石油36.4%・石炭24.6%・天然ガス23.8%・原子力1.8%…日本の一次エネルギー供給の動き(エネルギー白書)
2022/08/06 02:00
資源エネルギー庁は2022年6月7日付で「エネルギー白書2022」の詳細データを公開した(【エネルギー白書一覧ページ】)。この公開値に従い、今回は日本の一次エネルギー供給の動きを確認し、その現状の精査を行うことにする。【主要国のエネルギー輸入依存度(最新)】や【石油漸減中…日本の一次エネルギー供給推移(最新)】など、エネルギーの輸入ルート関連の記事と併せ読むと、さらに理解が深まるに違いない。
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エネルギー需給は国内単位で考えれば原則として「需要=供給」となる。それが成り立たないと過不足が生じ、いずれにしてもトラブルの基となる(水不足による取水制限がよい例)。そしてそのような事態が生じないように各種インフラは整備され、従事者は懸命に努力を続けている。例えるなら、停電や断水が無いように努めていることになる。そのため結果論ではあるが、「日本の一次エネルギー供給推移」で作成したグラフと姿形はさほど変わらない。なお「一次エネルギー」は「自然界に存在するそのままの形を用いてエネルギー源として使われているもの」を意味する。
まずは総供給量推移。
↑ 日本の一次エネルギー総供給(国内供給量、10~18J)
1970年代前半までは猛烈な勢いで石油の量が増加。しかし1970年代に2度にわたって襲った石油危機(オイルショック)を受け、エネルギー供給の安定化・リスク分散のため、「石油依存度の低減化」が国家戦略として実行に移されることになる。石炭・天然ガスの増加、原子力の創出が同じタイミングで始まっているのは、偶然では無く、明確な国家戦略・意思によるもの。また2008年以降の減少は、省エネ技術の進歩とともに、金融危機による経済不況が要因。見方を変えれば、サブプライムローンショックやリーマンショックは、日本全体のエネルギー消費量においても、大きな影響を与えたことになる。
さらに2011年度以降の明らかな変化は先の震災の直接、間接的な影響によるところが大きい。特に「原子力」の減少が総量の減少にも影響している(その分石油・石炭・天然ガスは増えている)。直近の2020年度で大きな減少を示したのは、新型コロナウイルスの流行による経済の低迷が原因。
これを各年のエネルギー供給量に占める各項目の比率推移で見ると、石油依存度の低減化・エネルギー供給の分散化の動きが、手に取るように分かる。また直近における金融不況や震災後のエネルギー問題によって生じたバランスの乱れも確認できる。
↑ 日本の一次エネルギー総供給(国内供給量、全体比)
↑ 日本の一次エネルギー総供給(国内供給量、全体比)(2001年度以降)
↑ 日本の一次エネルギー総供給(国内供給量、全体比、各項目折れ線グラフ化)
↑ 日本の一次エネルギー総供給(国内供給量、全体比、各項目折れ線グラフ化)(2001年度以降)
最新のデータとなる2020年度分では、石油依存度は36.4%。石油ショック真っただ中の1973年度時における75.5%から40%ポイント近い低減化が果たされている。また、石炭24.6%・天然ガス23.8%・原子力1.8%など、震災の影響で火力系に偏った状況も確認できる(震災前は原子力が1割台を維持していた)。2011年度以降のグラフの急激な変化が、折れ線グラフで分かるはずだ。
「リスク分散」との点では、例えば石油に限っても、石油(原油)の輸入先が昨今では再び中東に偏りを見せ、必ずしも一様に分散化が図られているとは言い切れない(【日本の化石エネルギー資源輸入先の推移】)。
↑ 日本の原油輸入・中東依存度(再録)
化石エネルギーの観点でも、日本は主要国と比べると「取得の大部分を輸入に頼っているにもかかわらず」依存度が高く、エネルギー戦略の上では問題を抱えている。
↑ 主要国の一次エネルギー総供給量に占める化石エネルギーの割合(IEAベース)(2019年)
安定した・安心できるエネルギー供給を果たすため、エネルギー供給そのものの大切さに関する正しい情報の啓蒙とともに、さらなる分散化、そして安定したエネルギーにおける自給率の向上が求められよう。
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