子供の書籍離れなど無い…小中高校生の平均読書冊数など

2022/11/25 02:00

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携帯ゲーム機やスマートフォンなどのデジタル機器の普及、地方の個人経営の本屋の相次ぐ閉店、出版業界の不振など、子供の本離れを想起させる環境変化が相次いでいる。その実態はどのようなものなのだろうか。本当に子供達は本離れを起こしているのか。今回は全国学校図書館協議会が公開している【「図書に役立つ資料」】の中から、同協議会が毎日新聞社と共同で毎年実施している「学校読書調査」の公開データをもとに、小中高校生の児童生徒における読書状況を確認していくことにする。

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次以降に示すのは全国学校図書館協議会と毎日新聞社が毎年6月に全国小中高校で実施している、読書に関する調査結果「学校読書調査」の公開データを元にしたもの。直近2022年分は選定基準により全国から求めた調査対象校に在学する児童・生徒のうち、各学年につき1学級を選定し、6月の第1・2週にクラス毎に集団質問紙法で、先生が説明をしながら生徒が回答を記入する方式を用いている。対象人数は小学生4733人・中学生4552人・高校生4806人。なお2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で調査が中止されている。

まずは該当生徒における一か月間の平均読書冊数。今調査では2014年分において別項目で電子書籍について尋ねていたことから、該当書籍は紙媒体のものに限られる(欧米はともかく日本ではまだ、一般的には「読書」との言葉で電子書籍・雑誌を対象とする認識は少数派にとどまっている)。また雑誌は別項目で尋ねており、今項目は純粋に書籍に限定される。

↑ 1か月間の平均読書冊数(冊)
↑ 1か月間の平均読書冊数(冊)

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(冊)(直近10年分)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(冊)(直近10年分)

2000年前後まではほぼ横ばい。それ以降は本離れどころかむしろ増加の傾向にある。特に小学生において増加は著しい。直近の2022年では小学生が13.2冊、中学生は4.7冊、高校生は1.6冊との結果が出ている。高校生に限れば、2010年の1.9冊をピークに、ゆるやかな漸減傾向の動きがあったが、2018年の1.3冊を底に持ち直しを見せているようだ。

2000年前後からの上昇、特に小学生において目覚ましい伸びを示しているのは、いくつかの理由があるが、最大の要因は1988年に船橋学園女子高校(現・東葉高校)で実践が始まった「朝の10分間読書」運動であるとする説が有力。これは読書の習慣を身に着けるために毎朝10分間、始業時間前に読書の時間を設けるとのもので、「皆で同時に行う」「毎日行う」「読む本は自由」「読むだけ」の4原則のもとに行われることになっている。対象の本は生徒が持参したものでも、学級文庫などでもよい。

2001年に文部科学省が「21世紀教育新生プラン」を呈し、その中で「朝の読書活動の推進」を具体的に掲げたことから(【文部科学省内 21世紀教育新生プラン】)、今件活動は特に小学校の間に浸透することとなった。また教材の文章と並行する形で学校の図書館などが保有する書籍を読書させる「並行読書」などの学習スタイルも推し進められており、これも小さからぬ影響を与えているようだ。

これに伴い読書をしない子供「不読者数率」も2000年前後を区切りとして大きく減少の動きを示している。

↑ 1か月間の不読者数率(冊数でゼロ冊回答者率)
↑ 1か月間の不読者数率(冊数でゼロ冊回答者率)

↑ 1か月間の不読者数率(冊数でゼロ冊回答者率)(直近10年間)
↑ 1か月間の不読者数率(冊数でゼロ冊回答者率)(直近10年間)

読書冊数の増加傾向は小学生で著しいが、不読者数率の減少はむしろ中学生の方が目覚ましい成果を出しているのが分かる(直近2022年で中学生が大きく増えたのは気になるが)。直近2022年では小学生は6.4%、中学生は18.6%、そして高校生は51.1%。

類似の他の調査同様、高校生はいくぶん書籍になじまない傾向があるようだ。不読者数率においても高校生は2010年を底に増加傾向にあるのが目にとまる。連動する要素としては、やはりスマートフォンの普及による時間の奪い合いの結果だろうか。あるいは電子書籍へのシフトが進んでいるのかもしれない。



本来ならこの後、書籍とは別に雑誌に関するデータの精査も行っていたのだが、2018年分以降においては雑誌関連の値は完全に非開示化されたため、残念ながら分析は省略する。調査項目として雑誌が存在するのは確かではあるのだが。

その雑誌では経年の減少傾向は明らかで、特に高校生において著しく、スマートフォンの普及が大きく影響していることは容易に想像できる。すき間時間を埋める目的で読む人が多い以上、その目的をより容易に、多様に、そして安価にかなえられるスマートフォンに時間を奪われるのは当然の話。

一方「子供の本(書籍)離れ」は教育関係者らの努力なども成果を結び、むしろより距離感を緊密なものとしている実態が明らかになっている。ただしここ数年に限れば一部属性で書籍離れ的な気配が感じられるのは否定できない。今後の動向を注意深く見守りたいところだ。


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