経産牛1頭あたり搾乳量は年間約8.9トン…乳用牛の飼養戸数など

2022/11/20 02:00

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先に【日本国内の生乳生産量の推移(最新)】で日本国内における生乳(しぼったままの人の手を加えていない牛の乳)の生産量に関する状況確認を行ったが、当然気になるのは生産業者、つまり畜産農家の動向。今回はその記事で用いたデータ取得元となる農林水産省の公開ページなどから必要な値を抽出し、乳用牛の飼養戸数などを確認していくことにする。

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データ取得元は先の記事同様、農林水産省の【牛乳乳製品統計調査】。やや下の方にある「確報(統計表一覧)」の最新版を選択して収録先の経済産業省のデータベースe-Statに飛び、その下の方にある「累計統計表」から「乳用牛の年次別飼養戸数および頭数」「経産牛1頭あたり搾乳量」で、経年の必要な値を取得できる。

まずは乳用牛飼養戸数と、一戸あたりで飼っている「めす牛」の頭数(おすの牛は当然乳用牛にはならない)。データが取得可能なのは1989年分以降だが、この30年ほどの間で戸数は1/5ぐらいに減り、一戸あたりの頭数は3倍強にまで増加している。記事タイトルの通りに、大規模化、あるいは小型の酪農家が淘汰された形。

↑ 乳用牛飼養戸数と一戸あたり飼養頭数
↑ 乳用牛飼養戸数と一戸あたり飼養頭数

一戸あたりの頭数は平均値だから、素直に掛ければ毎年の総頭数が算出される(実際は逆で、総頭数を飼養戸数で割り、一戸あたりの頭数を出している)。戸数が約1/5で一戸あたりの頭数が3倍強だから、総頭数は当然漸減している。

↑ 乳用牛飼養頭数
↑ 乳用牛飼養頭数

酪農家の減り方ほどではないが、総頭数も漸減しているのが確認できる(ここ数年は微増の動きを見せているが)。ちなみにこれは総頭数であり、「経産牛(出産を経験した牛で、生乳をしぼれる)」「未経産牛」「2歳未満」に分類され、「経産牛」はさらに「搾乳牛」と「乾乳牛(搾乳をお休みする牛)」に分類される。総頭数に対する「搾乳牛」の比率は大体5割強で推移している。要は牛全体のうち実際に乳搾りをしているのは半分くらいで、残りは「お休み中」「まだ子供」「まだお乳は出ない」状態な次第。

さて、先の記事をもう一度見直してほしいのだが、1989年と直近の年との間で、総生乳生産量にはどれほどの違いがあっただろうか。

↑ 国内生乳生産量(万トン)(再録)
↑ 国内生乳生産量(万トン)(再録)

50万トン足らずしか違いがない。「頭数がこれだけ減っているのに、生乳生産量があまり減らないのはなぜだろう」との疑問が沸くが、その疑問を解消するのが次のグラフ。これは経産牛1頭あたりの平均搾乳量。

↑ 経産牛1頭あたり搾乳量(キロ/年)
↑ 経産牛1頭あたり搾乳量(キロ/年)

まず驚かされるのが、乳牛のパワー。1年間に9トン近くもの牛乳がとれてしまう。あのあどけない顔のどこにそんな底力、エネルギーを秘めているのだろうか。自然の神秘に他ならない。直近分で概算すると、毎日欠かさず乳搾りをしたとしても、1日約24リットル。牛乳パック24本分にもなる(牛乳1リットルを1キログラムと概算)。

そしてもう一つ驚くのが、毎年のように1頭あたりの搾乳量が増えていること。これは【乳量に及ぼす牛舎環境(家畜改良事業団の資料(PDF))】【1.日本の酪農の現在 牛乳が生まれる原点のところ(社団法人日本乳業協会の資料)】などに目を通して欲しいが、要は「飼育技術も向上し、乳牛の選抜改良も進ん」でいるのが主な要因である。



酪農市場では集約化が進み、1頭あたりの搾乳量も増えている。需要が十分に大きく、拡大傾向にあるのなら、このまま戸数・頭数も増えることで市場の拡大化が期待できるが、現状はむしろ逆。先の社団法人日本乳業協会の資料にもあるように「消費低迷もあり、生産調整を余儀なくされ」ているのが現状。その上、実体験から多くの人が御承知の通り、飲用牛乳は賞味期限が短く、保存もきかない。生産調整も極めて難しい。

そして大規模化で問題がそのまま素直に解決されるわけでもない。他の一次産業同様、中長期的な視点からの戦略構築と実行が求められよう。


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