開発途上国への支援姿勢、「現状維持」が約半数、「積極化」が増加傾向
2023/02/25 02:00
内閣府は2023年1月24日、外交に関する世論調査を発表した。それによると調査時点において、今後開発途上国に対する資金・技術協力などの開発協力については「現在程度でよい」とする意見がもっとも多く、半数を超えていることが分かった。「(これまで以上に)積極化を求める」が3割近く、「(現状よりは)なるべく少なく」が1割強との結果が出ている。今世紀に入ってからは積極派が漸増し、消極派が減少する動きが確認できる(【発表リリース:外交に関する世論調査】)。
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今調査の調査要項は先行記事【日本のアメリカ合衆国への親近感87.2%、対中親近感はやや悪化(最新)】を参照のこと。
日本も含めた先進諸国などは開発途上国(新興国)に対し、資金協力(借款、無償援助)や技術協力などの開発協力を行っている。多様な影響などを考慮した上で、日本では今後これらの開発協力に関してどのような方針で臨むべきかを4択、具体的には「(現状以上に)積極的に進めるべきだ」「現在程度でよい」「(協力は進めるべきだが規模は現状より)なるべく少なくすべきだ」「やめるべきだ」から1つ、回答者の考えにもっとも近いものを選んでもらったところ、直近年において最多回答率を得たのは「現在程度でよい」だった。54.3%と半数以上の人がこの選択肢に同意を示している。
なお2020年以降の調査では新型コロナウイルス流行の影響を受けて郵送調査で実施されており(原則は調査員による個別面接聴取法)、「その他」「分からない」の項目が値として存在せず、その設問について何も回答しなかった「無回答」が代わりに表示される結果となっている。
↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方
あくまでも今件設問上の開発協力の対象は「開発途上国」であり、自前で宇宙にロケットを打ち上げる技術・経済力を持ち、さらに他国へ積極的な資金援助や軍事力の示威行使を行う国は対象外と見なすとの判断をするのが当然で、その上で対象国の情勢を分析し、結局は国毎にケースバイケースで決める必要がある。それを前提とし、全般的な戦略としては、「現在程度でよい」を最良とする考えが支配的なようだ。この考えは多少の上下を繰り返しながらも、中長期的に増えつつある。また2020年以降に大きく増加したのは、調査方法の臨時的な変更によるところが大きいものと考えられる。
一方、「積極的にすべき」「なるべく少なくすべき」と相反する意見は、直近ではそれぞれ29.7%・12.2%。歴史的な経緯をたどると、いわゆるバブル崩壊あたりから「積極派」が漸減し、「消極派」はそれ以前から漸増していた。その結果、今世紀に入り互いの立ち位置が一時逆になったのは興味深い。
しかしそれも2003年から2004年を転機に、再び「積極派」の増加、「消極派」の減少の動きを見せ、現在に至っている。各国、特に近隣諸国における積極的な対外支援が伝えられるようになり、【開発途上国への開発協力の必要性、最多意見は「災害や感染症など世界的な課題に対して各国が協力して助け合う必要がある」(最新)】でも伝えているが、海外市場で日本企業の入札が失敗する事例が報じられ、国際的な日本の立ち位置が低下する気配を見せ始めたのが遠因だろう。
なお属性別に回答動向を見ると、直近分では男性、若年層で積極的協力を求める声が大きい一方で、消極姿勢を求める声は中年層で高い動きを示している。また中止を求める声も若年層で高い値が出ているが、こちらは統計上のぶれの範囲と解釈すべきか。
↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方(属性別)(2022年)
中年層で消極姿勢が見られるのは、日本国内の限られたリソースをどこに配すべきかとの観点で、将来を見据えた投資をすべきか、自分の手元に配分するかとの判断の違いが表れた結果、つまり「海外への経済協力より、まずは自分自身に」だと考えれば、道理が通る傾向ではある。
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