携帯電話は世界全体で10割超え…世界全体の固定・携帯電話普及率
2023/04/16 02:00
国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では同連合の公式サイト内にある【データ項目ページ(Statistics)】において、毎年加盟国の携帯電話やインターネットの普及率をはじめとした、各種電気通信関連の統計データを更新・公開し、検証材料を提供している。今回は各国ではなく、世界全体、あるいは国の属性別における、固定電話と携帯電話の普及動向を見ていくことにする。属性で国を区分した場合、電話の利用状況にはどのような違いが見られるのだろうか。
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まずは今件データに関して、事前の設定の解説を行う。「携帯電話普及率」は契約件数をカウントし、それを人口で除算したもの。先に【インターネットと携帯電話の普及率を世界の他国と比べてみる】でイタリアにおけるSIMカードと携帯電話本体との関係を例示しているが、一人で複数の契約をしている場合も多数あるため、100%を超える可能性は十分にある。
固定電話も同じ計算方法。ただし世帯ではなく人口で除算していることや、利用形態を想像するに、1世帯で複数の固定電話契約が行われる状況は稀であることから(ましてや一人で複数の固定電話契約をする意味は無い)、概して携帯電話の値より低くなる。
次に国の属性別区分。今件公開データにおいて、かつては「先進国」「新興国」で行われていたのだが、2021年分からこの区分は無くなり、代わりに世帯年収や開発状況に応じた区分が行われるようになっている。そこで今回は高世帯年収国(High-income。世界銀行定義で年収1万3205米ドルの国81か国)と後発開発途上国(Least Developed Countries(LDCs)。国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々。一人あたりのGNI3年間平均が1018米ドル以下で、HAI(Human Assets Index。栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したもの)やEVI(Economic Vulnerability Index。外的ショックからの経済的脆弱性を表す指標)が一定数以下の国)の状況を確認する。
さて、固定電話・携帯電話それぞれにおける普及率推移は次の通り。収録されているデータは2005年以降のものであることから、グラフもそれに従っている。なおデータ取得時において、今件項目の値は2022年までが確認できたので(高世帯年収国は2015年以降のみ)、グラフにもそれを反映している。
↑ 固定電話普及率(契約数/人口)
↑ 携帯電話普及率(契約数/人口)
固定電話の普及率が漸減の動きを示すのは、高世帯年収国・後発開発途上国を問わず、世界全体での流れ。そして社会全体としても個々の契約としても費用がかかるため、普及率は高世帯年収国の方が後発開発途上国よりも高いことが分かる。
一方携帯電話は言葉通り「右肩上がり」の状態にある。高世帯年収国は飽和状態に手が届き始めた感もあり、上昇率は緩やかなものとなっているが、後発開発途上国は年5%ポイント以上の伸びを示す年もあったほど。2016年からは少々伸び率が低下しているが、それでも先進国と比べれば勢いはある。
そして2つのグラフを並べ見ると、【各国の固定電話と携帯電話の普及率推移(新興国編)】でも解説している通り、電話インフラの観点では、後発開発途上国は従来の(先進国の)電話インフラの普及プロセス「電話そのものが無い」「固定電話が普及」「携帯電話が普及し、固定電話からシフトしていく」ではなく、「固定電話が普及」の手順を飛び越し、最初から「携帯電話が普及」に歩みを進めているのが分かる。インフラや機材の進歩が急なため、ステップをショートカットできる次第である。
後発開発途上国においても2018年で携帯電話の普及率が7割に届いた。複数のSIMカード保有の事例があるから、そのまま利用者数が増加しているとの考えはやや勇み足ともいえるし、インターネットに接続できるスマートフォン・マルチメディアフォンはそのうち何割かに過ぎない。とはいえ、ここまで多くの人が距離の離れた場所にいる人に情報をほぼリアルタイムで伝えられる、しかも高い機動力を有する手段を持つ時代は、有史以来初めてのこととなる。
携帯電話の普及とともに、人と携帯電話、そして情報との関係はどれほど変化していくのだろうか。言葉通り人は新たな時代を携帯電話とともに迎えることになるのだろう。
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