最上位は米国23.00兆ドル、ついで中国の17.74兆ドル、日本はその次…IMFのデータベースから主要国のGDP動向を確認
2023/01/03 03:00
先行記事【主要国の対外純資産額】において、IMF(国際通貨基金)のデータベースの「World Economic Outlook Database」の公開値を用い、諸外国のGDPを取得した。よい機会でもあり、今回はその値を用い、日本も含めた各国のGDPの動向を確認していく。
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2021年の名目GDP、上位国は?
まず用語や注意事項に関して、箇条書きでまとめておくことにする。
・単位……今件では基本は兆米ドル(現在水準価値で換算済み)。単純比較をするために米ドルですべて統一されているが、厳密には各国の対米ドル為替レートも考慮する必要がある。
・順位……IMFのデータベースで取得できる最新実値は2021年分(国によってはそれ以前)。
・精査対象国……収録されているのは全部で195か国。
GDPには今回用いる「名目GDP(Current GDP)」以外に「実質GDP(Constant GDP)」が存在する。この違いについては以前の記事【日本の経済成長率…(上)用語解説(最新)】で詳しく説明しているので、そちらを参考のこと。
以上の条件を基に、2021年分の名目GDP上位国、そして世界全体に占める各国の名目GDPの比率を算出したのが次のグラフ。
↑ 名目GDP上位国(兆米ドル)(2021年)
↑ 世界全体に占める各国名目GDP比(2021年)
名目ではあるがGDPの上での最大の国家はアメリカ合衆国、次いで中国。この2国だけで世界全体の4割強。次いで日本、ドイツ、イギリス、インド、フランスが続く。シェアを示すグラフでは上位10か国を具体的な名前で挙げているが、これらの国のみで世界全体の7割近くのGDPを有していることになる。
経年推移を見ていくと
続いて各国の経年推移を確認していく。とはいえ、すべての国の動向をすべてチェックするのは不毛であることから、2021年時点の上位10か国に的を絞ることにする。「World Economic Outlook Database」では現時点で1980年から2027年分のGDPを取得できるので、それらの値を基に、上位国の動向を示したのが次のグラフ(2022年分以降は推定値)。
↑ 主要国名目GDP(米ドルベースで2021年時点の上位10か国、兆米ドル)
色々物議をかもしてはいるが、アメリカ合衆国が非常に大きな成長を示していること、他国が束になってもかないそうにないことがあらためて実感できる(今件は名目GDPのため、インフレの影響を受けていることは留意すべき)。
また2008年の時点である程度金融不況の影響は出ていたものの、2009年では2008年に生じたリーマンショックにより、それ以上の大きな減少が確認できる。もっとも金融不況からリーマンショックに至る減少は、ドイツやフランス、イタリアなど他国でも大した違いはない(日本のGDPがこの時期に落ちていないのは、円高が影響している)。さらに2020年ではアメリカ合衆国が新型コロナウイルスの流行で大きくGDPが削られた状況も確認できる(他国もおおよそ前年比で減少している)。
アメリカ合衆国の値が大きすぎて他国の状況がつかみづらいので、同国を除いてグラフを再構築してみたが、今度は中国の値が大きすぎて全体像の把握がしにくくなるため、さらに中国も除いた版も併記しておく。
↑ 主要国名目GDP(米ドルベースで2021年時点の上位10か国、アメリカ合衆国除く、兆米ドル)
↑ 主要国名目GDP(米ドルベースで2021年時点の上位10か国、アメリカ合衆国と中国除く、兆米ドル)
2000年前後の景気後退期に各国とも一時期低迷しているが、それ以外は順調に成長している。しかし上記にある通り、2007年以降の金融不況、そして2008年のリーマンショックの影響は大きく、円高で値を多分に修正された日本や、金融危機の影響を押しのける程に成長を続ける新興国以外は、押しなべてGDPを落としているのが分かる。逆に日本は2012年以降の為替レートの適正化に伴い、名目GDPが落ちている。
また、中国のGDPの伸びの著しさも目立つ。特に2006年以降の伸びは異様で、2007年はドイツを、そして2010年には日本を抜き、名目GDPでは世界で2番目の大きさを持つ国となった。
いくぶん余興になるが、国全体としてではなく、各国の国民一人あたりの名目GDPを算出すると、意外な結果が出る。
↑ 国民一人あたり名目GDP(上位国、万米ドル)(2021年)
トップはルクセンブルク、アイルランド、スイス、そしてノルウェー、シンガポール、アイスランドが続く。アメリカ合衆国は7位、日本の27位、3.93万ドルほど。これは人口の大小と、その国のGDPが何によって構築されているか、さらには年齢階層別人口構成比の違いが多分に出ている。上位陣はアメリカ合衆国などのようにオールマイティな強さを持つ国もあるが、おおよそ金融立国や資源が豊富な国が占めており、人口と比べて得られる生産価値の大きさが多分に影響している。
またこの「国民一人あたりの名目GDP」について、名目GDPの上位陣のうち気になる国を抽出した上でその推移を見たのが次のグラフ。
↑ 国民一人あたり名目GDP(主要国、万米ドル)
↑ 国民一人あたり名目GDP(主要国、2021年は1980年の何倍か)
一人あたりで均すと、日米独であまり大きな差異が見られないが、2010年あたりからはアメリカ合衆国と、日本やドイツとの間に差ができるようになったこと(ただしこれは為替レートが大きな影響要素となっている)、中国ははるかに下となるが、それでもなお2006年以降の伸びが著しい事が改めて確認できる。また、成長率のみで見ると、ひとり頭ベースでも中国や韓国が大きな伸びを示している。
これらIMFのデータは、当然実測値が確認されればその分正確度が増す形となる。今件記事も逐次定期的に値を取得し直し、より確からしい動向を確認していくことにしよう。
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