日本では現金と預金が54.7%…主要国の家計資産の構成比率
2022/11/08 02:00
当サイトでは【日米家計資産推移】にある通り、日本銀行が定期的に発表している「資金循環の日米欧比較」を基に、日本とアメリカ合衆国、そして欧州全体の一般的な家計における、金融資産の内情を精査し、その違いを確認している。それぞれの経済状況に加え、国・地域の金融システムの相違や民族性などがよく現れており、非常に興味深い内容となっている。今回は同様のお財布事情を知るため、OECD(経済協力開発機構)の公開データベース【Household accounts】を用い、いくつかの国を選択し、「資金循環の日米欧比較」の公開値と同様に、各国の平均的な家計の金融資産の構成比率について確認していくことにする。
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OECDのデータベースを用いた主要国の家計金融資産の状況だが、確認出来る限りでは30か国あまりの値が収録されている。区分としてはOECD加盟国、EU、ユーロ圏、G7、G20などが用意されているが、それらの区分内でもデータが無い国も多数ある。また中国など共産圏の国は残念ながら見当たらない。さらに現時点で収録されている国でも、最新データが2021年の国とそうでない国があり、すべての国が最新値で揃った年となっているわけではない。
その条件の上で、値を抽出可能な国から独断と偏見で、欧州地域からはイギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、ギリシャを、それ以外からはイスラエル、日本、韓国、カナダ、アメリカ合衆国を選び、それぞれの値を抽出・算出し、「日米家計資産推移」に極力合わせる形で作成したのが次のグラフ。なお「株式以外の証券」とは主に債券を意味する。また元データでは保険積立金と年金基金が別途用意されているが、やはり「日米家計資産推移」に合わせる形で一体化している。
まずはヨーロッパ諸国。
↑ 家計金融資産構成比率比較(ヨーロッパ諸国、2022年時点で最新年値)
ヨーロッパ全体では「日米家計資産推移」などで言及の通り、安全資産とリスク資産の比率が、日米の中間ぐらいとのイメージがあるが、国毎で見ると大きな違いが生じているのが確認できる。例えばギリシャは現金・預金が6割近くを占めており、この比率は日本以上の値を示している。他方スウェーデンは株式・出資金の比率が高く、後述するアメリカ合衆国とほぼ同じ値となっている。フランスでも株式・出資金の比率が高めだが、投資家への税制上の優遇措置となるPEA(Plan d'epargne en actions。同口座で5年以上保有し続けると配当や売却益は非課税になる)が有効に使われているのが主要因。
イギリスでは保険・年金の値が5割強と、今回挙げる国の中ではイスラエルに次いで大きな比率を示している。これは同国では税制上の優遇措置によって、一時払いの個人年金などが個人の貯蓄の手法として広く普及していることに加え、公的年金が民営化されているのが原因。内情としては年金基金部分が41.6%となっている。
続いて日本やアメリカ合衆国など。
↑ 家計金融資産構成比率比較(日米その他、2022年時点で最新年値)
日本の現金と預金の多さ、アメリカ合衆国の株式・出資金の多さはこれまで「日米家計資産推移」で繰り返し言及してきた通り。一方、先のヨーロッパ諸国のグラフでも言えることだが、それぞれの国の税制、金融制度によって家計の金融資産構成はまちまちで、日本・アメリカ合衆国いずれかのパターンに近いわけではないのが分かる。例えばカナダは「その他」が1/3超と大きな値を示しているが、これは特にデータベース上説明は無いものの、TFSA(Tax-Free Saving Account。非課税貯蓄口座)やRRSP(Registered Retirement Savings Plan。税制適格退職貯蓄制度)、さらにはRESPs(Registered Education Savings Plans。税制適格教育貯蓄プラン)など日本のNISA的な制度が山ほど整備されており、それらが該当するものと考えられる。
限られた国数ではあるが、諸国の家計金融資産の構成比を見る限り、日本の現金・預金の多さはそれなりに高い値であり、リスク性資産の比率は相当に低い値であることが分かる。あるいはイギリスのような個人年金を奨励する税制措置、フランスのような長期投資を優遇する措置、カナダのような多様な優遇措置を提供する制度の整備で、リスク性資産の選択肢を増やすのも、現状を変える手立てとしては有効かもしれない。
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