ゲームよりテレビより動画視聴が長い実情…10代の子供達のテレビやゲーム、ソーシャルメディアの利用時間

2022/10/20 02:00

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以前【「ノーゲームデー」の誤解と実態と子供が本当に必要だったもの】などで北海道教育委員会による、子供達に電子メディア、特にゲームへの接触をさせず、昔の遊びを体感させようとする試み「ノーゲームデー」というプロジェクトに関する騒動への解説を行った。多分に運用側の誤解や事実誤認、ネーミングセンスなどによって生じた騒動で、ゲームそのものを完全に敵対視した試みではないことが分かった一方、子供達が集まって、あるいは一人で何らかの端末に熱中しているようすをすべて「ゲーム」ととらえる大人が一定数いる実態も、あらためて認識させることとなった。今回は総務省情報通信政策研究所が2022年8月26日に発表した「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の公開値を基に、10代の子供達における色々な行動の実情を確認し、「ゲームに夢中で時間を浪費する子供」のイメージがどこまで現実を示しているのか、その確認をしていくことにする(【情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査】)。

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10代におけるゲームの時間、長いか短いか


調査要項などは今調査に関する先行記事【主要メディアの利用時間(最新)】を参考のこと。

今調査結果からは回答者の平日・休日におけるさまざまな行動の、行為者率(その行動を実施した人の割合)や平均時間などを取得できる。そこで問題視された年齢階層に該当する10代に的を絞り、ゲームやテレビ視聴、ソーシャルメディアの利用、メールの読み書き、ブログやウェブサイトの読み書き、動画視聴(OFF=オンラインではなくダウンロードしたファイルをオフラインで再生した動画の閲覧も含む)、さらにはインターネットを用いた音声通話などの行為について、平均利用時間を該当項目から抽出して算出した。行為者・非行為者も合わせた平均時間であるため、その行為の実行実情も反映した数字となる。全体像としてどれほど傾注されているのかを示すのに適した値ではある。

↑ 10代の平均行動時間(主要要素別、分)(2021年)
↑ 10代の平均行動時間(主要要素別、分)(2021年)

平日、子供がもっとも時間を費やしている、大人から見れば熱中しているように見えるのは「動画視聴」。1時間半以上を費やしている。次いで「テレビ(視聴)」が1時間強。「中途半端な傾注にとどまる『ながら視聴』も含まれているのでは」との意見もあるだろうが、時間を消費していることに変わりはなく、注力の少なからずが投入されているのも事実。

注力度が高そうな時間消費行動なら「ソーシャルメディアの読み書き」が該当するが、こちらは1時間強。そして「ゲーム」(据置型・携帯型の家庭用ゲーム機だけでなく、パソコンやスマートフォンなどによるオンラインゲーム、ソーシャルゲーム、さらにはダウンロードタイプのオフラインによるデジタルゲームまで含むことに注意)は1時間足らずでしかない。

休日になると余暇時間が増えることから、利用傾向は大きな変化を見せ、利用時間も長くなる。そして一番長い時間を費やしているのは平日同様「動画視聴」。長さは2時間強。次いで「テレビ」が1時間半ほどで続き、「ゲーム」「ソーシャルメディアの読み書き」が後を追う形。

同様の精査は前年分も実施しており、その結果との比較をしたのが次のグラフ。

↑ 10代の平均行動時間(前年比、主要要素別、分)(2021年)
↑ 10代の平均行動時間(前年比、主要要素別、分)(2021年)

増加を示したのは「メールの読み書き」「ブログ・ウェブの読み書き」。「動画視聴」や「テレビ(視聴)」「ソーシャルメディアの読み書き」などは減少している。2020年では新型コロナウイルス流行で生じた巣ごもり化によるものと思われる動き(「動画視聴」や「テレビ(視聴)」「ソーシャルメディアの読み書き」などの大幅な増加)があったが、その反動が生じているようだ。

大人の感覚では「デジタルメディアへの接触」は「ゲームをする」ではあるが、実質的には子供達においては「ゲームをする」以外に「動画を視聴する」「ソーシャルメディアを利用する」の三本柱となっているのが実情。内情を知らない人には、スマートフォンやパソコンに向けて色々と操作をしているようすは、すべてゲームに見えるのかもしれないが。さらにはテレビ視聴ですら、ゲームとの認識をしている大人もいるだろう。

他方、熱中度やデジタル度合を除外し、単に子供が長時間注力する、外遊び的ではないエンタメ行為は何かとの問いへの答えを考えると、単独では「動画を視聴する」「テレビを視聴する」の方が適切となる。つまり(その表現自身が適切でないことはすでに説明の通りだが)「ノーゲームデー」は「ノームービーデー」「ノーテレビデー」とすべきだったことになる。あるいは「ゲームをする」「ソーシャルメディアを利用する」「動画を視聴する」を合わせ、「ノーデジタルデー」がよかったのかもしれない。さらには「ノーメディアデー」が最適だろうか。

使っている機種が問題なのか!?


「ゲームそのものをしているか否かではなく、ゲーム機を使っているか、ゲームをしているように見える機器を使っているのが問題」との意見もあるかもしれない。つまり、実際にはソーシャルメディアや動画視聴であっても、ゲームで遊んでいるように見えるから、全部ゲームだとする主張である。あるいは「ゲーム」をデジタル機器の操作全般としての代名詞としてとらえているかもしれない。

そこで各機種ごとに利用時間を再集計したのが次のグラフ。例えばテレビなら、テレビを画像出力機器としてゲームをしていた時間も、リアルタイムでテレビ番組を視聴した時間も、DVDの再生でテレビを使った時間も、すべて加算してある。また、特記事項として項目に「*」がついているのは、直左にある項目のうち細分化した場合の時間を示している(全スマートフォンと全従来型を足しても全携帯電話利用の時間にならないのは、PHSの利用があるから)。

↑ 10代のメディア平均利用時間(利用内容問わず、機種別、分)(2021年)
↑ 10代のメディア平均利用時間(利用内容問わず、機種別、分)(2021年)

平日では携帯電話の利用時間が一番長く、テレビが続く。パソコンや携帯ゲーム機はわずかな時間(据置型ゲーム機によるゲームは、画像出力にテレビを使うため、テレビ受像機利用時間に加算される)。傾注時間から子供の熱中度を心配するのなら、やはり「ノーテレビデー」あるいは「ノースマホデー」とするのがもっとも妥当な話となる。休日ならばさらに携帯電話とテレビの差が開き、「ノースマホデー」の妥当度はさらに上がる(そのような規制の必要性の是非は別として)。

ちなみに印刷物はコミック以外に新聞や雑誌まで含めても、平日・休日ともに平均利用時間で10分前後でしかない。「漫画ばかり読んで」との心配は、少なくとも今は不要のようだ。



大人が子供に行う「しつけ」は、多分に大人の常識や観察範囲に基づいて行われることになる。ところが大人の常識が子供の世界においては単なる思い込みでしかなかったり、過去(大人が子供だった時代)の話で現在は状況が大きく変化していることもある。今件は多分に、その雰囲気が強い。

ともあれ子供の注力時間に関して問題視をするのなら、優先順位的にはゲームよりもむしろ、動画視聴の仕方やテレビの視聴方法、ソーシャルメディアの使い方などに関する規制…ではなく、正しい接し方を教示することこそが、今の保護者に求められているのではないだろうか。


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