月ぎめで新聞を取らない理由は何だろう

2022/12/31 03:00

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情報取得が可能なメディアの多様化による相対的な優先順位の低下、配信する情報の信頼性における問題、購入機会の減少など複数の環境的および内部的要因により、紙媒体の新聞は少しずつその購読率・閲読率を低下させつつある。それでは具体的に、新聞を月ぎめで購読していない人はいかなる理由によるものだろうか。財団法人新聞通信調査会が2022年11月13日に発表したメディアに関する全国世論調査から、新聞を月ぎめで取っていない人における、その理由について確認していく(【発表リリース:第15回メディアに関する世論調査結果】)。

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今調査の調査要綱は先行記事【じわりと下がるメディアへの信頼度、トップはNHKテレビ(最新)】を参照のこと。また今調査対象母集団において頻度は問わず、朝刊・夕刊まで含めた新聞を月ぎめで取っている人は58.3%となる。無回答者を除くと41.3%が月ぎめで新聞を取っていない(新聞を読んでいない、ではないので、例えば駅の売店で時々購読したり、図書館などで読んでいる場合はある)。

その人に、なぜ新聞を月ぎめで取らないかに関して尋ねたところ、直近の2022年度では「テレビやインターネットなど他の情報(源)で十分」とする意見がもっとも多く、77.7%に達することとなった。

↑ 月ぎめで新聞を取らない理由(取らない人限定、複数回答)(2022年度)
↑ 月ぎめで新聞を取らない理由(取らない人限定、複数回答)(2022年度)

次いで多いのは「購読料が高い」で37.4%。単純に値段だけを見て高いと判断したのか、購読料と得られる情報などの便益を比較して高いとの結論に至ったのかは今件では分からない。

さらに「読む習慣が無い」「読む時間が無い」「処分が面倒」など、購読料がいくら下げられても月ぎめで新聞を取ることはないだろうとする層の回答が並ぶ。中でも「処分が面倒」は避けようのない頭の痛い話ではあるが、電子版ならばこの問題はクリアされるはずなのだが。

他方、新聞そのものの忌避傾向に関して、月ぎめで新聞を取らない人も図書館などで読むだろう、あるいは駅や売店などで買うのではとの指摘もあるが、それぞれの回答値は7.9%・2.7%。月ぎめの購読者以外にも新聞の閲読者はたくさんいるはず、との仮説を肯定するのは難しい。

もっとも、例えば「テレビやインターネットなど他の情報で十分」なので「購読料が高い」と判断する、「テレビやインターネットなど他の情報で十分」だから多忙な時間を割くほど「読む時間が無い」など、複数の項目が重なって月ぎめで新聞を取っていない可能性は多分にある。選択肢で連動性がある設問は、複数回答形式の結果でも、推測以上の精度を持つ実情を見い出すことは難しい。

回答項目のうち上位回答値を示したものについて、直近年度分に関して属性別で区分した結果が次のグラフ。

↑ 月ぎめで新聞を取らない理由(取らない人限定、複数回答、属性別)(2022年度)
↑ 月ぎめで新聞を取らない理由(取らない人限定、複数回答、属性別)(2022年度)

18-19歳や20代は自分で新聞を買う機会があまり無く、世帯単位で定期購読している、保護者が持ち帰った新聞を読む機会が多いからか「購読料が高い」の回答値が低め。また、自分で処分することもあまりないため「処分が面倒」も低い。しかし30代以降は自分が世帯主になる場合も多々あることから、「購読料が高い」「処分が面倒」を理由に挙げる人が多くなる。

さらに就業で忙しくなるため20代以降は「読む時間が無い」の値も上昇する。他方「読む習慣が無い」は18-19歳でもっとも高くなりそれ以降は年齢とともに減少していくが、これが年齢階層別によるものか、それとも世代によるものか、現状だけでは確認ができないのは気になるところ。

現時点では月ぎめで新聞を取らない人のうち、「テレビやインターネットなど他の情報で十分」と考えている人が全属性で3/4強を占めている。30代や50-60代に限れば8割を超えている。今後さらにインターネットを利用する人が増えるに連れて、テレビやインターネットの情報で十分だから、月ぎめで新聞を取らない人が増えていくのは容易に想像できる。

もっともインターネット経由の情報は多分に新聞社自身も配信している。内容的に「紙の上に刷られたもの」か「インターネット経由で伝えられているもの」かの違いのみとの考え方もある。是が非でも紙媒体としての新聞を月ぎめで取ってほしい、売り続けたいのなら話は別だが、情報そのものの対価を新聞社が求めたいのであれば、テレビやインターネット経由で「紙媒体としての新聞」ならぬ「新聞に掲載されている情報をインターネット経由で」売る施策、一番の具体例かつ現時点ですでに複数社が実施している有料の電子版の展開を、これまで以上に積極化する必要があるのかもしれない。

もちろんインターネットを用いて情報を取得する人たちは、無料で情報の提供を受けるスタイルに慣れている。月ぎめによる新聞の購読者以上に、情報に求める対価の物差しは厳しい。紙媒体の新聞と同じような路線、発想、方針、品質で同等の対価をインターネット経由の読者に求めていたのでは、多くの人が見向きもしない。

実際、多くの新聞社において、有料電子版の読者増加分では、紙媒体版の減少分を補えていない。より厳しい品質チェックと自らを律する心構え、さらには価値を見い出してもらえるような仕組み、工夫、そして何よりも努力が求められよう。


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