他世帯へのお年玉としての贈り物の実情推移を家計調査から推測してみる

2022/12/26 02:00

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先行記事【他世帯へのゲームやおもちゃはいつ買われるのか…贈り物としてのゲームソフトなどの購入傾向(最新)】において総務省統計局の家計調査の値を基に二人以上世帯限定ではあるが、他世帯への子供に対するお年玉などと推測できる贈り物の額面の実情を確認した。今回はその値を基に、直近年だけでなく過去の値も算出し、その経年動向を見ていくことにする(【家計調査】)。

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精査対象は用途分類における「10.3.4 教養娯楽」。他世帯に向けた教養娯楽関連の品物への支出を意味する。先行記事で挙げた「10.3.3 被服および履物」については、その記事の検証結果で判明した通り、お年玉などではあまり使われていないようなので取り上げない。

はじめに示すのは、毎年1月における二人以上世帯の「教養娯楽」の動き。家計調査では2000年以降についてこの値が取得できる。

↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(円)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(円)(各年1月)

2000年以降に限れば起伏がやや激しいが総じて「教養娯楽」の額は漸減状態にある。2014年に飛び跳ねた値として2270円が出ているが、それ以外では2002年の2100円が最大値。直近の2022年では943円。2000年の2061円と比べると2022年の943円は5割足らず。景況感の悪化か、大人がケチになっているのか、その分クリスマスのプレゼントが豪華になっているのか(他世帯へのクリスマスプレゼントはあまり想定できないが)。

また2020年から値が急落しているように見えるが、2020年は前年の消費税率引き上げの影響、そして2021年は新型コロナウイルスの流行が影響していると考えられる。特に後者は外出機会が抑えられているので、例えば実家に里帰りした孫に祖父母が玩具を買い与えるという機会が減ってしまうからだろう。直近の2022年はいくぶん値を持ちなおしているが、未だに1000円を割り込んだまま。

そこでこの額についてそれぞれの年の消費支出の割合を算出する。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出であることから、普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。この値に変化が無ければ世帯単位でのお財布事情が悪化しているので、お年玉も減っていると見なせるのだが。

↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(消費支出に占める割合)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(消費支出に占める割合)(各年1月)

額そのものよりは緩やかではあるが、やはり下降傾向の結果となった。そして2020年以降の落ち込みぶりが著しいのも同じ傾向。つまり実物を贈り物として渡すタイプのお年玉の額が減っているのは、世帯のお財布事情が原因というよりは、お年玉に割く割合が減った結果ということになる。

もう一つ贈り物を渡すタイプのお年玉の額が減っている原因として考えられるのは、世帯における子供の数が減っているからとするもの。子供が二人いる世帯に対しては(年齢の差による金額の差異が生じる可能性はあるが)二人分のお年玉が必要になる。一人しかいない世帯ならば一人分で済むため、単純計算では半分の額で済む。

そこで各年の平均世帯人数を基に子供の推定人数を試算し、2022年の値を基準として仮に他の年も世帯における子供の数が2022年と同じだとしたら、どのような金額になるかを計算した結果が次のグラフ。

↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(直近年の推定子供人数をベースに調整、円)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の他世帯への「教養娯楽」(直近年の推定子供人数をベースに調整、円)(各年1月)

減少度合いが緩やかになるどころか横ばい、見方によっては増えているように見える。世帯における子供の人数が減ったことが、贈り物を渡すタイプのお年玉の額が減っている主要因のようだ。ただし2020年以降は大きな落ち込みに変わりはなく、減った主要因が子供の数の減少とは別にあることがうかがえる。

とはいえ、その増え方はわずかなもの。以前【お年玉の実情の推移を家計調査から推測してみる(最新)】で示した、現金を渡すタイプのお年玉の減少を補完するまでには至らないようだ。

今件は他世帯に向けた贈り物でのお年玉に関する検証だが、恐らくは自世帯の子供に対するものも、似たような傾向を示しているのだろう。


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