女性がより強く感じる介護者ストレス
2020/08/20 05:00
以前介護者側のストレスの兆候として(海外の事例ながらも)【介護者ストレスの典型的な危険信号とは】を掲載したところ、いくつかの意見をいただくことができた。それら意見の中でも特に目に留まったのは「危険信号は分かった。それでは介護をしている人たちのストレスの原因とは何だろうか」なるものだった。そこで厚生労働省が2020年7月17日に発表した、令和元年版(2019年版)の「国民生活基礎調査の概況」を基に、その内情も合わせ介護ストレスの現状を確認していくことにする(【発表ページ:令和元年 国民生活基礎調査の概況】)。
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厚生労働省の「国民生活基礎調査の概要」は毎年1回調査が行われその結果が公開されるものだが、「介護者側のストレス」も含めた「大調査」は3年に1回のみ。今回発表された2019年分はその大調査の年にあたるため、これが最新の調査結果となる。
まずは要介護者が同居している世帯で、介護する側がストレスや悩みを抱えているか否かについて(介護者=介護する側、要介護者=介護される側)。全体では5割台から7割台、男女別では概して女性の方がストレス保有率は高い。
↑ 悩みやストレスのある介護者(各属性介護者比、介護者の男女別・年齢階層別)(2019年)
「男女別では概して女性の方が、ストレス保有率が高い」のは事実だが、29歳以下ではそれが逆転している。就労状況にもよるが、介護以外にも果たさねばならないことが多く、それがストレスにつながっているのだろうか。あるいは回答者数が少ないことによるイレギュラーかもしれない。実際29歳以下の男性は全体(ストレスあり・なし・不詳合わせて)で185人のみとなっている。さらに29歳以下の女性は57人のみ。
それでは具体的に、どのような問題を悩み・ストレスの原因として介護者自身は認識しているのか。もっとも多数の人が問題視しているのは、介護している対象(要介護者)の病気や介護そのもの。男性では4割近く、女性では5割台後半の人がこの問題に頭を悩ませている。
↑ 介護者の悩みやストレスの原因(各属性介護者比、複数回答、上位陣、介護者の男女別)(2019年)
やはりさしあたって目の前にある、介護そのものの起因となる問題が、一番のストレスの原因となる、ということだ。
気になるのは第1位の「家族の病気や介護」と比べれば回答割合は半分以下でしかないが、「自分の病気や介護」が第2位についていること。同調査別項目の結果を見ると、介護する側の73.3%が60歳以上、65歳以上で区切れば58.8%、75歳以上で区切っても30.2%の高齢者で占められている。高齢化の進行で介護する側・される側ともに年齢が上昇し、結果として自分自身の高齢・病気のような物理的・心理的な高齢問題と戦いながら介護を続け、ストレスをためてしまうようすがうかがえる。
またこの「介護者における高齢化」問題は介護者側ではだいたい男女の差異無く生じている。
↑ 要介護者と同居している介護者(男女別介護者比、男女別・年齢階層別)(2019年)
男性では介護する側の1/3ほどが75歳以上で占められている。いわゆる「老々介護」という言葉がリアルな現実であることを再認識させられる値には違いない。
【「こどもの日」にちなんだデータ】でも指摘しているが、昨今では高齢者比率が増加する一方にある。介護問題は介護される側はもちろんのこと、介護する側にもスポットライトを当て、皆で議論と解決策の模索をしなければならない。特に介護者・要介護者双方が高齢化する傾向は顕著で、例えば双方が75歳以上同士の事例は2001年当時は(介護者・要介護者同居世帯のうち)18.7%だったのに対し、2019年では33.1%にまで跳ね上がっている。
↑ 要介護者の年齢階層別・同居の介護者の年齢階層別構成比率
しかもこの問題は時間の経過とともにさらに進行する類のものである。【介護保険事業状況報告】の最新版(2018年度)によれば、2018年度時点で居宅サービスと地域密着型サービス、施設サービスを利用している人は合わせて554万人(重複含む)となっている。要介護・要支援認定者は658万人。早急な問題解決策の模索と実行が求められよう。
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