図書館市場は縮小中…図書館や教科書の市場動向
2022/12/11 08:00
出版物に出会う機会は書店や通販経由による購入ルートに限らない。図書館や学校でもさまざまな出版物に巡り合うことができる。今回は日販による「出版物販売額の実態」最新版(2021年版)をベースに、それら図書館による調達市場や教科書の市場の実情を確認していくことにする。
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図書館市場は688.5億円
「出版物販売額の実態」では2014年度以降の図書館市場や教科書市場の実情を取得可能。そこでまずは図書館の市場を精査する。なお私立図書館の購入額は公開されていないので、図書館の全体としての市場規模はもう少し大きなものとなる。
↑ 図書館市場規模(億円)
↑ 図書館市場規模(前年度比)(2021年度)
直近年度の図書館市場規模は688.5億円。そのうち小学校が90.9億円、中学校が60.3億円、高等学校が34.8億円、大学・短大・高専が大きめの255.8億円、そして公共図書館が246.7億円となっている。
前年度比では中学校の属性で増加。全体的には減少傾向にある。情操教育にも学校の図書館は大いに有益であるはずなのだが。
教科書市場は828.0億円
続いて教科書市場。こちらには高等学校までの教科書に加え、特別支援学校、そして教師用の教科書も合算している。
↑ 教科書市場規模(億円)
↑ 教科書市場規模(前年度比)(2021年度)
直近年度の教科書市場規模は828.0億円。そのうち小学校が266.6億円、中学校が213.1億円、高等学校が262.7億円、特殊支援学校1.4億円、そして教師用が84.2億円となっている。
経年変化では直近年度で額が大きく減少しているのをはじめ、増減が著しい。これは教科書の市場が教育課程における教科の増減や、教科書改訂に伴う新版発行に大きく影響されるからである。例えば教師用が前年度比マイナス54.9%と突出した下げ幅を示しているが、前年度の2020年度において、2021年度中学校教科書改訂にともなう教科書の新版発行が実施されたからに他ならない。
一部では図書館の立ち位置こそが出版業界を圧迫しているとの意見もあるが、図書館の蔵書にしても教科書にしても、出版物を介して書に触れる大切な機会に違いない。特に教育機関で用いる出版物は、教育の大切な道具であり、支えとなるものに他ならない。出版物を敬愛する人を底上げするためにも、図書館や教科書市場へのリソース投入の拡大を、各方面には願いたいところではある。
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(C)日販 ストアソリューション課「出版物販売額の実態2022」
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