2か月以上の家賃滞納率0.4%、関西圏では0.8%…賃貸住宅の平均家賃滞納率(2022年11月発表分)
2022/12/13 02:00
賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」が更新・公開している【賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)】の最新版として、2022年11月付で「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)・2021年度(2021年4月-2022年3月)」が発表された。今回はそのレポートの中から、賃貸住宅管理会社が管理する物件における「家賃の滞納状況」を確認し、現状の精査を行うことにする。
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250世帯に1世帯は2か月以上の滞納
各種調査要項などについては先行する記事【新築・既存ともに物件増加、特に既存物件が大幅増加…賃貸住宅会社の物件の増減実情(2022年11月発表分)(最新)】にて記載済み。必要な場合は、そちらで確認してほしい。
月末、25日、10日前後など、物件によって日取りは異なるが、賃貸住宅の家賃は原則として月1回支払いが行われる。昨今では事前に取り交わした契約に従い、自動的に金融機関の口座から引き落とされる場合が多い。もっとも個人経営の賃貸住宅では、今でも借主が家主に毎月手帳とともに家賃を手渡し、その手帳に支払い済みの判子を押してもらうスタイルを続けているところも見受けられる。住民の動向確認の意味合いもあるのだろう。
現在では家賃支払い方法の多分を占めることになる自動引き落としだが、銀行口座残高の調整ミスで残高不足から家賃の引き落としを行えず、気がつけば家賃を滞納してしまうトラブルもある。その経験を持つ人も少なくあるまい。家賃引き落とし専用の口座を別途設けていても、その口座への入金をつい忘れてしまうとの事例もありうる。
そこで「月末での1か月滞納率」「(状況が悪化した、連続した滞納状態の)月末での2か月以上滞納率」それぞれについて、直近値からグラフ化したのが次の図。なお滞納率は入居戸数に対する滞納戸数の割合で、家賃債務保証会社からの代位弁済も滞納戸数としている。
↑ 家賃滞納率(地域別)(2021年度)
直近年度において、月末での1か月滞納率は全体で0.9%も発生している。111世帯に1世帯の割合である。2か月連続して「危険信号」レベルになると0.4%の域に達する。
2か月以上の滞納率0.4%。これは「賃貸住宅の250世帯に1世帯は現在2か月以上家賃を滞納している」状況となるわけだが、切り口を変えて「通常支払い率99.6%」と表現すればかなりよい方に見える。ただしリスクは低いに越したことはない。例えば1棟が5階建・10列(=50部屋)の大型団地なら、5棟あたり1世帯は2か月以上の家賃滞納世帯が存在する計算になるからだ。そして2か月もの滞納状態ともなれば、状況がさらに悪化し、未回収(+管理会社の費用持ちでの原状復帰作業)となる可能性は高い。また、これには「空き室率」は勘案されていないため、賃貸住宅の採算率はそれより悪くなる(空き室率は1割前後が一般的)。
地域別では「関西圏」「首都圏・関西圏以外」の値が高いのが目にとまる。短観では間接的にではあるが「前年に引き続きコロナ禍による収入減が影響し、実質滞納率は増加していると考えられるが、滞納保証会社による代位弁済が多分に影響した結果と思われる」と言及しており、この影響が特に「関西圏」では強く出ているものと思われる(滞納率は今年度分から集計方法を変えたために前回分調査結果との比較は無し)。
管理会社へ連絡をしないままの家賃滞納は、管理会社の立場からでは「ミスによる滞納」なのか、それとも家計の事態悪化が継続し「経済的理由による月末までの滞納」「2か月以上の滞納」につながるのか、さらには何らかの事案が生じ家賃を口座に確保できない状態となっているのか、その判断はできない。手間はかかり、住民に対する不信感・不安感は募り、印象は悪くなる。
現在賃貸住宅市場は借り手が優位な市場状況ではあるが、賃貸住宅利用者は「住まいを借りている立場」であることを忘れるべきではない。理由はともあれ、万一にでも家賃滞納を起こしてしまったら、すぐにでも家主、管理会社に一報を入れ、最善を尽くしてほしいものだ。
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