2023年8月度外食産業売上プラス16.6%…21か月連続の前年比プラス
2023/09/25 14:00
日本フードサービス協会は2023年9月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2023年8月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス16.6%を示した。新型コロナウイルスの5類移行による人の流れの増加で、旅行やお盆の帰省による人流が回復し、猛暑で季節メニューが大きく動いたのが原因(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。
スポンサードリンク
今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が225、店舗数は3万6443店舗。今回月は前回月と比較すると事業社数は減少、店舗数も減少している。
全業態すべてを合わせた2023年8月度売上状況は、前年同月比で116.6%となり、16.6%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で21か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日・土曜日は変わらずで、売上の観点ではプラスマイナスゼロ。気象環境では雨天日は東京は変わらず・大阪は多く、平均気温は東京・大阪ともに高く、客足への影響判断はややプラスと判断できる。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これが売上増につながっている。さらに観光需要や猛暑も大きな底上げ要因に。結果として客数は全体では前年同月比でプラス8.4%を示した。一方で客単価はプラス7.6%となり、結果として総合売上はプラス16.6%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で30か月連続のプラス(プラス11.6%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「恒例の季節商品の好評」と説明されている。ハワイ系バーガーが受けたのだろうか。
なおマクドナルド単体の2023年8月における営業成績はプラス8.4%(売上、既存店、前年同月比)とプラスを示している。客数はマイナス0.4%、客単価はプラス8.8%と堅調な伸び。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス10.7%、客単価はプラス5.0%となり、売上はプラス16.2%。麺類は客数プラス7.7%、客単価はプラス9.6%となり、売上はプラス18.1%。麺類は「季節の新商品やラーメン業態のビール販売が好調」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス6.1%。「お盆の帰省需要などで地方の売れ行きが伸び」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス14.1%、客単価はプラス6.1%、売上はプラス21.1%。新型コロナウイルス流行前との比較となる4年前同月比では減少を示している(売上マイナス3.6%)。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス58.9%、居酒屋の売上はプラス46.2%。部門全体では売上はプラス50.3%を示した。「ビジネス街立地の店舗では、猛暑で昼間の集客が鈍り、お盆明けの客の戻りも振るわなかったが、ターミナル駅や商業施設の店舗は帰省客などの需要が旺盛」とある。
ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はプラス22.6%、客単価はプラス6.0%で売上はプラス29.9%を示した。「お盆の個人客の宴会が堅調であったことに加え、インバウンド需要も原発処理水問題で一部にためらいが見られたものの引き続き底堅く」との説明がある。
今回月で78回目となるプレミアムフライデーの影響だが、解説コメントでは一切そのフレーズは確認できなかった。新型コロナウイルスの流行でそれどころではない、そもそも在宅勤務が増えているため実施する機会もないのが実情だろう。
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2023年8月分)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2023年8月)
↑ 外食産業売上4年前同月比(業態別)(2023年8月)
5類移行などが
行楽・帰省需要を後押し。
猛暑が
季節メニューを底上げ。
2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。そして昨今ではヒット作も相次ぎ、数字の上でも明らかに復調している。現在はかつて自他ともに認められていた「洋風、そしてファストフード全体のけん引役」の立場に戻り、月次で毎月のように売上高の前年同月比1割前後のアップを示している。
ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。
ファミレスは2016年以降は、雰囲気的にそれまでのような好調さとはうって代わり、低迷感が否めない状態となった。中食に多分に客を奪われている感はある。しかし焼き肉だけは例外で、客数が伸び続けており、ファミレス部門におけるトレンドが変化しているのだろう。チェーンストアでも精肉部門は堅調なことから、食生活の変化の波に乗っているようだ。
現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が展開している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。
牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。
特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。コロナ禍前の4年前同月比では燦燦たる状況である。また昨今では店舗の人員数不足が顕著化しており、とりわけピーク時間帯では著しい不足感が生じているとある。
次回月の2023年9月分では、今回月に続き行動制限などは無く、例年と比べても沖縄、九州や四国の太平洋岸をのぞいて暑い日が続いており、客足の戻りは期待できる。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
↑ 今件記事のダイジェストニュース動画。併せてご視聴いただければ幸いである
■関連記事:
【定期更新記事:外食産業(日本フードサービス協会発表)】(今カテゴリの過去記事一覧)
【景気ウォッチャー調査最新結果】
【セブンのセルフ式コーヒー「セブンカフェ」が全店舗導入完了、今月末には累計2億杯突破へ】
【「日高屋」で飲む人が増えたのは何故だろう...「日高屋とちょい飲みと・外食産業よもやま話」後日談】
スポンサードリンク