との間には世帯年収100万円分ほどの差異が生じている。もっとも1000万円以上となると差異はあまり無くなるのが実情である。
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