米国で読書離れやテレビ離れは進んでいるのだろうか
2022/07/31 02:00
先行記事【米国の日常生活の内訳を時間配分でのぞいてみる】で、アメリカ合衆国労働省労働統計局が定点観測的に調査を行いその結果を発表している、同国の国民の生活様式にかかわるデータをもとに、大人の日々の日常生活や就業者の実数などさまざまな実情を確認した。今回は公開値をもとに、同国の趣味趣向の変化が生じているのか否かについて、テレビ観賞やゲームなどへの時間配分の点から精査を行うことにする(【U.S. Bureau of Labor Statistics】)。
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平日動向を男女別・年齢階層別に
次以降に示すのは15歳以上における各属性別の、各娯楽にかかわる1日あたりの従事時間の平均値。時間単位で示してあり、小数点以下も時間での区切りであることに注意(「0.50」は「50分」ではなく「0.5時間=30分」)。現時点では2003年以降2021年までが年次ベースで公開されているが、2003年は平日と休日が区分されていない、2005年以前は年齢階層の区分がそれ以降と異なるため、それぞれを略している。また今件は主従事と認識した時間のみで、いわゆる「ながら行動」の時間は含まれていない。
なお項目上の「ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作」とは「パソコンによるインターネットでのブラウジング、ゲーム、ソーシャルメディアへのアクセス(私的娯楽使用)」以外に「ボードゲームやカードゲームなど」のような実体系ゲーム、そして家庭用ゲーム機によるゲームも(デジタル系機器には違いない)該当する。「読書」は特に説明は無いが、他の同国の調査動向を見る限り、電子書籍の閲読も該当するものと考えられる。要は解説の説明が無い以上、回答者が「読書をしている」と認識した行為の時間である。
まずは平日において男女別にテレビ観賞、読書、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、そしてそれら以外の娯楽行動も合わせた娯楽時間の総計での、過去から直近年までの推移。
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、テレビ観賞、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、読書、男女別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、男女別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、娯楽時間総計、男女別、時間)
まず男女別だがテレビ観賞とゲーム、娯楽総計は男性が上、読書は女性が上。これは昔も今も変わらない。また経年変化的に差異が拡大・縮小することも見られず、男女間の趣味嗜好の全体的な相違に変化は無いように見られる。
そして時代の流れに伴う変化だが、テレビ観賞はほぼ横ばい、読書は減少気味の動きで一時期は回復基調(電子書籍が後押ししているのかもしれない)だったが、2016年以降は再び減少の動き、2019年あたりからは横ばいに。ゲームは明らかに増加(デジタル系ゲームの普及浸透が貢献していると考えれば道理は通る)、娯楽時間総計に変わりは無いとの動きが出ている。読書離れは起きていたかもしれないが、テレビ離れは起きていないのが実情。
続いて年齢階層別。
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、テレビ観賞、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、読書、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、平日、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、時間、15歳以上、平日、娯楽時間総計、年齢階層別、時間)
就業や就学に時間を拘束されることを考慮すれば、現役世代が娯楽時間総計で低い値を示すのは当然の話。20歳以上でも若年層は少なめで、中年層以降になるといくぶん多くなる。そして経年では特に変化は無い。
テレビ観賞でも時の流れによる変化は見られない。あえて言えば65歳以上で増加、25-44歳層で漸減の気配がある程度。他方ゲームではおおよそ漸増の動きを示し、特に20-24歳層では大きな上昇が確認できる。やはりデジタル系ゲームの浸透が影響しているのだろう。
気になる読書時間は元々短時間だった若年層は低迷のまま。他方高齢層のうち45歳以上では漸減の流れが生じているのは注目に値する。アメリカ合衆国の読書離れは若年層ではなく、中年から高齢層に生じていると読むことができる。
お休みの日はどうだろうか
続いて休日や祝祭日。あくまでも暦上の日取りの問題で、休日に仕事をしている人もいることに注意。
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、テレビ観賞、男女別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、読書、男女別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、娯楽時間総計、男女別、時間)
平日と比べて時間に余裕があることから、押しなべて平日よりも長い時間が示されている。他方男女の位置関係は平日と変わらずで、読書は女性が長く、それ以外は男性が長い。
経年推移だが、テレビはいくぶん増加している一方、読書は明らかに減少、ゲームは増加の動きにある。そして娯楽時間総計は横ばいで変化なし。
続いて年齢階層別。
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、テレビ、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、読書、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、ゲームや娯楽のためのデジタル機器操作、年齢階層別、時間)
↑ アメリカ合衆国における平均従事時間(主従事のみ、15歳以上、休日、娯楽時間総計、年齢階層別、時間)
テレビ観賞時間にほぼ変化は無く、高齢層の方が長時間従事しているまま。他方読書は平日同様若年層は低迷を継続中、中年層以降も平日同様に漸減の動きを示している。ゲームなどはおおよそ増加傾向にあり、特に15-24歳において大きな増加の流れにある。そして娯楽時間総計に変化は特に見られない。
現在公開されている範囲での動向は以上だが、「いわゆるテレビ離れは起きていない」「読書離れは若年層ではなく中年層以降に生じている」「ゲームへの注力は増加中、特に若年層に顕著」などの動きが見受けられる。
この数年はスマートフォンの普及浸透、テレビ関連の技術の進歩と動画配信技術による映像娯楽の変化に伴い、娯楽全体の様相も小さからぬ動きを見せている。2020年以降の時間配分はいかなる形となるのか、大いに気になるところだ。
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