2021年は2.1人で1人、2065年には? 何人の働き手が高齢者を支えるのか

2022/11/16 03:00

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内閣府は2022年6月14日、2022年版となる「高齢社会白書」を発表した。これは日本の高齢化の状況や将来予想を公的データを中心にまとめた白書で、高齢化の現状を確認するのには最適な資料として挙げられる。今回は「実質的に生産への寄与が難しい高齢者を、現役世代に該当する人口が支える場合の負担率」、言い換えれば「何人の働き手が1人の高齢者を支える社会となるのか」を確認していく(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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今件においては現役の年齢階層(生産年齢)を15-64歳とし、高齢者を65歳以上と設定する。さらに後ほどの試算で用いるが、前期高齢者を65-74歳、後期高齢者を75歳以上とする(世間一般に使われている定義通り)。その上で単純に人口比を計算すると、1950年時点では12.1人の生産年齢人口で1.0人の高齢者を支えていたことになる。これが2021年時点では2.1人。さらに2065年の予想人口比率では1.3人にまで減少する。おおよそ4人で3人を支える計算。

↑ 高齢年齢階層人口と現役年齢階層人口の比率(高齢社会白書(2022年版)、65歳以上を15-64歳で支えた場合の人数比率、人)
↑ 高齢年齢階層人口と現役年齢階層人口の比率(高齢社会白書(2022年版)、65歳以上を15-64歳で支えた場合の人数比率、人)

これでは現状ですら過去と比べるとずいぶんと負担は大きなものとなっているが、さらに今後においては、現役の年齢階層の負担が重過ぎる感は否めない。そこで前述したように、高齢者を前期・後期に細分化し、医療技術の進歩や定年の延長、再就職者の増加など社会的状況の変化を考慮し、前期高齢者をも生産年齢人口として加算し、後期高齢者のみを生産年齢人口が支えるような状況を想定して試算した…が、大きな変化はない。ある程度支える側と支えられる側のバランスはまともになるが、抜本的な解決策には至っていない。

↑ 高齢年齢階層人口と現役年齢階層人口の比率(高齢社会白書(2022年版)、65歳以上を15-64歳で支えた場合と、75歳以上を15-74歳で支えた場合の人数比率、人)
↑ 高齢年齢階層人口と現役年齢階層人口の比率(高齢社会白書(2022年版)、65歳以上を15-64歳で支えた場合と、75歳以上を15-74歳で支えた場合の人数比率、人)

これは総人口、生産年齢人口が漸減し、高齢世代人口、中でも後期高齢者が漸増していくからに他ならない。

↑ 65歳以上人口(2020年以降は推計、高齢社会白書(2022年版)、万人)(再録)
↑ 65歳以上人口(2020年以降は推計、高齢社会白書(2022年版)、万人)(再録)

↑ 65歳以上人口(2020年以降は推計、高齢社会白書(2022年版)、総人口比)(再録)
↑ 65歳以上人口(2020年以降は推計、高齢社会白書(2022年版)、総人口比)(再録)

しかもこれは現役の年齢階層にある人の全員が「支えるだけの資質を持っている」のが前提となる。病症などの健康状態により、あるいは失職状態で生産の担い手として勘定できない、または自分自身の生活を継続するのに精一杯な場合、実質的な「高齢者を支える観点での」現役年齢階層人口はこの値からさらに減り、支える人達の負担は増大する(失職者は年齢上は支える側でカウントされているが、支えるだけの収入が無いため、空手形状態となる)。

【全体2.9%、大学・大学院卒2.1%…日本の学歴・年齢階層別完全失業率(最新)】でも示している通り、若年層の失業率が高い現状で、さらに定年を引き上げる措置などを行えば、「労働機会」のパイの奪い合いは加速化する。「前期高齢者」を加算して、支える側の現役年齢階層人口を増やしても、労働機会そのものを増やさない限り、実質的な「支え手」は変わらない。

つまり「支える側と支えられる側のバランス調整のために定年を上げるのなら、労働機会そのものの拡充が前提」であり、「単に定年の引き上げだけを行えば労働機会の奪い合いで”現役年齢階層人口で高齢年齢階層人口を支える”状況の改善には何も寄与しない」ことになる。そして現時点では嘱託や再雇用、非正規雇用などの経由で高齢者の雇用が促進されており、支える側(生産年齢側)の足元すら脅かされているのが実情。

さらに白書では触れていないが、実際には現役の年齢階層は14歳までの年少人口をも支える必要がある。子供は放置して勝手に育つものではない。むしろ現役年齢階層の責務として、社会全体の維持の観点では、こちらの方が優先順位は高い。年少人口は漸減状態にあるものの、「高齢者の生活を支える」との観点では、実質的には今件の値よりももう少し厳しいものになると見るべきである。

また、過去の実情を鑑み現役年齢階層は15歳以上との前提で試算は行われているが、進学率の向上に伴い、実質的には20歳前後以降でないと実情には合致しにくい。つまりそれだけ計算の上で現役年齢階層の数は減ることになる。

「労働機会と名付けられたパイ」を大きくするには、ひとえに経済成長、具体的には内需拡大による労働需要の拡大が必要となる。新たな領域を得るに必要となる新産業の開発のため、技術革新への注力も欠かせない。支え手の数そのものの増加につながる少子化対策と併せ、抜本的な施策の断行が求められる。さもなくば「現役年齢階層人口が高齢年齢階層人口を支える」との前提すら、再検討が求められる事態となる。

また、例えば【税収と税率と財務健全化の所感】で指摘したような、株式における優先株や自動車免許のような仕組み、具体的には年金支払い金額において、選挙権と引き換えに現状の支払額に積み増しする代わりに、選挙権を維持している限りは支払額を低額に留める、あるいは【高齢者の年金や社会保障は保有資産との強力なリンクで決定...社会保障財源周りの話の発想の一つとして】でも言及したように、公的年金などの保証に関して現状資産との強力な連動性を導入する、【社会保障と人生の「両端」とベーシックインカムの新たなコンセプトと】で例示したような、いわゆるベーシックインカム(BI)の制度をベースにした総合的な社会福祉政策の概念など、奇策、蛮策的な類のものも考察しなければならなくなるだろう。


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